『この人に、この人生あり!』

『この人に、この人生あり!』 第3回:時代を共有/超越するデザイン groovisions(グラフィックデザインチーム)

『この人に、この人生あり!』 第3回:時代を共有/超越するデザイン groovisions(グラフィックデザインチーム)

彼らほど広範な領域を、しかも軽やかに横断していくデザイン集団はそうはいません。あのピチカート・ファイブに始まり、RIP SLYMEやCorneliusなど個性派ミュージシャンとの多彩なお仕事。また、インテリアデザイナー・片山正通さん(Wonderwall)や、美術家・村上隆さんらとのビジュアルコラボ。さらにファッション界や雑誌・広告界でのディレクションも数多く担当。看板娘的キャラクター「chappie(チャッピー)」やオリジナルグッズなど、グルビ独自の作品づくりでも知られています。そんな彼らの表現は数々の個展や『スーパーフラット』展参加など、国内外での旺盛な展覧会活動でも広く知られてきました。「あ、これってグルビか!」という彼らの仕事が、みなさんのまわりにもきっとあるのではないでしょうか?

でもgroovisionsって、ずっと日本のデザイン/カルチャーシーンの第一線で活躍しているイメージですが、そもそもいつどこで生まれて、どんな人達が関わっているのでしょうか? そこで今回は中心的メンバーである伊藤弘さんに、グルビ誕生前夜のお話から、現在開催中の個展での「chappie」の18年目にして初リニューアル(!)という試みまでを伺います。また、新境地に挑んだ仕事としてローソンのカフェサービス「MACHI café」とのコラボによる、カラフルな特製タンブラーのお話も聞かせてもらいました!

groovisions プロフィール

1993年に京都で設立。1997年以降、東京を拠点に活動するデザインスタジオ。ピチカート・ファイブのステージビジュアルなどで注目を集め、以降グラフィックやムービー制作を中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど様々な領域で活動する。また、主に海外ではファインアートの展覧会にも数多く参加、オリジナルキャラクター「chappie」のマネージメントを行うなど、ジャンルにとらわれない活動が注目されている。
http://www.groovisions.com

 groovisions 伊藤弘

京都の老舗クラブMETROを出発点に広がった活動

取材は、都内の住宅地に位置する開放感あふれるオフィスで始まりました。今回登場して頂く伊藤弘さんは、groovisions結成時からのメンバー。現在11人からなるチーム全体の方向性を考える、ディレクター的存在でもあります。ただし、groovisionsはひとりのディレクターがスタッフ全員を率いるピラミッド型の集団ではありません。各メンバーが得意分野で力を発揮しながらも、チームとして機能する。そんな関わり合い方も特徴です。

groovisions オフィス

伊藤:もともと「今日から俺たちgroovisionsだ!」って始まったわけでもないですからね。僕は京都でDJ・VJをしていて、METROというクラブで仲間とイベントをやったりしていました。FPMの田中さん(田中知之)ともそのころからの付き合いです。あるとき彼が大阪のイベントに誘ってくれたのですが、そこに出演していたピチカート・ファイブの小西康陽さんが僕らのVJ映像に興味を持ってくれました。そのきっかけで、後に彼らのライブ用映像を頼まれることになり、これがgroovisionsの結成につながっていきます。

その当時の映像は、様々な映画の粋なシーンなどを巧みにサンプリングした、これまでにない魅力を持つものでした。groovisionsのオリジナルメンバーであるミルクマン斉藤さんが持つ自前の膨大な名画アーカイブを駆使し、そこへモーショングラフィックス/VJ表現をしていた伊藤さんのセンスが共鳴する中、この表現が生まれていったそうです。なお、伊藤さんももともと映画少年。映画タイトルデザインの分野を確立した第1人者として知られるソウル・バスへのリスペクトなどで、斉藤さんとは出会ってすぐ気が合ったようです。

groovisions

伊藤:実はミルクマン斉藤はもともと田中さんの映像チームだったんです。だからMETROでの出会いや体験は、僕らにとって大きかった。今思えば僕自身は、クラブが好きというよりMETROの雰囲気が好きだから通ってたんでしょうね。

以降、ピチカート・ファイブとの仕事は毎年のライブ用映像を中心に続いていきます。ミュージシャンでありつつ、アート・ディレクター的才覚に溢れた小西さんとの仕事は、貴重な体験の連続となりました。groovisionsの名付け親も、実はこの小西さんだといいます。

伊藤:小西さんは、持っている知識やセンスがそれはもうすごかった。そんな小西さんに喜んでもらえる仕事をすることが、僕らにとっての強いモチベーションでした。あるとき小西さんから、もの凄い密度と圧倒的な量の情報の氾濫、についてのこだわりを聞いたことがありました。だから僕らがピチカートのために作った映像もその影響があるのかもしれません。ライブで使う、ぎっしり詰まった4時間分の映像を、たった2週間で作らなきゃいけない時などもあって、スケジュール的にはキツかったけど、ほんとに楽しかった。ライブではこれらの映像を、複数のスクリーンで見せていました。当初はVHSデッキを数台つなげて、テープを手でガチャガチャ入れ替えて映像を切り替える手法(笑)。やがてシステムも洗練され、後半は小型の映像編集スタジオをライブ会場に持ち込むような感じでしたね。実はgroovisions(groove+visions)という言葉は、小西さんがこれらの映像自体を指す呼び名として付けたのが最初だったんです。

やがて伊藤さんたちは、この名前を自分たちのグループ名として使うことを小西さんに相談し、快諾されました。1993年、groovisionsとしての活動がスタートした瞬間です。

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