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渋谷慶一郎×朝吹真理子「ロスト・イン・カンバセーション」

渋谷慶一郎×朝吹真理子「ロスト・イン・カンバセーション」

聴き手・構成
中島洋一

今年4月、東京日仏学院で催された『詩人たちの春:ポリフォニー』で共演を果たした音楽家の渋谷慶一郎と芥川賞作家の朝吹真理子。ふたりは普段、SkypeやSMSでチャットをするような気の置けない間柄だという。言葉を持った音楽家と音楽を愛する作家は、チャットでどんな言葉を交わしているのだろうか。「Chat」の本来の意味は「雑談」。反射的に発せられとどまることのない「会話の言葉」でもなく、時間をかけて記され構成される「書簡の言葉」でもない。その挟間にあって「損なわれていった言葉」を覗いてみたい。2011年5月某日の夕食後、互いの自宅で始まったSkypeでの「雑談」は興味の赴くまま深いところへ流れていった。

「がんじがらめ」っていう言葉が似合う人だよねw。(渋谷)
やだー。自由がいい。(朝吹)

―そもそも2人はいつごろお知り合いになったんですか?

朝吹:はじめて渋谷さんにお目にかかった日は、『流跡』という最初に書いた小説が校了したすぐ後だったんです。

渋谷:え、そうだっけ?

朝吹:たしか2年前(2009年)です。小説と連動しているのでよくよく覚えています。

渋谷:くらいだよね。渋谷のet-sonaでね。

朝吹:詩人の佐藤雄一さんと3人で。なつかしいね。あのお店おいしかった。

渋谷:なんか緊張してたよね(笑)。

朝吹:方々からいろいろな話を聞いていたから(笑)。

渋谷:おいおい(笑)。アーティストだから、とか言えばいいんだろうか(笑)。

朝吹:でも、実際お会いしたら、優しかった。そして作品の話になると厳しかった。

渋谷:そうだっけ。なんか恥ずかしいけどね、それは。

渋谷:僕が池田亮司さんとか刀根康尚さんとやった『ATAK NIGHT4』(渋谷慶一郎率いる音楽レーベルATAKによる2009年のコンサートイベント)の、

渋谷:ツアーニ

渋谷:ツアーニ

渋谷:ツアーにw

朝吹:ツアーにwさきすすんで!

渋谷:すいません(笑)。タイプミスは、疲れてるとか言われるんだよな。。。山口と東京のコンサート両方に来てたとかいう話を聞いてたんだよね。

―朝吹さんはよくクラブに行かれるんですか? 先日の『APMT NIGHT』にも行ってたんですよね。

渋谷慶一郎×朝吹真理子「ロスト・イン・カンバセーション」
撮影:朝吹真理子

朝吹:クラブ好きです。いっぱい行くわけではないけれど、池田亮司さんが大好きなので、このあいだの『ソナー』にも行きました。『ATAK NIGHT4』よかったなあ。また行きたい。『ATAK NIGHT5』希望。

渋谷:あれは本当に大変だったからな。完全にセルフプロデュースするのはもう無理だな。

朝吹:ガーン。最近お仕事激務ですよね渋谷さん。

渋谷:うん。だから、やると思うけど手伝ってもらうことになる、どこかに。だって、アーティストの飛行機の手配までATAKがやってたんだよ。

朝吹:え、そうだったの!?>飛行機

渋谷:そうだよ。じゃなきゃ誰がやるのw

朝吹:なんと。。。いや、チケット手配まで想像していませんでしたが。おつかれさまです。いっぱい愉しみました。そうそう、「新潮」の矢野さんとは、打ち合わせの合間に、音楽の話をちょこちょこっとしていて。

渋谷:そうだ、朝吹亮二の娘が小説書いててYCAMまでATAKのイベントに行ったりしてるっていうのを新潮の矢野さんから聞いたんだ。すごく音楽詳しいからね。

朝吹:オーディオ狂です。

渋谷:音楽の趣味がいいオーディオ狂という、珍しい人だよね(笑)。

朝吹:そう、センス抜群なんです。オーディオ狂にして趣味がよいという矛盾のような(笑)。

渋谷:オーディオ狂の人は、あんまり面白くない音楽をすごくいい音で聴いてることが多いからな(笑)。

朝吹:以前、中原昌也さんは、つくるひとは良いオーディオで聴きすぎない方がよいと言っていました。渋谷さんもそう思いますか?

