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作家・いしいしんじと散策する、京都で初めての「国際芸術祭」

作家・いしいしんじと散策する、京都で初めての「国際芸術祭」

沢田眉香子
撮影:佐藤佑樹
2015/05/01

伝統文化のイメージが強い京都ですが、じつは市内だけでも数多くの美術系大学があり、やなぎみわ、森村泰昌、名和晃平など、国際的にも活躍するアーティストを輩出している現代アートの発信地。その京都で国内外40組のアーティストが参加する『PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015』が開催中です。現代アートの解説やコンセプトは、読めば読むほど肩の凝るものですが、京都在住の小説家・いしいしんじさんの、作品を有機的にとらえる「読み」は、アートのオモシロさに直球で迫ります。メイン会場の京都市美術館を一緒に回りました。

いきなりメイン作品が観覧無料。美術館の庭では親子がピクニック?

会場1階の中央フロアにどーんとそびえ立つのは、世界的な現代アーティスト・蔡國強(ツァイ・グオチャン)による、竹で組まれた七重の塔。『京都ダ・ヴィンチ』というインスタレーションの一部です。蔡國強は『北京オリンピック』開会式の大掛かりな花火演出を担当し、「火薬を爆発させて描く絵画」など、奇抜な作品で知られるアーティスト。同作品には京都の子どもたちとのワークショップ『子どもダ・ヴィンチ』で制作した、500点を超える凧や飾り物もぶら下がっています。

蔡國強『京都ダ・ヴィンチ』(2015)といしいしんじ
蔡國強『京都ダ・ヴィンチ』(2015)といしいしんじ

いしい:ニューヨークのグッゲンハイム美術館で作品を観て以来、蔡さんのファンなんです。この作品は7階建ての塔で、その姿はまるで天井に向かう巨大な矢印のよう。さらに部屋の奥には扉が開いていて、美術館の庭とつながって、空が見えていて……親子がピクニックしている。ん? なんやこの展示、タダで入れるんか!? と気付いてびっくりしました(笑)。

じつは、1階の正面入口から蔡國強が展示されている中央フロア、その奥のオープンカフェ、庭は入場無料。「パサージュとして開放して、誰でも入れるようにしたんです」と、『PARASOPHIA』ディレクターの河本信治さん。

無料の展示ゾーンから奥に抜けた、景色のいい美術館テラス
無料の展示ゾーンから奥に抜けた、景色のいい美術館テラス

いしい:アートは自由ってことですよ。つまりフリー! 無料ってこと。その無料ゾーンに芸術祭の目玉である、蔡さんの作品が展示されているのが素晴らしい。誰でもここに立っているだけで感覚を広げてくれる。「アートはしかめっ面で考えながら観なくていいんだよ」と言ってくれている気がします。

手作りの農民ロボットが、現代アート作品を制作、販売中

同じく無料ゾーンに展示されているのが、蔡國強と中国の農民とのコラボレーション『農民ダ・ヴィンチ』プロジェクトで生まれた、約20体の手作りロボットたちです。中でも、紙の上に絵の具をたらしたり、スタンプしたりする「お絵描きロボット」は、子どもたちの人気者。しかもロボットが制作した作品は、その場で絶賛販売中……。

いしい:このフリーな空間でロボットたちだけが働いていて、しかも作品を販売したお金は搾取され、それでもロボットは喜んで絵を描き続けている。芸術家はこうあるべきなんですよ!(笑) しかもロボットなのに、自分の人生の計算はできていない。笑いの要素もあって素敵ですね。

蔡國強『農民ダ・ヴィンチ』プロジェクトより『アクションペインティングをするジャクソン・ポロック』(右)、『しゃがんでいるジャクソン・ポロック』(左)
蔡國強『農民ダ・ヴィンチ』プロジェクトより『アクションペインティングをするジャクソン・ポロック』(右)、『しゃがんでいるジャクソン・ポロック』(左)

