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巨匠ism ~余は如何にしてクリエイターとなりし乎~ 第4回早川義修先生(ボディセラピスト)第三章

巨匠ism ~余は如何にしてクリエイターとなりし乎~ 第4回早川義修先生(ボディセラピスト)第三章

松本香織
写真:柏井万作
2009/03/02

第三章 われわれ日本人は、自己規制しすぎだよね

だって猫は体の使い方を教わってないでしょ、というのが僕の言い分。

―それを言うなら、先生のマインドも変わり続けていますよね。若くカッコよく進化し続けていて驚きですよ。

早川:まあ、実年齢がトシすぎるからね(笑)。

―ふだんの生活の中で、「絶対に脚を組んだりしない」というように気をつけていることはないんですか?

早川:う〜ん、何だろう。体の使い方は、僕、あまり自信ないなあ。気をつけてる……のは、これ(注:『20代のカラダになる10秒「関節」反らし』の表紙を参照)をやるとか(笑)。だからレベル低いですよ。縛りをとってやると、体が勝手にやる。だって猫は体の使い方を教わってないでしょ、というのが僕の言い分。でも、彼らは常に体を動かして訓練しているよね。もちろん俊敏な猫とそうじゃない猫はいるけど、人間ほどレベルの差はないでしょう?

―そうですね。なぜ人間にはこんなにも個体差があるんですか?

早川:体とは別のところにエネルギーを使っているから。「知性」だよね。人間は動物とは比べ物にならないほど高度な社会をつくってしまったから、知性によって自制するのが大前提になった。でも自制をする動物なんて、おサルさんを含めてもまずいないんです。とくに日本人はあまりにも自制しすぎるよ。何かラッキーなことが起こったらドンチャン騒ぎするような人種もいるでしょう?

けれど、われわれは「いやいや、待てよ。もう1回起こらないと信じないぞ」と、そういう思いが強いよね。この前、金融系のお客さんからこんな話を聞いたんです。「ニューヨークに住んでいる友だちがこの前日本に来て、『びっくりした、日本シケてて』と言ったんです」と(笑)。今どん底ですよ、ニューヨーク。わりとハイソな人の場合、10人友だちがいたとしたら、5人くらいは失業者。一方、僕のところに来ているお客さんの周りには、失業者はそれほどいない。それに日本の消費が冷え込んでいるとはいっても、ブランド街なんてすごいじゃない? それでも「みんなシケてるよね、暗い顔してるよね」と。ニューヨークの人に言われたくないよね。これってわれわれの自己規制だと思いませんか?

巨匠ism 〜余は如何にしてクリエイターとなりし乎〜 第4回早川義修先生

―私もつい最近までいろいろラッキーなことが起こっていても「シケてる人生だな」と捉えていたんですよ。でも過去の自分を振り返ると、あのときはラッキーだったとわかる。「私が幸せなはずはない」と自分で思い込みたいところがあるんですよね。そういう枠はなくしてしまってもいいんじゃないかと最近思っているんですけど。

早川:それ、面白いんだよね。壁をつくっているのは対人関係だけではない、もう一つあると気づくでしょう? 人間は高度な社会をつくったときに、他の人間に対するある種のシールド――壁をつくって、自分を守った。それがいつのまにか自分の中にも壁をつくっちゃっている。特にわれわれ日本人はキツいよね。子どもにとってもキツいんですよ。呼吸さえ止まるからね。子どもの背中を見ていると、「ペコペコ」って呼吸をしているのが分かるんです。肩甲骨なんて動いているからね。楽しいことをやっていて、熱中しているとそう。だけど、ごくふつうの子に勉強をさせると、急にそれが止まるんだよね。

―分かりやすいなあ(笑)。

早川:背中を丸めながら黙々と勉強して、「お母さんできたよ、遊んでいい?」というと、急に動き出す(笑)。でも大人になると、なかなか蘇らない。自分の中に潜む壁の存在に気づかなかったら、自分を愛せないでしょう? だから「自分を愛しなさい」というキャッチフレーズは無駄、もっと簡単な手があって……というのが僕のボディワークなんです。まず「触る」。知識や感受性みたいな知性の源泉は、両方とも触ることだと言われているよね。ヘレンケラーの話でもあるじゃないですか。「これは石だ、これは水だ」って、触って初めて分かるんだよ。

成果があがったかどうか見るために、ものすごいことをするんですよ。殴るの。

―好きな人を見ると「触ってみたい」と思いますしね。

早川:その衝動にさえ無意識に壁をつくるでしょう? まあ、「壁をつくる」といっても、本当はそれ自体は健全な反応なのね。壁をつくらず、いちいち決着をつけるという猫みたいなやり方をしていては、人間社会で生き延びられない。そこだよね。そこに気がつけば、僕が「体ほぐしが一番の根源だ」と言っている意味が分かるんですよ。筋トレだってラテンダンスだっておおいにけっこうなんだけど、その前に「猫がなぜ柔らかいか」をいっぺん考えてみてもいいのかな、と。すべての猫にはある程度の柔らかさがあって、あの動きが成り立っている。そうしてみると、ラテンダンスをやる前に自分の体をもうちょっと物理的に柔らかくしてみてもいいのではないか。トレーニングするのはいい筋力をつけたいからでしょう? それが筋肉の量ですべて解決できるかどうか、考えてみるといいよね。

巨匠ism 〜余は如何にしてクリエイターとなりし乎〜 第4回早川義修先生

―「量」というよりは「質」ですよね。

早川:僕は人間をマシンとして見るのは反対だから、あくまでたとえなんだけど、体はF1的だよね。F1では「三位一体」と言うでしょう? 素晴らしいマシンがあって、優れたレーサーがそれに乗って、メカニックがケアする。この3つがあって初めて勝てるし、進化するんですよね。お金をガーッと注ぎ込んでモンスターマシンをつくれば誰が乗っても勝てそうだけど、違う。優れたレーサーが運転した結果をメカニックにフィードバックすることによってマシンは進化する。体も一緒だよね。体だけでもダメだし、使い方を覚えればすむわけでもないし、ケアする人だけでもいけない。それらが一体になって体ができあがってくると考えたほうがいいよね。

ただ、「人間はマシンじゃない」という大前提に基づいて言うと、体は筋肉で動いているから柔軟性あってこそだよね。そこで大事になってくるのが「脱力力」(笑)。みんな筋トレで筋肉をギューギュー圧縮するほうに頭がいっているけど、筋肉には元の位置に戻る力も必要なんですよ。とくに女性は男性より骨格が華奢だから、コンパクトな筋肉のほうが有利だよね。猫でもふにゃーんとしてるでしょう? だからいざという時に力が入るんですよ。まずは今ある筋肉を十二分に使えるようにケアしてあげる。僕、これを「脱力筋トレ」と言っているんですけどね。たとえば腹筋なんて面白くて、ある程度ほぐして「脱力力」が高まると、僕がお腹を押しても平気になるんだよね。そうなると、成果があがったかどうか見るために、ものすごいことをするんですよ。殴るの。

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