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意外と身近にある みんなのメディア芸術 Vol.3 ゲームとコントは物理を超える 藤木淳×やついいちろう対談

意外と身近にある みんなのメディア芸術 Vol.3 ゲームとコントは物理を超える 藤木淳×やついいちろう対談

本折浩之
撮影:小林宏彰

パソコンの画面を全部「ブタ」にして遊んでました(やつい)

―また、お2人とも『ウィザードリィ』(コンピューターRPGの原点ともいわれる3Dダンジョンゲーム)をよくプレーされていたそうですね。

やつい:『ウィザードリィ』は本当に好きでしたね。あれ、登場する人間のキャラクターがめっちゃ弱くて、それがまたいいんです。

藤木:そういった点でも『ウィザードリィ』は恐怖や喜びを感じるゲームでした。画面上の表示は数字や文字だけなんですが、とても感情移入しやすいゲームでしたね。僕はゲームをしながら迷路の地図を自分で描き、マッピングするのが好きでした。

やつい:僕も同じことをしていました! 昔やっていたゲームは一緒なのに、今では全然違う仕事をしていますね(笑)。

藤木:『ウィザードリィ』がきっかけで、中学生の頃にプログラムを始めたんです。親からもらったパソコンにBASIC(1970年代以降のパソコンで広く使われた初心者向けコンピューター言語)が入っていたんですが、『ウィザードリィ』がBASICで作られていると知って「このパソコンで『ウィザードリィ』みたいなゲームが作れるのか」と思い、夏休みには自分でゲームを作っていました。

やつい:中学生で!? スゴいなあ。そういえば当時、僕も堀井雄二先生が出されていたBASIC入門の本(『コンピュータ・クエスト』)を買ったんですよ。それを読んで、BASICのプログラムを覚えて何をやったかと言えば、画面の表示を全部「ブタ」にしてみたり(笑)。画面にはブタブタブタ…ってブタしか表示されないんです。それを見て「本当はパソコンって馬鹿なんだよ」とか言って(笑)。唯一、そのプログラミングをしたことだけは覚えてますね。そこから藤木さんのような方向には行かなかったなあ(笑)。

『無限回廊 光と影の箱』をプレイするやついいちろう
対談前にやついさんには『無限回廊 光と影の箱』をプレイしてもらいました

ゲームもコントも、「想像にしかない世界」を表現する

―藤木さんは、日常のどんなシーンで「実世界ではあり得ないこと」について考えているのでしょう?

藤木:とくに決まったシーンはないんですよね。お風呂に入っているときや、移動中にポッと浮かぶだけです。ただ、いったん頭に引っかかったことはトコトン考える方ですので、思い浮かんだあとは1日中それについて考えています。

―では「無限回廊」シリーズの大きな特徴である「三次元的にはつながっていなくても、外見上つながっていれば移動できる」というシステムは、どのようにして作られたのでしょう?

藤木淳とやついいちろう

藤木:システムの仕組みとしては、キャラクターがいる周辺部分の状況を解釈して、空間を再構成してるんです。こう言うとわかりにくいかもしれませんが、たとえば子どもの描く絵って、部分部分で見ると正しいけれど、全体で見ると空間としておかしいものだったりしますよね。そんなふうに、周辺部分の空間をつなぎ合わせた結果、間違った空間になったとしても、このゲームの世界内では「移動できる空間」として成立させているんです。

やつい:なるほど。そういう感覚って、日常生活でもありますよね? たとえば走っている電車の上でジャンプしたとしたら、自分が電車に置いていかれて落っこちてしまうんじゃないか、とか。当然、電車の上でジャンプしてもそうはならないですけど、そんなふうに想像してしまう。

藤木:その話、すごく分かります。物理法則と、想像の世界には齟齬があるんですね。僕はそうした、人間の内面にしかない、想像の世界が成立する空間をゲームの中に作りたいんですよ。

やつい:実はコントを作るときにも、そういうことって考えるんですよ。「空から落ちる」という設定にしても、実際は一瞬で落ちてしまうんでしょうけど、コントでは空中で1回止まったりするほうが面白い。というか、1回止まらないとお客さんが分かりにくいし、画も撮れないだろうっていう。「コケる」にしても、一旦止まってからコケてみるとかね。

藤木:レースゲームなんかでも、臨場感を出すためにわざと誇張表現をしたりしているんですよ。むしろそのほうが、より現実を緻密に再現したレースに見える。脳って、極端さをかえってリアルだと感じるものなんです。「現実と違うほうが現実的である」と実感する人間の脳って、面白いものですよね。

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イベント情報

『第15回文化庁メディア芸術祭』受賞作品展

2012年2月22日(水)〜3月4日(日)
会場:東京都 国立新美術館

プロフィール

藤木淳

1978年生まれ。国際メディア研究財団研究員。科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任。人間の心を豊かにするインタフェース・インタラクションとして「実世界ではあり得ないことが、人間の内面ではあり得る表現」をテーマとする。博士(芸術工学)。

やついいちろう

1974年生まれ。お笑いコンビ、エレキコミックを1997年に結成。DJとしても活動しており、3枚目のMIXCD「ゴールデン・ヒッツ」が発売中。TBSラジオ「エレ片のコント太郎」(土曜25:00-27:00)Eテレ「シャキーン」(月曜〜金曜7:00-7:15)、スペースシャワーTV「爆裂★エレキングダム!!」(金曜19:00-19:45)東京ウォーカーで「エレキコミックやついいちろうの(勝手に)東京湯シュラン」を連載。12月3日より「エレキコミックショー〜バカフィルムギグ〜」全国ツアーを開催。トゥインクル・コーポレーション所属。

『無限回廊 光と影の箱』

2010年に発売された、PlayStation®3/PlayStation®Move専用ソフトウェア。プレイヤーに課せられたミッションは、影を操って、主人公を無事ゴールまで導くこと。PlayStation®Moveモーションコントローラをライトに見立て、ステージ上に並べられたブロックを照らして影をつくり、その影を操作して道をつくるというゲームだ。また、シャドウアートが隠されているステージがあったり、思いもよらない攻略ルートを見つけだしたりと、さまざまな楽しみ方ができることも特徴となっている。
※『無限回廊 光と影の箱』をプレイするにはPS3®本体と、PS Moveモーションコントローラ、PS3®用専用カメラ「PS Eye」が必要となります。

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