坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

バツイチ、出戻り、家事手伝い。昼間っからスナックで酒を飲み、ママチャリに股がってふらつきながら、ガシャーンとゴミ箱を蹴る。たぶん化粧もしていない、見るからにイタい三十路女、ノン子。一途でまっすぐな年下のマサルの登場で徐々に笑顔を取り戻すのだが、元旦那との再会で彼女の心は揺れ動く…。 切なくも甘い、息を呑むほど臨場感のあるベッドシーンなど、ノン子演じる坂井真紀が、気鋭の熊切監督の指揮下のもと、新たなる境地を作り出している。 主演である坂井真紀さんと星野源さんに、撮影中のエピソードや監督のこと、そしてご自身の恋愛観もうかがった。
※一部ネタバレが含まれますのでご注意ください

相思相愛のキャスティング、個性派ぞろいの俳優陣。

―映画の冒頭で、実家のある田舎でやる気なしの生活を送るノン子と、祭りで店を出すためにやって来たマサルが偶然出会いますね。坂井さんと星野さんご自身は、撮影前に面識はあったんですか?

坂井:はい、ありました。以前、源君が主演で出ていた『去年ルノアールで』という連続ドラマがありまして、それに私がゲスト出演させていただいて、そこでお会いしたことがあります。その時は、ちらっとだけですけどね。

星野:あの時はほんとに一瞬でしたね。その後は、赤犬さんと僕がやっているSAKEROCKというバンドのライブに、プライベートで坂井さんが一度見に来てくれたことがあります。今回の撮影の前は、その2回しか会ったことがありませんでした。

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

―そうだったんですね。映画の役中でも、今お二人を目の前にしても、とても息が合っているように感じます。お二人が共演するという話がきたとき、どう思われましたか?

坂井:源君と共演すると聞いて、すごく嬉しかったです。というのも、SAKEROCKもそうなんですが、源君はマサルのイメージ通りの方だし、私は「星野源」という彼自体がとても好きでしたから。今回の映画でがっつり共演できるのは、本当に嬉しかったですね。撮影がすっごく楽しみでした。

星野:僕もこの映画のお話をいただいたとき、嬉しかったですよ。「うわぁ、坂井さんだ」って。以前の連続ドラマのときは、実質10分くらいしか一緒にお芝居ができなかったんです。しかもコントっぽい芝居で。だから、今回は長い時間、ノン子とマサルという関係で坂井さんと一緒にしっかり芝居ができるのが、とても楽しみでした。

―坂井さんも一度見に行かれたという、SAKEROCKというバンドで星野さんはミュージシャンとしても活躍していらっしゃいますが、今回坂井さんと共演するということで、バンドメンバーの反応はいかがでしたか。うらやましがられたりしませんでしたか?(笑)

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

星野:もちろんですよ。バンドメンバーだけじゃなくて、僕の周りのいろんな人たちからうらやましがられました(笑)。

坂井:嬉しいなぁ(笑)。

―お互いに相思相愛のキャスティングだったのですね。その他出演者も、ノン子の元旦那役の鶴見辰吾さんをはじめ、津田寛治さんや斉木しげるさんなど、現場がとても楽しそうですね。

坂井:なかでも、ノン子の妹の旦那役をされた舘昌美さんはとても個性的な方で、つっこみやすい人だったので、かなり笑わせていただきました。

星野:そうそう、舘さんは面白い方でしたよね。舘さんに限らず、この映画に出てくる俳優さんたちは、本当にみなさん個性的で実力のある方ばかりで、とても面白かったです。演じている時はもちろん真剣なんですが、映画全体を通して本当に楽しい撮影でした。

タイトルに「36歳」とついた意味はあるんですか?

―この映画は、熊切和嘉監督にとって初の女性映画としても話題になっています。三十路女の生態をリアルに描いたオリジナルストーリーですね。

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

坂井:映画のタイトルに「36歳」とついているので、取材のときに、「36歳という年齢とは?」と聞かれます。もともと監督が考えていた題名の中に「36歳」という言葉は入っていなかったのです、企画の段階で、色々と話していくうちに、ノン子の設定年齢の36歳をタイトルに入れることが決まりました。「36歳」とタイトルに付いていますが、あまり関係ないと思っています(笑)。たまたまノン子が36歳なのです。でも、30代の女性を映し出す映画として、何か心揺れるものが皆さんに届いたら嬉しいです。

―番思い出に残っている撮影中のエピソードを教えて下さい。

坂井:今回の映画では、熊切監督が長回しで撮影することにもたくさん挑戦していました。カットをせずに長い間カメラを回し続けるんです。自転車で源君の後ろに私が乗るというシーンがあるのですが、あのシーンは大変でした。源君はもちろんお芝居をしなければならないのですが、その他にバランスだったり技術的な調整や、太陽の具合を待ったり。もちろん、リハーサルを何回も繰り返したりと。やっぱり、シーンを長く撮るっていうのは大変ですね。でも、とても贅沢な時間だと思います。だから、この長回しのシーンは一番印象に残っています。

星野:僕がすごく覚えているのは、僕が坂井さんを肩車して、坂井さんが木の枝におみくじを結ぶシーンがあるんですが、あれ、大変でしたね。

一同:笑

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

坂井:そう、すごい心配でしたよ! 源君って体力なさそうに見えるじゃないですか。ほんとに死んじゃうんじゃないかって心配しました(笑)。

星野:いやいや、軽かったっす、すごく。坂井さんは恐がりなんです。だからあのシーンで「こわい、こわい」って言ってるのは、わりと坂井さんの本当のリアクションなんです。

