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『クリエイターのヒミツ基地』 Volume9 多田 玲子(イラストレーター、美術作家)

カラフルな色使いと、動物や果物などの愛らしいモチーフ。しかしただ「かわいい」だけでなく、絵の中からキャラクターたちの笑い声や会話が聞こえてきそうな、物語がはじまりそうな、独特なポップさが秘められている多田玲子さんのイラスト。実は多田さん、ライブハウス界隈では知られた「Kiiiiiii」というバンドのドラマーでもあります。イラストと音楽、そのまったく異なるふたつのジャンルで表現を続けてきた源泉は、どこにあるのでしょうか。ヒミツ基地におじゃまし、そのヒストリーと愛用している道具たちについて伺いました。

テキスト・田島太陽
撮影:CINRA編集部

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多田 玲子ただ れいこ
1976年生まれ、多摩美術大学美術学部彫刻科卒業。2002年に幼なじみの田山雅楽子と、バンド「Kiiiiiii」を結成。ドラム、作詞作曲、アートワーク、グッズなどを自ら手がけ、2007年には海外ツアーも敢行した。同時にイラストレーターとしての活動もスタートし、スーパーバタードッグ、コトリンゴ、アルファのCDジャケットをはじめ、多数の雑誌・書籍・広告などにイラストを提供している。ちなみにお子さんは、現在1歳9ヶ月の男の子。

多田 玲子(ただ れいこ)

「絵ではない道に進もう」と思っていた

「ドラムを叩いてて、楽しくなってくると、絵が見えてくるんです。演奏中は特殊な集中力と高揚感があるかもしれない。いろんなイメージが浮かぶ時は、いい演奏ができてる証拠。逆になにも見えない時は、演奏もよくない時ですね。」

イラストと音楽が、それぞれに対してどんな影響を与えるのか。そんな疑問をぶつけてみると、多田さんはそう答えてくれました。違うジャンルの表現でも、それぞれに試行錯誤していると、結果的に関係し合うことになる。そんな特別な感覚が、独特のポップさと可愛らしさがある多田さんの作品を生んでいるのです。

では多田さんは、どんな人生を歩んで現在の活動に至ったのでしょうか。小さな頃から絵は得意で、クラスメイトからも「似顔絵なら多田ちゃん」と言われていたそう。この頃から、イラストレーターになる素質の片鱗を見せていたのかもしれません。しかし本人は、周りからの賞賛と自分の資質に少しギャップを感じていました。

「うまくはないけど、すごくいい絵を描く友達がいたんです。画用紙にドーンって、好きなことを思いっきり描くみたいな。私は器用だったから、縮こまったちょっとうまい絵しか描けなくて。そういうのに憧れていたんだと思う」

はじめてそう感じたのが、小学校2年生の頃。その後、年齢を重ねるにつれぼんやりと「絵ではない道に進もう」と思っていたそうです。

高校では映画業界に進みたいと考え、自宅にあったビデオカメラで短いショートムービーや人形劇を撮るようになります。ところが選んだ大学は、美大の彫刻学科でした。頭に浮かぶアイデアは立体のものが多く、日本画でも油絵でもデザインでもなさそうだということから、消去法での選択でした。「なんとなく、ファインアートをやりたいとは思ってました。あとは浪人時代に着ぐるみを作っていて、それはまぁ立体だなと(笑)。卒業したあとどうするとかは、当時全然考えていなかったかな」

その言葉通り、卒業後も就職はしませんでした。バイトをしながら東京にある実家に暮らし、友人と組んだバンドKiiiiiiiの活動をしてのんびりと暮らします。実は多田さんの両親はともに研究者で、その職についたのが30歳ごろ。だからそのくらいの年齢までは、やりたいことを探す期間でいいのかな、と考えていたそうです。多田さんに転機が訪れるのは、26歳頃のことでした。

多田さん

こんな絵がプリントしてあるTシャツを着たい、という感覚

知人の紹介で契約デザイナーの面接を受けたデザイン事務所と、デモCDを送っていた音楽事務所から同時に連絡が届きます。多田さんはその時、急性副鼻腔炎の手術で高熱を出して病院のベッドの上でした。「仕事も決まったしバンドも進展があって、かなり劇的な一日でした(笑)」

