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音楽を、やめた人と続けた人



メカネロの主催イベントから半年ほど経った2007年2月、PBLとメカネロはもう1度共演している。共に仲のよかったバンド「花のように」の主催イベントということもあって、どちらも万全にはほど遠い状況ながら、そのイベントに出演したのだった。半年間沈黙していたPBLはようやくライブ活動を再開させたばかりだったし、その頃のメカネロはもう、以前のメカネロとは違うバンドになっていた。ボーカルとギターがバンドをやめてしまい、新しいメンバーを迎えた新生メカネロの始動ライブだったのだ。
こうして記録を振り返ってみると、お互いの節目節目で共演を重ねてきたPBLとメカネロの因縁の深さに驚くが、結局その日が、この2バンドが同じステージに立った最後の日になった。
メカネロをやめた二人はちょうど大学を卒業するタイミングで、それこそまさに、音楽で食べていくのか、それとも安定した道を選ぶのか、人生の大きな岐路に立たされていた。そして皮肉なことに、バンドが勢いよく動き回れば回るほど、スケジュールは過密になり、彼らも決断を迫られていった。他のメンバーが音楽で生きていこうとしている以上、やめるならやめると、一刻も早く決断しなければいけないと考えたのだろう。セカンドアルバムを出した直後という、バンドにとって大切な時期にも関わらず、急いで音楽活動から身を引いていった二人を見たぼくも、否応無く自分の岐路に立たされることになった。CINRAとメカネロ、二足のわらじを履いている自分だって、音楽を続けるのか、それともやめるのか、考えるべき時期に差し掛かっていることにようやく気がついたのだ。実際の話、二足のわらじが共にお金になっていない状況で、どちらにも大きな責任を抱えている自分がどっちつかずのままでいれば、共倒れになるのは明白だった。
そしてさらに もう1つ、もっと根本的な悩みが生まれ始めてもいた。音楽を作るのは好きだけど、だからといって本当にそれを「仕事」にする必要があるのか、それが「仕事」になるのか、分からなくなってきていたのだ。
第1話にも書いたことだが、マネージメントサイドから出るさまざまな指示に従ったり、売れるためにどうしなきゃいけないのかを考えたり、そういうことが音楽活動をする上でなぜ必要なのか、分からなかった。いい物をつくったら売れるのか、売れる物を目指した物づくりをするのか、求めるのは同じ「売れる」でも、その過程はまったく違う。実際のところ、色んな人が色んな価値観で色んなことを言い、最終的に多くの場合は、売れる為に必要な物事が優先されるのが現実だ。お金をもらうプロとして、音楽という一つのエンターテイメントで多くの人を楽しませるのが仕事なのだから、自分の好き嫌いや自己満足的な「やりがい」よりも、お客さんを喜ばせる「サービス」を優先するのは当然のことでもある。
いくら美しい理想を思い描いても、自分がやりたいことだけで完結する仕事なんて、どこにも見あたらない。そんな当たり前のことを、ぼくは25年間生きてようやく理解し始めた。もちろん世の中には、ただ単に好きなものを作っているだけで「仕事」になってしまうような人も、ほんの一握りだが、いるにはいる。けれど自分は、好きな音楽を作っているだけで売れるほど、特別な人間ではなかった。残念でならないけれど、そうやって自分の能力をはっきりと自認できた時、ぼくはバンド活動をやめる決意をした。それはPBLと対バンしたイベントから2ヶ月後、あのツアーからちょうど1年後のことだった。
 
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