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許された現実逃避 シグナレス インタビュー

許された現実逃避 シグナレス インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/02/04

夜景とかはロマンチックやと思わないんですよ。人間の罪悪感しか感じないですよね(笑)。

―やはり直接的過ぎない表現、聴き手に余白を残すっていうのはお2人の共通点であり、シグナレスの色だと言っていいのかもしれませんね。

池永:確かにそうですね。決めない、押し付けない。

―「これだ」っていうのを提示する音楽ではないというか。

池永:声高らかに言う感じではないですね。ゆーきゃんがちっちゃな声でボソッと歌うのって、すごくロマンチックやなって。そう、ロマンチックな感じは結構テーマにありましたわ。夜景とかはロマンチックやと思わないんですよ。人間の罪悪感しか感じないですよね(笑)。昨日、なんかものすごい時計の音が聞こえる日やったんですよ。チックチックタックみたいな音が耳につく日って、なんかロマンチックじゃないですか? そういう意味合いでのロマンチックさって、宮沢賢治にも当てはまるんですよ。『銀河鉄道の夜』とかね、ああいうものすごい物悲しいロマンチックさ。

―うん、そういう感じはすごくします。

池永:『NO SIGNAL』っていうタイトルも、ないことのロマンチックさ、欠けてるから、足りないからこそ見えてくるもの、聴こえてくるもの、そういうものってロマンチックだなって。クラブで朝3時にものすごいメランコリックなハウスの曲がかかったりすると、明日も仕事やのに、でも帰りたくない、この場から消えたくないって思う、そういうロマンチックさを出したいなって。何故それがロマンチックかっていうと、翌日に仕事があるからなんですよ。仕事がなくって、そのままずっと踊っていられるならロマンチックじゃないんですね。帰る場所があって、明日から現実が始まる、だからこそドリーミーな今がロマンチックになっていくっていう。

ゆーきゃん:万葉集に出てくる、防人の歌や東歌がすごく好きなんです。「故郷に帰りたい」「どうしてこの子がこんなにいとおしいんだろう」、ただそれだけの歌なのに、背景がその奥でものすごく鳴っているから、いっそう美しく聴こえます。何かを言うっていうことには、時代の苦しみや悲しみ、自分の置かれてる状況が全部くっついてくると思うので、それをわざわざ言う必要はなくって。「秘すれば花」というか、隠してるものによって輝くっていうことがすごくあると思うんですね。シグナレスはそれだと思います。シグナルが鳴ってない部分にある、信号に変えられない輝きみたいなものが大事な気がします。

池永:物悲しくてやりきれないんじゃなくて、その悲しさがキラキラに昇華されたとき、すごいロマンチックなものになる。でもそれは嘘だよ、夢だよっていう。現実はもっと厳しいよって。でも厳しさを知ってるからこそ、逃避してもいいと思うんですよ。何もない希望に対して頑張るよりは、音楽ぐらい逃避してもいい。それをドリーミーなキラキラしたポップに落とし込む、そっちの方がいいじゃんっていう。『NO SIGNAL』って、そういうアルバムなんじゃないかな。

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リリース情報

シグナレス<br>
『NO SIGNAL』
シグナレス
『NO SIGNAL』

2011年2月2日発売
価格:2,300円(税込)
FCT-1007

1. y.s.s.o.
2. ローカルサーファー(Album ver.)
3. 太陽の雨
4. パレード
5. LOST
6. 風
7. 星の唄
8. ローカルサーファー(やけのはらREMIX)

プロフィール

シグナレス

シンガー・ソング・ライター「ゆーきゃん」と、エレクトロ・ダブ・ユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」のリーダーであるピアニカ奏者/トラックメイカーの池永正二を中心としたプロジェクト。2010年、ライブハウスやクラブといった従来の枠組みから飛び出し(はみ出し)、オフィス、映画館、Tシャツショップなどでのショウをスタート。10年12月、12インチ・ヴァイナル『local surfer』をJET SETよりリリース、300枚の限定プレスは発売前にすべて出荷終了。そしてついに11年2月、felicityよりファーストアルバム『NO SIGNAL』をリリースする。

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