渋谷:作るときはすごく厳密なモニタースピーカーがいい。で、普段聴くのはiPodとか繋げるような普通ので聴いてる。両方、常に触れてないと、実際にリスナーに届くときの想像がつかないから。

渋谷慶一郎×朝吹真理子「ロスト・イン・カンバセーション」
撮影:渋谷慶一郎

渋谷:真理子ちゃんは?

渋谷:なんか入力迷ってるでしょ。

渋谷:初々しいじゃないかw。

朝吹:ばれたw。

朝吹:えっとね。

朝吹:iPodにイヤホンでそのまま聴いたり、あとは、家にある謎のステレオ(石碑みたいな)でかけたり。

渋谷:僕はイヤホンとヘッドフォンは趣味では使わないんだよね。

朝吹:耳を痛めるから?

渋谷:そうそう。それが一番こわい。あと仕事してる気分になっちゃうから。

朝吹:私は可聴領域が普通の人より高いところまで聞こえるので、耳を痛める恐怖は、うっすらわかります。

渋谷:それは若いから以上に?

朝吹:らしいです。測定したら、高音に強いみたい。

渋谷:高音に強い人は、音楽の聴き方が独特だよね。アディクト率が高いというか。

朝吹:がんじがらめになりやすいです。

渋谷:それ何でもでしょうw。

朝吹:え、なにそれw。

渋谷:「がんじがらめ」っていう言葉が似合う人だよねw。

朝吹:やだー。自由がいい。

渋谷:「がんじがらめ」っていうペンネームで、作詞とかしたらいいよ(笑)。

朝吹:(笑)。

渋谷:僕も高音強くてさ。(高音は)脳幹に響くというか、そこに届くとすごくアディクトするわけ。

朝吹:うんうん。

渋谷:だから、音楽が難しくても単純でも、そこに届けば人は覚えられるじゃない?

朝吹:とらわれの身になる。

渋谷:「がんじがらめ」にできるじゃない?(笑)

朝吹:ひえー。やだこのひと。

渋谷:そうしたいという欲望はふつふつとあるので(笑)。

朝吹:渋谷さんのプレイは、踊っていても突然かためられてしまう感覚はあります。

渋谷:ああ、この前(『APMT NIGHT』)そうだった?

朝吹:音の空間構成がすごくよかった。音の水槽でした。

渋谷:ああ。

朝吹:波のように音がぶくぶくしていて、でも、途中で回遊困難になりました。

渋谷:僕は水没フェチなので、溺れさせたり泳がせたりするのが好きなんだよね。

朝吹:S。魔王。

渋谷:(笑)。でも、この前のは思いのほか、ロックのコンサートみたいでおもしろかったな。

朝吹:ロックミュージシャンみたいな煽りをしていらっしゃった。ライブが始まる前に「慶ちゃーん」という嬌声も聞こえました。すごいねえ。

渋谷:いやいや、きみのオジサマ人気にはかなわないです(笑)。

2/5ページ:私は小説読みながら、小説書くような感覚ってありますよ。(朝吹)

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プロフィール

朝吹真理子

1984年、東京生まれ。慶應義塾大学前期博士課程修了(近世歌舞伎)。2009年、『流跡』でデビュー。2010年、同作で『第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞』を最年少受賞。2011年1月、『きことわ』で『第144回芥川賞』を受賞。

渋谷慶一郎

1973年生まれ、音楽家。東京芸術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立。国内外の先鋭的な電子音響作品をCDリリースするだけではなく、デザイン、ネットワークテクノロジー、映像など多様なクリエーターを擁し、精力的な活動を展開する。2009年、初のピアノソロ・アルバム『ATAK015 for maria』を発表。2010年には『アワーミュージック 相対性理論+渋谷慶一郎』を発表し、TBSドラマ『Spec』の音楽を担当。2011年は、モスクワでのイベント『LEXUS HYBRID ART』のオープニングアクトを担当するなど、多彩な活動を続ける。

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