渋谷慶一郎×川上シュン アーティストと共生する新しい広告の形

10組のアーティストが「ライフサイエンス」をテーマとした10個のキーワードを基に楽曲を発表することで、「協和発酵キリン株式会社」の特徴やビジョンを伝えるウェブコンテンツ『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』がスタート。その第1弾として、「バイオテクノロジー」をキーワードとした渋谷慶一郎の楽曲“Heavenly Puss - for 10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE Ver.”が10月15日から公開されている。「バイオテクノロジー」や「抗体医薬」「アンメット・メディカルニーズ」といったキーワードは、字面だけを見ればやや難解な印象を受けるものではあるが、「人生をより豊かに、美しく生きるためのもの」と考えれば、音楽もライフサイエンスもその根幹は共通していると言えよう。

このウェブコンテンツのディレクションおよびアーティストのキュレーションを務めたのが、artless Inc.の川上シュン。自らビジュアルアーティストとしても活動する彼のセンスと幅広い交友関係が、プロジェクトの基盤となっていることは言うまでもない。一方、渋谷慶一郎は現在パリに活動の拠点を設け、10月20日にシャトレ座でのソロコンサートを終えたばかり。今回の曲は彼がパリに着いて最初に作った曲であり、その意味でも非常に貴重な一曲なのである。二人の対談は、単なる一プロジェクトの枠を超え、アートと人生の関係を様々な視点から見つめ直す、非常に濃密なものとなった。

時代が一周して、原点的な創造と消費の関係に戻ってきてる気がするんですよね。(渋谷)

―まずは今回のプロジェクトがどのようにスタートしたのかを話していただけますか?

川上:「協和発酵キリン」のブランドを知ってもらうために何ができるだろう? と考えたときに、事業内容やコンセプトは非常に素晴らしいんですけど、専門的な分野だから一般の人には伝わりにくいんですよね。そこで、とりあえず難しいことは後回しにして、「この音楽のコンセプトは何だろう?」というところにまず興味を持ってもらったほうが、たくさんの人に届くんじゃないかというのが、もともとの僕のアイデアだったんです。

―確かに、「ライフサイエンス」や「バイオテクノロジー」という言葉だけ聞くと難しく感じますよね。それを音楽に変換してわかりやすく伝えようと。

渋谷:僕が今回の企画を面白いと思ったのは、ちょっと俯瞰した目線なんだけど、協和発酵キリンが会社のコンセプトを抽象的に伝えるために、音楽を作ることをオファーするというスタンスが面白いなと思ったんです。しかも、1曲に対して十分な時間と予算をかけて作らせるというのは音楽の発表形態として面白いなと思いました。

左から:川上シュン、渋谷慶一郎
左から:川上シュン、渋谷慶一郎

―音楽の作られ方、発表のされ方として面白いと。

渋谷:そうです。僕はもはや音楽の発表の機会って、何でもいいと思っていて。例えば少し前までは、1年間すべての仕事を断ってフルアルバムを作るのが夢だったけど、今はフルアルバムなんて存在しないようなものですよね。でも、音楽を作って、発表して、それで生活するっていう音楽家の活動を誰が負担するのか? という問題は常にあって、僕は企業が負担するっていうやり方がベストだと思っています。そういう意味で今回の試みは面白いし、ウェブだから誰でも聴けますよね? 「B to C」じゃない、音楽家とリスナーとの間に直接的なペイが発生しない音楽の共有の仕方がもっとあっていいと思うし、それに賛同したってところも大きいかな。

―パトロン文化に通じるものがありますよね。かつての音楽のあり方がそうであったように。

渋谷:時代が一周してるのかもしれないですね。ちょっと話は変わりますが、僕は写真集や画集が好きで、相当買っていたほうだと思うんだけど、最近、紙のアートブックを買うことにすごく抵抗を覚えるようになりました。簡単に言うと、「これ偽物だよな」って思うようになったというか(笑)、紙にコピーされたものだったら、「これを出力すればいい」というデータをもらったほうがよっぽどいいなと思う気分もある。それに、実際問題として写真集を買ってもゆっくり見る時間がないわけ。だったら、ちょっと高くても、本物を買って、部屋に飾っておけばいつでも見られるし、そっちのほうが効率的ですよね。

―なるほど。

渋谷:写真や絵が撮られたり描かれたりして作品と呼ばれて、やがて複製されるようになって、それを買うことがアートと消費の一般的なあり方なわけだけど、そこには見る喜びよりも持つ喜びの優位があったと思うわけ。そこから一周して、高度情報化社会もある程度成熟してきて、「オリジナルを買うほうがいいじゃん、持ってるだけなんて意味ないし見る時間もないし(笑)」って感じがしてる。さっきパトロン文化に通じるっておっしゃいましたけど、原点的な創造と消費の関係に戻ってきてると思うような事例は同時多発で起きている気はするんですよね。

今は音楽のマーケットが変化していて、業界が次のステージに来ている。今回の企画は、そこを理解している人にお願いしたかったんです。(川上)

川上:僕もパトロン的な企業の立ち位置ってあり得ると思っていて、さっき渋谷さんが言ってたように、今回の企画ってCM音楽の依頼ではないんですよね。コンセプトのオーダーはあるけど、楽曲への指示は一切ないんです。もちろん、ものすごくネガティブなものが出てきてしまったらあるかもしれないけど……。

渋谷:それはあるだろうね。呪いみたいな音楽とかはまずいよね(笑)。

川上:そういう可能性はないとは言えないけど(笑)、決まっていたのは「アーティストにコンセプトを渡して、いい音楽を作ってもらいましょう」ってことだけだったんです。だから、フラットっていうか、アーティストのことを尊敬して、発注……っていう言い方もしっくりこないんだよな……。「作ってもらう」っていう、そういうピュアな関係で。

右:渋谷慶一郎

―10組(渋谷慶一郎、no.9、STUDIO APARTMENT、JEMAPUR、DJ KAWASAKI、blanc.、Open Reel Ensemble、i-dep、高木正勝、蓮沼執太+コトリンゴ)のアーティストを選ぶにあたっては、何か基準がありましたか?

