特集 PR

くるりが描き出した「見落とされがちなもの」

くるりが描き出した「見落とされがちなもの」

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2010/09/13

時代の空気とかそういうものに対して、すごく敏感にやってる実感はあって。

―では「日本の音楽シーンを変える・引っ張る」という意識は以前と比べて今はいかがですか?

岸田:今の方が強いですけどね。変えるっていうか、誰もやってないことをやるっていう意識はあるのかもしれない。あえてひねくれたことをやるとかじゃなくて。前までは普通にやってたら何かの流れの中にいた気がするんですけど、今は普通にやってるつもりでも、相当変わったことをやってるのかもしれないなってよく思うんです。

―例えば『アンテナ』(04)から『NIKKI』(05)の時期はロックンロール・バンドであることを重要視していましたよね? そこから3,4年経って、日本に若手のロックンロール・バンドが急激に増えたように思うのですが、そういったことをどう感じていますか?

岸田:すごいうがった言い方かもしれないですけど、僕らは何かを始めるのはすごい早いと思います。何かに気づいたりとか、そういうのが早くて、それをそのままやるんで。別に新しい音楽性を取り入れるとかそういうことじゃなくて、時代の空気とかそういうものに対して、すごく敏感にやってる実感はあって。

くるりが描き出した「見落とされがちなもの」

佐藤:作ってるときには、その先に明確に何かが見えるっていうのものではないんですけど、自分が新しいと思うもの、自分たちがやったことのないことをやるっていう。常に同じものを作ってもしょうがないっていうのが元からあるバンドだと思うので。


芸術って、いかに見落としがちなものに目を向けて、拾うかってことやと思うんですよ。

―では、新作についてお伺いします。『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』という印象的なアルバム・タイトルは、1曲目の“無題”の歌詞から取られているわけですが、このフレーズをタイトルにした理由を教えてください。

岸田:結構いろんなタイプの曲があると思うんですよね。どの曲でもバラバラなことを言うてるんですけど、その先にあるものを集約したら、このタイトルみたいなことになるんかなって。

―僕の見方としては、本作はコミュニケーションのあり方っていうのが一つのポイントになってると思ってて。Twitterのようなツールで同時に多くの人と繋がれるのが良しとされていて、一方でJ-POPや特定のギター・ロックでは今も「君と僕」の世界が展開されている。そういった状況の中で、そうじゃない部分、例えば家族とか近所づきあいとか、もう少し近くて緊密なコミュニケーションの重要性に目を向けようという視点があるのかなと思ったんです。

岸田:そうかもしれないですね。僕はTwitterもやらへんしわからへんけど、ついつい見落としがちなものって色々あるじゃないですか? 芸術って、いかに見落としがちなものに目を向けて、拾うかってことやと思うんですよ。でもそれを仕事として、「私はアーティストで、こういうものを作らなければいけない」みたいなことを先に思ってやってしまうと、すごく遠くの方を見たりとか、観念的な考え方で何かを作り出したりすることが多いんですよね。それはそれでいいもんもたくさんあるし、自分たちもそういう風にやってきたもんもあるんですけど、今回のはオーソドックスなアートのあり方っていうんですかね。アフリカ行って、サバンナ行って、夕陽を見たらすごいでしょうけどそうじゃなくて…

くるりが描き出した「見落とされがちなもの」

―身の回りにあるものでも視点を変えれば気づくことがある、と。

岸田:そうそう。それでさっきおっしゃったコミュニケーションってことで言うと、Twitterであるとか、個人個人がシステムにあてはめられてコミュニケーションをしてるっていう。それって全員がビームサーベル持って歩いてるみたいなもんで、ケンカの弱い奴でもビームサーベル持ってて、それを振り回したら人が死ぬわけですよ。それを使いこなす人間よりも、モノの方が力を持っている。元々はシンプルなのに、そういうところからいろんなコミュニケーションの弊害が出てきてるなって。そこが僕にはすごい目について、色々考えたりすることもあって。

―ツールに縛られちゃう人って、多いですからね。

岸田:そういうのってやっぱり、音楽や美術の敵なんですよ。僕もYouTube見たり、iTunesでダウンロードしたりしてますけど、本来そういうものは芸術的なものとすごく距離のあるものですから。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

くるり<br>
『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』初回限定盤
くるり
『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』初回限定盤

2010年9月8日発売
価格:3,200円(税込)
ビクターエンタテインメント / VIZL-370

1. 無題
2. さよならアメリカ
3. 東京レレレのレ
4. 目玉のおやじ
5. 温泉
6. 魔法のじゅうたん
7. シャツを洗えば
8. コンバット・ダンス
9. FIRE
10. 犬とベイビー
11. 石、転がっといたらええやん
12. 麦茶
[DVD収録内容]
・魔法のじゅうたん ビデオクリップ
・シャツを洗えば (くるりとユーミン) ビデオクリップ
・ くるり歴代ヒット曲(“東京”“ばらの花”“ワールズエンド・スーパーノヴァ”“さよならリグレット”ほか)のVideo Clips&くるりの歴史を彩る超激レア蔵出し映像がランダム再生されるスペシャルコンテンツ

プロフィール

くるり

1996年結成。1998年シングル『東京』でメジャーデビュー。現在のメンバーは岸田繁(Vo、G)、佐藤征史(Ba)。独特な切り口の歌詞、ユニークな音楽的発想、これらを支えるダイナミックな演奏が多くのリスナーを惹きつけており、シングル曲はもちろん、そのカップリングにいたるまですべての曲が幅広くリスナーから支持を得ている。9月8日には9枚目のアルバムとなる『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. 『オーシャンズ8』地上波初放送。キャストの魅力や呈示された問いも 1

    『オーシャンズ8』地上波初放送。キャストの魅力や呈示された問いも

  2. サザンオールスターズの横アリ無観客ライブが「特別」だった理由 2

    サザンオールスターズの横アリ無観客ライブが「特別」だった理由

  3. 吉高由里子×横浜流星『きみの瞳が問いかけている』主題歌はBTSが担当 3

    吉高由里子×横浜流星『きみの瞳が問いかけている』主題歌はBTSが担当

  4. 西川美和監督の映画『すばらしき世界』に役所広司、仲野太賀、長澤まさみら 4

    西川美和監督の映画『すばらしき世界』に役所広司、仲野太賀、長澤まさみら

  5. カネコアヤノの「お守り」は何か?「大丈夫」の魔法とあなたの存在 5

    カネコアヤノの「お守り」は何か?「大丈夫」の魔法とあなたの存在

  6. ハルカミライが手にした本当の強さ。ひたむきさを抱き締める歌 6

    ハルカミライが手にした本当の強さ。ひたむきさを抱き締める歌

  7. 石原さとみが笑顔で「おうち、すきや~」 すき家の新CM「おうち」篇放送 7

    石原さとみが笑顔で「おうち、すきや~」 すき家の新CM「おうち」篇放送

  8. 山下達郎、ライブ映像を初配信 「皆さんのおいでをお待ちしています」 8

    山下達郎、ライブ映像を初配信 「皆さんのおいでをお待ちしています」

  9. Suchmosの楽曲“Miree”のライブ映像が期間限定公開 9

    Suchmosの楽曲“Miree”のライブ映像が期間限定公開

  10. 遥海、その歌声は人々の心を震わせる。稀有な人生から溢れ出る歌 10

    遥海、その歌声は人々の心を震わせる。稀有な人生から溢れ出る歌