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「映像表現の可能性を求めて」諏訪敦彦インタビュー

「映像表現の可能性を求めて」諏訪敦彦インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:井手聡太
2009/09/29

1999年のカンヌ国際映画祭で、審査員全員一致で国際批評家連盟賞を受賞した『M/OTHER』など、フィクションとドキュメンタリーを自在に往還する作風が、国際的に認められている映画監督・諏訪敦彦。2008年からは、東京造形大学の学長に就任し、映像の教育現場にも深く入り込んでいる。本年10月31日より開催されるヨコハマ国際映像祭では、コンペティション部門の審査委員長に抜擢。狭いワクに捉われることなく、映像の持つ可能性をつねに第一線で考えつづけている氏に、映像が持つ独自の魅力について、改めてお話をうかがうことができた。

(インタビュー・テキスト:小林宏彰 撮影:井手聡太 )

大事なのは、自分の居場所から足を踏み出すこと

─諏訪さんは11月に開催されるヨコハマ国際映像祭の、作品コンペの審査員長をなさっています。コンペ部門で大賞を受賞した作品、とても面白かったです。Youtubeを巧みに使い、さまざまな出自を持つ方々が、自己紹介を他の人の口を借りて語るという作品でしたね。既成の概念にとらわれない、まさに映像ならではの表現にチャレンジしていました。

諏訪:ヨコハマ国際映像祭のコンペというのは、いわゆる映画祭のそれとは違うし、現代美術のコンペでもない。そんな中で、映像の可能性とはなんなのだろうと、審査員自身が考えながら選考しました。 いわゆる映像作家として完成度を追求したものもあり、それで高い水準に至っている作品もあった。けれど大賞を穫った作品は、この作品をきっかけに様々なことを考えることができる。それが決め手だったと思います。

─新しいことにチャレンジしようという映像作家にとって、勇気づける結果になったのでは?

「映像表現の可能性を求めて」諏訪敦彦インタビュー

諏訪:多くのコンペが、特別な能力を持った人が映画をつくるんだという意識にもとづいています。受け取る側は、ただそれを受け取る。しかし、そういう関係ではない、もっと広い可能性を、映像は元々持っていると思うんですよね。

しかし、映画業界内部で行われるコンペだと、なんとなく皆が了解してる価値観があって、これがいい、これが悪いと、ツーカーで通じてしまうところがあるんです。でも、ヨコハマ国際映像祭では、審査員同士でも前提となる価値観が全然違うので、映像ってなんだ?という根本的なところから話し合うことができた。そうした流れの中で残った作品だと思います。

ただ物が映っている、という驚きだけで、映画はできる

─今回の選考結果が、諏訪さんご自身の作品づくりに与える影響もあるんでしょうか?

諏訪:僕自身、劇映画というカテゴリーの中で活動していますが、大事なのはそのカテゴリーから出て、自分がどこに立っているか分からない場所に足を踏み出すことなんです。

現代は、ひとつひとつの世界がバラバラに分断されています。現代美術は現代美術、映画は映画、メディアアートはメディアアートと、そういう業界というか世界、枠組みはどうしてもできてしまって、お互いが関心を持たないという状況になっているのはよくない。今回の映像祭が、積極的に他ジャンルに出て行こうとする方々にとって、出会いの場所になって欲しいですね。

─映画をつくる環境も変わってきて、共同作業ではなく、ひとりでつくれるような環境も整ってきましたね。

諏訪:今回のコンペでは、映像を専門でやっていない人の作品が、もっと出てきてもよかったなと思うんです。昔、映画は、普通の人が立ち入ることができない、撮影所という特別な場所の中でつくられていました。しかし今では、誰もがつくれるものになった。ここにきて、映画が生まれた時の状況に戻ってきていると思うんです。

極端に言えば、ただ物が映っている、という驚きだけで、映画はできると思うんですね。僕自身、自分の映画の中で、よりよくコントロールされたものや計画されたものではないことをやりたいんです。映像の場合、自分の意図しない風景や音声といったものまで映り込んできてしまうわけです。それは単なるノイズではなくて、世界との対話だと思うんですよ。そういうことを可能にしてくれるから、カメラは面白い。

2/3ページ:大学で、映像の教育ってできるの?

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イベント情報

『ヨコハマ国際映像祭2009』

CREAM ヨコハマ国際映像祭2009公式サイト

2009年10月31日(土)〜11月29日(日)
会場:新港ピア、BankART Studio NYK、東京芸術大学大学院映像研究科馬車道校舎、他サテライト会場

プロフィール

諏訪敦彦

1960年生まれ。東京造形大学デザイン学科在学中に、『はなされるGANG』でぴあフィルムフェスティバル入選。卒業後、映画の現場に入りながら、テレビドキュメンタリーの演出に携わる。1996年、『2/デュオ』で長編映画監督デビュー。以降も精力的に活動し、国際的な活躍を見せる。2008年、東京造形大学の学長に就任。

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