特集 PR

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに聞く

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに聞く

インタビュー・テキスト
上野房子

ローザスのメンバーではなく、私自身が踊るべき作品になった

─実際のコラボレーションの様子を教えてください。

AD:この音楽の本質は何なのか。この音楽が呼び醒す感覚は何なのか。いかにこの音楽に向き合い、対等な関係を結べばいいのか。いかにそれらをダンスという行為で表現すればいいのか。様々な質問を投げ合いましたね。どちらかが主、どちらかが従という関係ではなく、まるで超高速でピンポンを打ち合うようでした。

─そして、見つけ出した答えとは?

AD:うーん、言葉では説明しがたいです。答えを探すプロセスそのものが作品の一部になっているし、作品を見てもらうことがいちばん確かな回答になる、と答えていいでしょうか。実際のパフォーマンスでは、このプロジェクトがたどったプロセスについて話す場面があるし、マーラーの音楽について話す場面もあります。日本の観客の方たちにもテキストを理解してもらえる演出を考えているところです。

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルインタビュー
©Herman Sorgeloos

─ジェローム・ベルさんは西洋思想を専攻した経験を持ち、ラジカルかつロジカルなコンセプトを織り込んだ作品で知られていますね。一方、ケースマイケルさんは東洋思想への造詣が深い。お2人のバックグラウンドの違いは、この作品にどう影響しましたか。

AD:面白いことに、私たちの思考のベースは全く違うけれども、お互いを補いあって一つのピースになった、という感じがしました。ちょうど全く違う基盤に根ざした西洋医学と東洋医学が、互いを補い合う関係にあるように。といっても、彼も私もダンサーで振付家ですから、決してかけ離れた存在ではなく、お互いの知識や経験を分かち合い、補完しながら仕事を進めることができた。とてもハッピーで、実り多いプロセスでした。

─『大地の歌』は交響曲ですが、歌曲でもあります。「告別」ではアルトの独唱が、死、生、自然、友情など、様々な思索を歌い上げますね。

偽りなき振付 アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルインタビュー
©Herman Sorgeloos

AD:マーラーは、孟浩然や王維の詩をもとにした歌詞を使っています。といっても、後世のドイツ人が翻訳したもので、必ずしも厳密な訳ではなく、文体も統一されたものではありません。でも、マーラーが意図的に用いたものだし、2年後に他界することになるマーラーの思いを代弁するものになっていると思うので、当然『3Abschiedドライアップシート(3つの別れ)』にも反映されています。さらに、私のごくプライベートな経験に由来した事柄も、この作品のプロットに取り入れています。

─それはたとえば、ケースマイケルさん自身の死生観が語られるわけですか。

AD:この音楽と私の個人的な関係が反映されている、といったところですね。でも、私のプライベートな経験を具体的に語ることはせず、ありのままの私が舞台に存在する。だからローザスのメンバーではなく、私自身が踊るべき作品になったわけです。

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル+ジェローム・ベル+アンサンブル・イクトゥス
『3Abschiedドライアップシート(3つの別れ)』

2010年11月6日(土)、11月7日(日)
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
時間:各日とも15:00〜(上演時間約90分、途中休憩なし)
演奏:アンサンブル・イクトゥス
音楽:グスタフ・マーラー(アルノルト・シェーンベルク編曲)『大地の歌』より最終楽章「告別」
指揮:ジョルジュ=エリ・オクトール
ダンス:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
メゾ・ソプラノ:サラ・フルゴーニ
ピアノ:ジャン=リュック・ファフシャン
料金:一般S席6,000円 A席4,000円 学生A席2,500円(全席指定)
※6日公演終了後、ジェローム・ベルによるポスト・トークを開催

愛知公演
2010年10月30日(土)17:00開演
2010年10月31日(日)14:00開演
会場:愛知県 愛知芸術文化センター 大ホール

静岡公演
2010年11月2日(火)19:00開演
会場:静岡県 静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 中ホール

プロフィール

ローザス芸術監督。モーリス・ベジャールのムードラ(ブリュッセル)、ティッシュ・スクール・オブ・アーツ(NY)で学ぶ。1983年、ムードラで学んだ4人の女性ダンサーでローザスを結成し、『ローザス・ダンス・ローザス』でデビューを飾る。音楽と身体の構造的関係を探究しつつ常に刺激的な作品を発表し続け、名実共に世界をリードする。2004年、細川俊夫作曲、大野和士指揮によるオペラ『班女』の演出を手がけるなど、旺盛な創作活動を続けている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別 1

    映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別

  2. 横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇 2

    横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇

  3. ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの 3

    ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの

  4. 木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら 4

    木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら

  5. King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開 5

    King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開

  6. 高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送 6

    高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送

  7. カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用 7

    カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用

  8. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース 8

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース

  9. YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用 9

    YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用

  10. スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催 10

    スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催