坂井:あれは確かに大変でしたね。何回もやりましたし。源君は、私の前では「大丈夫です、大丈夫です」って絶対心配させないようにするんです。でも、陰の方で首を抑えて「痛~っ」ってやってたよね(笑)。本当に大丈夫かなって思ってました。

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

星野:あっ、全然隠せてなかったんだ(笑)。しかも、シーンの前半は僕たちが肩車しているところよりも、それを見ている斉木さんがほとんど映ってるから、実際その苦労が映ってなかったんですよね(笑)。

坂井:ハハハ、そうだよね。もちろん、クオリティ的には私達がちゃんと演じた方がいいんですが、斉木さんを写すシーンは私達が映るわけじゃないから、肩車するのが助監督とかスタッフでもいいわけですよ。さらに、どこを写されているのか、何も聞かされてないまま撮影が進んだからね(笑)。

僕とは違って、マサルはうらやましいですよ(星野)

―坂井さんは本作の中で二つのベッドシーンに挑戦されていますね。あまりにもキレイで思わず見とれました。星野さんとのベッドシーンもあったわけですが・・・。

星野:あのシーンは、すごく緊張しました。場所となったノン子の部屋はすごく狭いところで、スタッフさんも壁に張り付いて撮影に臨んでました。あの時の現場は、ものすごい緊張感だったんです。でも撮影中、カメラが回っている横で、「ぐわーっ」って両手グーでガッツポーズみたいな感じで、もの凄い気合いを入れてたんです。それを横目で見て、ちょっと面白くなっちゃって(笑)。気持ちが和んだというか・・・。かなり緊張していたので、助けられました。

坂井:やっぱりすごく緊張しますからね。多少はナーバスになりますし。私達だけじゃなく、スタッフの人も緊張しますし、あの熊切監督の気合いには、こちらも気合いが入りました。とてもいい緊張感があったと思います。

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

―この映画を観終わった後に、すごく甘酸っぱい後味が残りました。しばらく心が浮つくような(笑)。ノン子は36歳、マサルは20代。年上の女性と年下の男性の歳の差のある恋愛青春映画ですが、坂井さんご自身は年下の男性は恋愛対象としてどうですか?

坂井:えっ。私ですか!?

星野:それ、僕も聞いてみたいです(笑)。

坂井:年下が恋愛対象になる可能性も全然ありますよ。よく、「私年上の方が好きです」って言う人いるじゃないですか。でも、私は特に何も考えてないかな。魅力のある人であれば、年齢は気にしないですね。

―星野さんのようなタイプの方はいかがですか?

坂井:ぜひ、おつきあいしたいです。これを機会に(笑)。もしよければ、この後でメールで返事ください(笑)。

一同:笑

坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー

―星野さんが演じるマサルは年上のノン子に惹かれていくわけですが、星野さんご自身は、年上の女性はいかがですか?

星野:僕、実はハタチの頃に30歳の人を好きになったことがあるんですよ。それがまた悲惨な結末で(笑)。それからは、ちょっと年上の女性には苦手というか…。だから、この映画のマサルはいいですよね。マサルはうらやましいですよ。

―映画だけでなく、テレビや舞台などでも多彩な才能で活躍するお二人ですが、この映画でもまた新しい一面を垣間見ることができました。最後に、映画とは関係ないのですが、お二人が世の中で一番信用しているものって何ですか?

星野:いきなり難しい質問ですねー。うーん、自分も含めて、僕は特に何も信じていないですね(笑)。

―それはすごいですね。きっとすごく強い方なんですね。

坂井:私は「努力」かな。努力は人を裏切らないと思っています。

星野:あ、好感度上がりましたね今。僕は逆に下がったかな(笑)。

―大丈夫です大丈夫です(笑)。突然個人的な質問で失礼しました。映画の公開ももちろんですが、今後のお二人のご活躍も楽しみにしています。ありがとうございました!

作品情報
『ノン子36歳(家事手伝い)』

2008年12月20日(土)、銀座シネパトス、渋谷シネ・アミューズにてロードショー
※12月20日より、渋谷シネ・アミューズはヒューマントラストシネマ文化村通りに名称変更予定
監督: 熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
音楽:赤犬
出演:
坂井真紀
星野源
津田寛治
佐藤仁美
新田恵利
宇津宮雅代
斉木しげる
鶴見辰吾

プロフィール
坂井真紀 (さかい まき)

1970年、東京生まれ。92年のデビュー以来、数多くのテレビドラマ、映画、舞台で活躍する実力派女優。映画デビューは「ユーリ」(96)。09年公開作として「ACACIA」が待機している。独自の世界感を持ち、シリアスなものからコメディまでにあらゆる役をこなす。熊切監督作品は、「青春☆金属バット」(06)、「フリージア」(07)に続き、3作目となる。

星野源 (ほしの げん)

1981年、埼玉県生まれ。俳優、小説やエッセイの執筆、またSAKEROCKのギタリストとしても活躍し、作曲家、作詞家としても多彩な才能を発揮している。松尾スズキや宮藤官九郎演出の舞台に出演。映画作品には「69 sixty nine」「少年メリケンサック」に続く3作目。



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