バンド活動が忙しくなったためにデザイン事務所は10ヶ月で退職するも、今度は音楽事務所のバイトとしてデザイン業務につくことになります。そして、自らバンドのアートワークを行いHPにイラストを掲載すると、それが少しずつ話題になり始めます。

そこから、イラストレーターとして仕事をすることの歯車が噛み合い始めます。手がけた仕事を見た誰かが新しい依頼をし、それを見た人がまた仕事をお願いする。多田さんはひとつひとつの仕事に誠実に応え、その一歩一歩が今に繋がっていったのです。

しかし、小学生の頃「うまいけどよくない」絵を描いていた多田さんは、なぜ「ヘタでもいいから」と考えるようになり、現在のテイストに至ったのでしょうか?「なんでだったんでしょうね…でもすごく自然だったんです。例えば、上手な絵がプリントしてあってもこんなTシャツって着たくないなあってことあるじゃないですか。そういう感覚で(笑)。自分が身につけることを考えたら、うまいことがすべてじゃないなと。つたなくても思いがこもったかわいいものを見ると元気が出ますからね」

マスカットの皮でビーチボール?

作品のモチーフには、果物や動物が多く登場します。色合いもカラフルでファンタジックな雰囲気があり、どこまでもポップです。

作品イメージの根っこにあるのは、小さい頃からの物語好き。不思議な話や童話、妖精や幽霊が出てくるストーリーが大好きでした。学生時代は雑誌に載っていた映画のあらすじをひたすらノートにスクラップしていたほどの物語マニアでもあります。平面的なイラスト作品にも、その奥にストーリー性が垣間見えるのはその影響があるようです。

また親しい友人との会話では、とりとめもない話題がどこまでも広がり、それが作品を発想するきっかけになることも。「友達と『マンゴーの種をブーメランにしよう!』『じゃあマスカットの皮でビーチボールだね!』みたいなくだらない話で盛り上がっている瞬間が、最高に幸せなんです(笑)。そうすると、次第に描きたい意欲も湧いてきますね」

色合いに関しては、小さい頃に渋い洋服しか着せてもらえなかったことが影響しているそう。「地味な色ばっかり着てたから、その反動でカラフルにしたいのかも。絵の具で多くの色を使うようになって、一気に色彩がはじけました」

今のテイストが固まる以前、特に学生時代は自らの
ネガティブな感情や悩みをストレートに描き、暗い
作品になることもあったそう。しかしそこから変化するのに、そう時間はかからなかったようです。今は暗い気分も客観的に、面白く描くことができるようになりました。

「学生のころはシリアスで呪いがこもったような絵も描いてたけど、バカらしくなっちゃって。だって私はもともとお調子者な性格だし、そんな暗い呪いみたいな絵、親に見せても喜ばないだろうな〜、と。でも今は開き直って、『怨念も全然オッケー!』って言えるようになったかな。そういう感情も大事だと思います」

名前が入っていなくても、多田玲子の絵だと分かるように

明るい作品を描こうという意識はもとからなく、自然にいまのテイストに至ったという多田さん。それは複雑な「社会」にあまり興味がなかったから。しかし、その考えが今また変わろうとしています。それは子どもができたことと、震災の影響。

「地震があって、ノンポリから脱しようと思ったんです。今までだったら『いやー私そういうのパスー(笑)』って言ってただろうことも、『自分がやらなかったら誰がやるんだ』って思うようになった。言いたいことは言わなきゃいけないし、行動しなきゃって。子どもができて変わりました。なんとか彼を健康に楽しく育てたいから必死です。それから今自分がやってるような仕事も平和でなければ需要がない仕事。楽しくのほほんと仕事を回して行きたいからこそ、現実のやばくて辛い社会を少しでも良くできるように関わって行きたい」

最後に自作へのこだわり、なぜ可愛らしいモチーフとポップなテイストで作品を描き続けるのかを聞いてみました。「きっと写実的に描いても、私の作品だってたぶん分かってもらえない。たとえ名前が入っていなくても、私が描いたものだって分かるものを作りたいんです。どんなにいい作品でも、自分らしくないものとか、他の人が描いてもいいんじゃないかと思ったものはボツにします。自分が描く必要があるかどうか。それが判断基準なんです」

多田さんの作業机
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