プロはどうやって聴いている? 知って得する音楽リスニングガイド

プロはどうやって聴いている? 知って得する音楽リスニングガイド Vol.2 土岐麻子

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プロはどうやって聴いている?知って得する音楽リスニングガイド

土岐 麻子

オーディオテクニカが40年間の開発技術を集結して作った高解像度再生ポータブルヘッドホン「ATH-MSR7」の発売を記念して連載しているこの企画。第2回にお迎えしたのは、ジャズシーンで知らぬ人のない名サックスプレイヤー、土岐英史さんを父に持ち、幼い頃から自宅にあふれたさまざまな音楽とナチュラルに触れ合ってきた土岐麻子さん。Cymbalsのボーカリスト時代はもちろん、今年ソロデビュー10周年を迎えて、さらに幅広いジャンルの歌を私たちに届けてくれています。細やかな音作りを続けてきた土岐さんは、「音楽を聴くこと」とどのように向き合ってきたのでしょうか? 土岐さんのルーツミュージックと音楽遍歴、そして作り手としての「音」との付き合い方のエピソードを交えながら、1人の音楽ファン、音楽リスナーとしての想いと土岐さんならではのリスニング方法を伺いました。テキスト:阿部美香 撮影:豊島望

土岐麻子

土岐 麻子(とき あさこ)

1997年、Cymbalsのリードシンガーとしてデビュー。2004年の解散後、ソロ活動をスタート。2008 年10月、本人出演 / 歌唱が話題となったユニクロTV-CMソング『How Beautiful』がシングルヒット。2011年1 月、「あなたって不思議だわ あなたっていくつなの?」というサビのフレーズが印象的な資生堂「エリクシール シュペリエル」CMソング、『Gift ~あなたはマドンナ~』をリリース。2013年、3年ぶりとなるオリジナルアルバム『HEARTBREAKIN’』をリリースし、自己最高位となるオリコンデイリー7位を記録。自身のリーダー作品のみならず、数多くのアーティストの作品へのゲスト参加、また50 社以上にわたるCM 音楽の歌唱やナレーション、TV、ラジオ番組(JFN 系『TOKI CHICRADIO』) のナビゲーターも務めるなど、「声のスペシャリスト」。

オフィシャルサイトはこちら
オーディオテクニカ「ATH-MSR7 LTD」

オーディオテクニカ「ATH-MSR7」とは?

音楽を愉しみたいすべての人たちへ。
オーディオテクニカ独自の音響テクノロジーを結集し、ハイレゾ音源が正確に再現可能。開発者たちによって「いい音とは何か?」について考え抜かれ、「原音再生」「高解像度」「高レスポンス」が徹底追及されたポータブルヘッドホン。

詳細はこちら特設サイトはこちら

音楽があふれる家で育った土岐麻子の意外な音楽遍歴とは?

土岐麻子

父母ともに音楽好きという環境で育った土岐さんは、「ジャズはもちろん、スティーヴィー・ワンダーのようなブラックミュージックなど、小さい頃から家では何かしらの音楽が鳴っていることが多かった」と子ども時代を振り返ります。しかし初めて「自分が好きな音楽」を意識したのは意外や意外、テレビのバラエティー番組がきっかけでした。

土岐:小学校低学年の頃、当時始まった『オレたちひょうきん族』のエンディングテーマだったEPOさんの“土曜の夜はパラダイス”やシュガー・ベイブの“DOWN TOWN”が好きになりました。曲も素敵でしたし、明日の休みを待ちわびる気持ちを音楽が運んできてくれているようで、聴くとワクワクしたんです。EPOさんも(山下)達郎さんも、父の仕事の関係で子どもの頃から知っている方たちでしたが、テレビから流れてくる歌声は、特別な感じがしましたね。