蔡國強『農民ダ・ヴィンチ』プロジェクトより
蔡國強『農民ダ・ヴィンチ』プロジェクトより

「誤読」こそが一番クリエイティブ。巨匠ウィリアム・ケントリッジによるアニメーション

無料ゾーンでリラックスした後は、いよいよ本格的に展示会場へ。巨匠ウィリアム・ケントリッジの映像作品『セカンドハンド・リーディング』がお出迎えです。実際の英語辞典のページに描き込んだドローイング、それをパラパラマンガの手法でアニメーションにした作品は、いしいさんが「感動して4回も観た」というお気に入りで、テーマはズバリ「読むこと」。

ウィリアム・ケントリッジ『セカンドハンド・リーディング』(2013)
ウィリアム・ケントリッジ『セカンドハンド・リーディング』(2013)

いしい:読書は、表紙から裏表紙へとページをめくっていく運動の中で、いろんな言葉が縦横につながって成り立つんです。しかも、その運動は、どんどん「はみ出す」んですね。つまり、本に書かれている文章をどうイメージするのかは、読者に任されている。読者が頭の中で言葉をつないでいくときに、その人だけの記憶や経験が発動される。その時点で読書は「セカンドハンド」(二次的)なんです。この映像作品の中で、絵や言葉が、わーっと現れてページの上に投影されていく様子が、読者の頭の中に生まれるイメージの「発動」に見えるし、ページの上で人が歩いたり考えたりジャンプしたりする様子が「読む」ことそのものにも見えて……。「読むって、こんな感じ!」と思いました。

河本:素晴らしい……まったくその通りだと思います。「誤読」っていうのは、一番クリエイティブな行為でもありますし、それが『PARASOPHIA』の隠れコンセプトでもあるんです。

いしい:そういえば、僕の旅行エッセイ『アムステルダムの犬』(1994年 講談社)が、書店のペットコーナーに置かれていたことがあって(笑)。そのときもスゴく嬉しかったんですよね。

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イベント情報

『PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015』

2015年3月7日(土)~5月10日(日)
会場:京都府 京都市 京都市美術館、京都府京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地、鴨川デルタ、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店
参加作家:
リサ・アン・アワーバック
ナイリー・バグラミアン
蔡國強
ヨースト・コナイン
スタン・ダグラス
サイモン・フジワラ
ドミニク・ゴンザレス=フォルステル
ヘフナー/ザックス
ヘトヴィヒ・フーベン
石橋義正
ブラント・ジュンソー
笠原恵実子
ウィリアム・ケントリッジ
ラグナル・キャルタンソン
倉智敬子+高橋悟
アン・リスレゴー
眞島竜男
アフメド・マータル
アーノウト・ミック
森村泰昌
スーザン・フィリップス
フロリアン・プムヘスル
ピピロッティ・リスト
アリン・ルンジャーン
笹本晃
グシュタヴォ・シュペリジョン
高嶺格
田中功起
アナ・トーフ
ローズマリー・トロッケル
ジャン=リュック・ヴィルムート
ヤン・ヴォー
王虹凱
徐坦
やなぎみわ
アレクサンダー・ザルテン
料金:一般1,800円 大学生1,200円 70歳以上1,200円
※高校生以下および18歳未満は無料
休館日:月曜、5月4日(祝・月)は開場

書籍情報

『いしいしんじの音ぐらし』
『いしいしんじの音ぐらし』

2015年4月22日(水)発売
著者:いしいしんじ
価格:1,512円(税込)
発行:シンコーミュージック

プロフィール

いしいしんじ

小説家。1966(昭和41)年大阪生れ。京都大学文学部仏文学科卒。1994年『アムステルダムの犬』でデビュー。1996年、短篇集『とーきょーいしいあるき』刊行(のち『東京夜話』に改題して文庫化)。2000年、初の長篇『ぶらんこ乗り』刊行。2003年『麦ふみクーツェ』で『坪田譲治文学賞』受賞。2007年『みずうみ』が、それぞれ『三島由紀夫賞』候補に。レコード収集家でもあり、蓄音機をスタジオに持ち込んで語るKBS京都ラジオ『いしいしんじのころがるいしのおと』など、ラジオパーソナリティーとしても活躍。画家を志していたこともあり自作に挿画も多い。2010年から京都在住。

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