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偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに聞く

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに聞く

インタビュー・テキスト
上野房子

ダンスとは、この世界と偽りのない関係を持つ術

─ステージ上でマーラーの楽曲を演奏するのは、アンサンブル・イクトゥス。ベルギーを代表する現代音楽のアンサンブルと、ケースマイケルさんの共演も楽しみです。

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルインタビュー
©Herman Sorgeloos

AD:このアンサンブルとは、ずいぶんと長い付き合いになります。彼らの演奏で幾つもの作品を上演しました。音楽監督で指揮をするジョルジュ=エリ・オクトールには、全幅の信頼を寄せています。ライブ演奏でのパフォーマンスは、録音された音楽で踊るのとは全く違う体験になるんです。

今回は、シェーンベルクが編曲した楽曲を使いますが、ジョルジュ=エリは、余分な事項を付け足すことなくこまやかな演奏をしてくれる。そうすることによって、シェーンベルクの編曲を尊重するだけでなく、マーラーの原曲を尊重できるのだと思います。

─また、愛知芸術文化センターで10月26日から28日まで行なわれる公演では、ケースマイケルさんの初期の代表作『ローザス・ダンス・ローザス』が上演されます。日本未上演の近作ではなく、あえて旧作を上演する理由は?

AD:初演から25年の年月を経た今もなお、『ローザス・ダンス・ローザス』が作品としての必然性を失わず、自分たちが何者であるかを語れると感じたからです。初めて見る人だけでなく、25年ぶりに見る人や出演ダンサー、そして私自身にとっても楽しい経験になると思いますね。

今回、ひと昔前に作った自分の作品を通して、いかに創作したのかを振り返り、テーマを語る語り口の多様性を見直すことができました。新作を作ることと、旧作をリバイバルすることは、互いに補完し合う関係にあるんです。自分の作品と自分自身を新たな視点で見つめ、感覚をシャープにできたように感じました。来年は、初期の作品で構成したプログラムを上演します。『ファーズ』、『ローザス・ダンス・ローザス』、『エレナズ・アリア』、『バルトーク』の4作品。日本でも上演できると嬉しいですね。

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルインタビュー
©Anne Van Aerschot

─では、最後にお訊きします。あなたにとって、振付とは何ですか。何があなたを振付に駆り立てるのでしょうか。

AD:私にとっての振付とは、私自身を含む人間が、いま、生きているこの世界ともっとも偽りのない関係を持つ術だと思っています。肉体を駆使して踊ること、それは私にとって、言葉にならない抽象的な考えに形を与える最上の方法です。

私は肉体とその表現の可能性を信じています。だから、公演を見ている人たちが作品のなかに自分自身を見出し、自分が何者なのかを考え、自分の生きざま、生きている意義を考え直せる。私の作品が濃密で知的、かつエモーショナル、さらには精神的でもあるような経験の端緒になったとしたら、それは私にとって最高の瞬間です。

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イベント情報

アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル+ジェローム・ベル+アンサンブル・イクトゥス
『3Abschiedドライアップシート(3つの別れ)』

2010年11月6日(土)、11月7日(日)
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
時間:各日とも15:00〜(上演時間約90分、途中休憩なし)
演奏:アンサンブル・イクトゥス
音楽:グスタフ・マーラー(アルノルト・シェーンベルク編曲)『大地の歌』より最終楽章「告別」
指揮:ジョルジュ=エリ・オクトール
ダンス:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
メゾ・ソプラノ:サラ・フルゴーニ
ピアノ:ジャン=リュック・ファフシャン
料金:一般S席6,000円 A席4,000円 学生A席2,500円(全席指定)
※6日公演終了後、ジェローム・ベルによるポスト・トークを開催

愛知公演
2010年10月30日(土)17:00開演
2010年10月31日(日)14:00開演
会場:愛知県 愛知芸術文化センター 大ホール

静岡公演
2010年11月2日(火)19:00開演
会場:静岡県 静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 中ホール

プロフィール

ローザス芸術監督。モーリス・ベジャールのムードラ(ブリュッセル)、ティッシュ・スクール・オブ・アーツ(NY)で学ぶ。1983年、ムードラで学んだ4人の女性ダンサーでローザスを結成し、『ローザス・ダンス・ローザス』でデビューを飾る。音楽と身体の構造的関係を探究しつつ常に刺激的な作品を発表し続け、名実共に世界をリードする。2004年、細川俊夫作曲、大野和士指揮によるオペラ『班女』の演出を手がけるなど、旺盛な創作活動を続けている。

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