音楽があふれている家で過ごした土岐さんは、中学時代に初めて自分のお小遣いでCDを買います。それはレベッカが解散直後に出したベストアルバム『The Best of Dreams Another Side』でした。そして、今や柔らかな歌声を持つボーカリストとして活躍している彼女としては、意外性満点な音楽遍歴を教えてくれました。

土岐:ちょうど中学時代にバンドブームがやってきて、すかんち、筋肉少女帯などのコンセプトがハッキリしているバンドが好きになったんです。そこで、中学2年でエレキギターを親にねだり、3年のときに満を持して学校の友達とすかんちやレベッカをコピーする女の子バンドを組みました。なので、私のミュージシャンデビューは、歌ではなくギタリストだったんですよ(笑)。

「憧れのミュージシャンと同じ耳になりたい!」
そんなモチベーションで音楽を漁り始めた学生時代

土岐麻子

土岐さんが「ギターをやりたい」と言ったとき、それまで音楽教育を強制しなかった父母は喜んで買ってくれたのだとか。そして土岐さんは、自分でバンドを始めてから、音楽の聴き方も変わっていったと言います。

イメージ 土岐:各楽器の音がどう配置されているかに興味を持ちました。当時はとにかくいつでも音楽を聴きたくて、授業中に片耳だけイヤホンを入れて、こっそり音楽を聴いたりしてましたね(笑)。「憧れのミュージシャンと同じ耳になりたい!」と思って、音楽誌のインタビューを読み漁ってバンドの音のこだわりを知ったり、ルーツになった音楽もどんどん勉強していきました。そうやって情報を追い掛けていくうちに、音楽に詳しくなっていったんだと思います。

急速に音楽にのめり込んでいった土岐さんが、「音質」を気にするようになったのは、Cymbalsのボーカリストとしてプロデビューしてからだったとか。

イメージ土岐:音楽といつも一緒にいることには夢中でしたけど、音質にはさほどこだわらないタイプでした。初めて高音質に驚いたのは、楽器やオーディオのケーブル類、壁コンセントにもこだわっていたCymbalsのメンバーの家で音楽を聴いたとき。いつもスタジオで聴き慣れていた曲も、一つひとつの音がクリアになると全然違って聴こえたんです。今はハイレゾ音源が話題ですが、聴いてみるとボーカルの息づかいもクリアだし、演奏の空気感もそのまま感じられる。歌と演奏の風景が目に浮かぶようで、「高音質=楽しい!」と感じますよね。

「リスナーの近くにいるような声」を残したい

土岐麻子

幼少の頃から音楽に愛情を持って触れてきた土岐さんが、ご自分の音楽制作で最もこだわっている「音」とは?

土岐:やはり「声」ですね。例えば“乱反射ガール”(2010年発売のアルバム『乱反射ガール』収録曲)は、声をたくさん重ねて緻密にエディットすることで、「透明なプラスチック感」を目指しました。Cymbals時代には、まるで化学実験のようにいろいろな歌の録音手法を試しましたね。ソロになってからも、そのときの実験が役立っています。薄い声を3本重ねると透明感が出るし、ちょっと張った声を2本重ねると強さがでる。声にならない息の成分だけを重ねると、面白い効果もでます。

では、土岐さんが理想とする「歌声」はいったいどんなものでしょうか。

土岐:うーん……言葉にするのは難しいのですが、リスナーの「近くにいたい」というのは昔から変わっていません。レコーディングするときも、ホールで歌っているような遠くに放つ声ではなく、ヘッドホンで聴いたときにすぐそこにあるような声にしたい。高域、中域、低域のどのレンジにも偏らない、倍音がちゃんと残った声ですね。

「人の声は最も優れた楽器」とよく言いますが、歌声は音楽を作る上で最もこだわりがいのある繊細な楽器なのかも知れません。土岐さんの楽曲も、他のミュージシャンの楽曲も、生の表現が一番伝わる「声」にこだわって聴くことで、音作りにより深みを感じながら味わうことができそうです。

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