巨匠ism 〜余は如何にしてクリエイターとなりし乎〜 第4回早川義修先生(ボディセラピスト)第二章

第二章「愛する」ということは、「能書き」ではなくて「行為」なんです

体はクビにできないんだから。「このヤロー、こんな脚切っちゃえ!」とかさ(笑)。

―先生のボディワークで自分の体がちょっとずつ変わっていく感じも、そのときの感覚とよく似ているんですよね。実際に筋肉をほぐしてみると、自分がそれまであまり自然ではない体の使い方をしていたことに気づく。そうすると「悪かったね、体よ」と思えるんですよね。それまでは「醜い体め、成敗してくれるわ!」と目の仇にしていたのに。自分を愛せないと体は変わらないものなんだな、とつくづく思いました。

早川:でもね、「自分を愛しなさい」と言っているトレーニング本が時々あるでしょう? 僕、ああいうのは違うかな、と思うんだよね。そういうトレーニング本を読んで実践している人は、そうとう体を痛めつけるようなことをやっているから。女の子はそういう本を隅から隅まで本当にちゃんと読んでいるけど、実際に揉ませてみると「こんなの!!!!! ウウウウウーン!!!」という勢いなんですよ。あなた、それ組織を破壊していますよ、って(笑)。体の側からすれば、たまったものではないよね。「愛する」ということは、「能書き」ではなくて「行為」なのに。体を「ゆがんでいる」というけれど、それだって考えてみれば中央集権的でしょう? 「知性」という名の社長からは、「体」という名の社員たちがあまり成果をあげていないように見える。でも社員は身を粉にして頑張っている……という、その違和感。体を会社にたとえちゃいけないんだけど。

巨匠ism 〜余は如何にしてクリエイターとなりし乎〜 第4回早川義修先生

まあ、そう言い始めると「ゆがみ」という言葉は「愛しなさい」という美辞麗句の対極にあるよね。「体を愛しなさい」、でも「体はゆがんでいる」。これ悩むよ? だって二律背反だから。ゆがんでいるんじゃない、不況下にありながらも社員は一所懸命がんばってそれなりの成果をあげているんだと、そういう前提に立つかどうか。立って「直そう」というのか、立たずに「そんな社員なんかどつきまわして仕事させるんだ!」というのか。でも、そこでどっちが勝つかといったら明らかでしょう? 本物の会社ならば、社員をどつき回してクビにすることだってできるよ? でも、体はクビにできないんだから。「このヤロー、こんな脚切っちゃえ!」とかさ(笑)。 だから、言葉狩りをするつもりはないんだけど、そのあたりはいっぺん点検したほうがいいと思っているの。

―うーん、確かに。

早川:逆に「ゆがみ」を積極的に捉えると、「左右の役割分担」ともいえるよね。人間はチョウチョじゃあるまいし、シンメトリーじゃおかしいんですよ。利き腕だってあるんだもん。それ一つとっても、左右が対称になるわけないよね。右脳と左脳の差もかなり言われているでしょう? 簡単に決め付けちゃうのはよくないけど、右の脳は「対自分」、左脳は「対他人」。日本人は左脳の負荷がものすごく高いというよね。アメリカのボディワークでは、これをセールスに応用しているくらいなんだけど、相手の左後ろで話すと親しくなれるって言いますよね。

―それはなぜですか?

早川:後ろだから視野に入らなくて、声だけ右脳にきれいに入る。安心感がかなり高いんですよ。だから僕、「美容師さんは有利だな」といつも思うけどね。自分の手を左後ろと右後ろにおいてみるだけで感覚が違うでしょう? こういう感覚にはかなり個人差があることは確か。だけど、日本人は後ろが弱い傾向があるね。肩を丸めがちなのは、ハートを覆って守っているから。このバランスで後ろから押されると弱いですよ。スポーツ観戦で日本人選手を応援するのもいいけど、背後からの声が力になりすぎて、ドデッと倒れちゃうこともある(笑)。

「体はマインドから変えられる」と言われたら、僕の仕事を全否定されるのと同じだからね。

―だからこそ、前傾姿勢を保つために先生はヒール靴を愛用しているんですか?

早川:そう! 僕はこの前『20代のカラダになる10秒「関節」反らし』という本を出したけど、あれをやらなくたってヒール履けばすむ話じゃん、ってことですよ(笑)。

―本当にふだんもヒールなんですね?

早川:ふだん愛用しているのはウェッジソールです。ヒール部分は高いんだけど、靴底全体がつながっていて、普通の靴に見えるやつね。一時期は平気で純然たるヒールを履いていたんだけど、7cm以上の高さになるとものすごく目立つし、何だかちょっと……奥ゆかしくなってきて(笑)。普通のヒールのほうがバランスをとる訓練になって面白いし、ふだんいかにカカトに頼っているか分かるから、「履きたいな」とは思うけど。

―言われてみれば、ペタンコ靴だとカカトで歩きがちかも。

早川:それに加えて、足の指が浮いているの、みんな。浮かしながらギュッと着地するという器用なことをやっている。

巨匠ism 〜余は如何にしてクリエイターとなりし乎〜 第4回早川義修先生

―だからハンマートゥ(注:足指の関節が突き出た状態になること)になったりとかするんですか?

早川:ハンマートゥは、つま先を寄せて「女の子ちゃん」みたいな姿勢をとっている人がなりやすい。その状態では立っていられないから、バランスをとるためにギュッとねじり戻しているんです。だから足指の関節が突き出るくらい負荷がかかるわけ。でも「負荷をかけてもいいからねじり戻したい何か」があるわけですよ。

―それは「心の奥に潜む何か」なんですか?

早川:僕はいろいろ見て考えて解決してきたけど、うん、そうとしか思えないよね。でも、そう答えると、みんな「じゃ、マインドを直せばいいじゃん」って言う。でも、それで直ると思う?

―うーん、自分の経験を振り返ってみれば、「ムリじゃん?」と思いますけど。

早川:僕も難しいんじゃないかと思う。そもそも「体はマインドから変えられる」と言われたら、僕の仕事を全否定されるのと同じだからね。僕は相手と100%向きあって、自分を削るようにして、死にそうになりながらやっているの。それで問題を少し解決できる程度だと思っているから、それをチョチョ〜イとやられたとしたら、立つ瀬がないですよ(笑)。もし本当にその人をスピリチュアルなところから変えられたとしたら、体も変わるはず。体が変わらないんだったら、マインドも変わっていないんです。もちろん体が瞬時に変わることはあり得ないからその場で否定はできないけど、「あと何年か見てみないとな」と思うよね。



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