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早く人間になりたい Neat's(26歳女子) 第4話:「死ぬほど生きたい」と決めたから

「私ってまだ、崖っぷちに立ってるようには見えてないんだ?」



しかし、「Neat's プロジェクトを辞める」という彼女の一世一代の決断に対する、周囲の反応は意外なものだった。プロジェクト当初から見守るスタッフは、その決断を「笑った」という。

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Neat's:「3年も経たずに辞めるとか、めっちゃ根性ないね」って笑われて、すごい悔しかったんです。「いや、こんなに頑張ってるのに!!」「この気持ちわかんのか!?」って。でも結局、その笑いにちょっと救われたんです。「端から見ると私ってまだ、崖っぷちに立ってるようには見えてないんだ?」って思えた。もちろん自分自身では相当崖っぷちなんだけど、「ギリギリのところで逃げようとしてない?」って考え直したんです。

—ちなみに、スタッフさんはどうして笑ったんですか?

スタッフ: 彼女がNeat'sプロジェクトを始めたときは、「ディズニーランドを作りたい!」くらいの果てしなく壮大なプランを立ててたんですよ。そんなこと言ってた人が3年で辞めちゃうとか、しょぼいなぁと思って。

Neat's:そうそう、「Neat'sランド」みたいに、自分の妄想を具現化したリアルな場所を作りたいって言ってました。もちろんすぐにプロジェクトの結果が出るとは思わなかったけど、周りの友達は結婚していたり、子どもを育てていたりするのに、それと比べて、「私、28歳にもなって何やってるんだろ?」って思うことが増えて、視野が狭くなっちゃってたんですよね。

Neat's

「ポップが好き」というポジティブな諦め

目指すべき理想像は見えていたものの、自分の実力以上にかっこつけたり、自分をごまかすことで、曲作りにも悪い影響を及ぼし始めていたという。
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Neat's:相当ショックな出来事があったんです。Neat'sを辞めるか辞めないかってときに、『サウンド&レコーディング・マガジン』(音響技術、録音技術の専門雑誌)の企画で、私が作ったメロディーをいろんなアレンジャーの人にアレンジしてもらうっていうオーダーをもらったんです。もう最後だし、最高にかっこいいと思う曲を作って提出したら、「アレンジはいいけど、肝心のメロディーが全然残らないよね」って、ボツになったんですよ。

—自分の力が認められなかった?

Neat's:認められなくて悔しいっていうより、自分が恥ずかしくなった。今までメロディーを一番の武器としてやってきたはずなのに、「私は今っぽいアレンジもできますよ」ってかっこつけたい気持ちがあったり、演奏技術がないのを補おうとしてオケを作り込んでいるうちに、大事なメロディーを無下にしちゃってたんです。そんな自分にショックを受けました。

—自分のコンプレックスを覆い隠すようにアレンジのほうを頑張ってしまったと。その後、メロディーは新しく作り直したんですか?

Neat's:それが、今年の6月に出したアルバム『MOA』にも収録されている“よるのいろ”っていう曲です。自分の心に正直になってメロディーを作ったのはいいけど、はじめは「いくらなんでも、ちょっとポップ過ぎるかな?」って不安でした。でも実際に送ったら、ものすごく褒めてもらえたんですよ。それをきっかけにひとつ諦めがついて、「私ってそもそもポップじゃん」って自分を受け入れられました。今となっては、どうしてポップじゃダメなの? と思うけど、当時は絶対にダサイと思い込んでたんですよね。つまり、自分の心にストッパーをかけていたのは、他の誰でもない、私自身だった。自分が泣けるメロディーを作れば、みんなも受け入れてくれることがわかってからは、自分も他人も両方信じられるようになりました。


ダサかろうがダサくなかろうが、もう一人じゃない

時計の針を巻き戻して考えてみたい。新津由衣・17歳の頃。「RYTHEM」というユニットのメンバーとしてメジャーデビューし、国民的に受け入れられてきた女の子だからこそ、「普通じゃない」見られ方をしたかったのかもしれないな、と思う。クリエイターにとって、自分のやりたいことが大衆性を獲得するほど幸せなことはそうないと思うが、「自分の本心とは違うこと」が広く受け入れられてしまった場合はどうだろう? 彼女のケースだと、デビュー当時から広く受け入れられる才能を持ちながらも、流行のポップと目指すポップの狭間にもがき、ある意味で「ポップ」が仮想敵のように心に刻まれてしまったのではないだろうか。
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Neat's:自分のやりたいことで大衆性を獲得するっていうのが、プロジェクト当初からの目標ではあったんですけど、メジャーで活動していた頃みたいに「シンガーソングライターの新津由衣さん」って言われることにどうしてもジレンマがあったんですよ。ミュージシャンというよりは、音楽+αの表現をしていきたいし、世の中のイメージから逸脱したくて、ポップから外れてひねくれてみるっていうのを頑張って醸し出していたんですけど……。でも、真髄は相当ポップでわかりやすい表現が好きな人間だと思うんですよね。だから今回、その自分を許してあげられたし、周りからも受け入れてもらえたっていうのが大きかった。

—寄り道もしたけど、なるべく自分の気持ちに正直な活動を3年続けたからこそ、「自分はこれがやりたい」というよりも「自分はこれしかできない」ということが浮き彫りになって、ある意味でNeat'sとしての退路が断たれたというか、覚悟ができたとも言えそうですね。

Neat's:しかも活動を続けていくうちに、同世代の女の子に「いいねNeat'sの世界観」って言ってもらえて、女の子の仲間が集まって来たんですよ!

—女の子の友達が少ないって悩みを、以前の取材で話してましたもんね。

Neat's:そうなんです。だからこの活動をやってきて、ホントに良かったなって。一人ぼっちじゃないって。そこから自分のアイデアに対しても自信が持てたんですよ。だからもう、ポップであろうが、ポップじゃなかろうが、ダサかろうがダサくなかろうがなんでも良くって、「私はこれ!」っていうものを認めてくれるチームと信じ抜いて作ろうって覚悟ができたんですよね。

Neat's

かつてアルバイトの面接にも受からず、同世代の女の子友達が少なかった彼女にとって、同世代女性の共感は相当救いになったはずだ。華奢でフェミニンな見た目からは想像しがたいが、彼女は脳内のファンタジーを実現するための、がむしゃらな行動力を持っている。彼女の周りに集まってきた女性たちは、その逞しさに同じ夢を見たいと賭けたのかもしれない。Neat'sランドを作るのは10年後、100年後かもしれないけど、何年かかっても、一歩一歩近づいている手応えは、たしかにある。

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