川上:SoundCloudやYouTubeに乗せるから、著作権的にはハードルの高いオーダーなので、そこに理解がある人を選んでいます。今回の企画は、渋谷さんがオッケーだったらやろうと思ったんですよ(笑)。

渋谷:そうなんだ?

川上:プランニングの時点で、渋谷さんに軽く投げたときに、「いいじゃん、面白いじゃん」って言ってくれたから、この感覚を持ってる人をあと9組探せるなと自信が持てた。今は音楽マーケットが変化していて、もはやCDを売って生きる時代じゃなかったり、海外ではみんなSpotifyやSoundCloudで音楽を聴いてたり、業界が次のステージに来ているわけで、そこを理解してくれる人にお願いしたくて。そういう意味で、渋谷さんは現代をよく知っているので。

渋谷:音楽はそういう動きが早いからね。

川上:あと渋谷さんはテクノロジーを駆使して音楽を作っていて、協和発酵キリンもテクノロジーを医療の分野に活かしているわけだから、共通項があるなと。アウトプットは全然違うけど、医学の研究者と音楽家って、リンクする価値観やフィロソフィーがあるような気がしたんですよね。

渋谷:まあ、テクノロジーってことで言うと、デジタルの音楽って危ない側面もあるんですけどね。

―と言うと?

渋谷:極論すると家でパパッと作って、書き出して、メールでファイル送ったら、もうそれで終わりじゃない? でも、そうやって簡単にできた音楽がもたらす感動って、やっぱりちょっと少なくて。例えば、Aphex Twinの新しいアルバムが久々に出ましたけど、あれは相当時間がかかってると思うんですよ。EDMとかに比べると地味だけど、「作曲」という視点で見るとすごく高度で、同時代の新作を聴いて久しぶりに感動したんです。でね、最近自分も作品のクオリティーに対するハードルが上がっていて、実は今回も、1回書き出したんだけど、納得がいかなくて、自腹でマスタリングを外のスタジオでやったの(笑)。MP3でアップするってフォーマットも確認してたから、マスタリングの後、通常はWAVで書き出してもらうんだけど、MP3でも書き出してもらった。

左:川上シュン

川上:形式に関する質問が細かいんですよ。「MP3、WAV、どっち?」じゃなくて……。

渋谷:「ビットレートいくつですか?」って聞いたよね(笑)。

川上:それは渋谷さんだけだったと思う。オンラインに乗せるってことをよくわかってるなって。

渋谷:でも、どの変換ソフトを使うかでも、音が変わっちゃうから。印象ってそういうところで決定される部分がすごく大きいんですよ。YouTubeで自分の音源を勝手にアップされるのはいいんだけど、「いい音質でアップしろ」って、怒ったことあるから(笑)。

人間っていう設定を、テクノロジーを通じてもう1回見直す時期が来てるんだと思う。(渋谷)

―では、実際の曲についてお伺いすると、渋谷さんの楽曲のキーワードが「バイオテクノロジー」。会社の根幹と言っていいテーマですね。

川上:やっぱり一番最初が重要なので、このテーマを渋谷さんにお願いするのが、プロジェクトのスタートとしてベストかなって。そもそも、渋谷さんの音楽からバイオテクノロジーを感じるんですよ。オートマティックにジェネレートしてる感じもするし、自分でピアノも弾くし、オーガニックさとテクノロジーが混ざってる。

渋谷:それは確かにそうかも。ただ、ピアノを使うからオーガニックとかではないし、今さらテクノロジーが前面に出てる音楽はそんなに面白くないんだよね。ただ、テクノロジーを使うときも、人間を想定したほうがいいと思っていて。例えば、RolandのTR-808っていう1980年代のドラムマシンがあるじゃないですか? 今でも使ってる人がたくさんいる名機だけど、Rolandのエンジニアはあれを作ってるときに「人間のドラマーを殺そう」と思って作っていたという話を聞いたことがあるのね。結果的には人間が出すリズムとはまったく違うんだけど(笑)、その人間を超えようという目標設定が30~40年使われる名機を生んだわけで。だから、人間っていう発想は、テクノロジーのハードルを高くするんですよ。

―なるほど、面白いですね。

渋谷:あとコンピューターで作ってると、基本的には全部グリッド上に音を置くから、整理整頓された音楽になってしまいがちなのね。それで僕がよくやるのは、ノイズをオートマティックにジェネレートさせて、書き出して、曲とは全く関係ない時間軸で動いてるそれを薄く入れておくわけ。そうすると情報密度がガラッと変わる。でも、複数の人間が即興演奏してるときも、全然関係ないフレーズが出てきて、それが上手くハマることもあれば、上手くいかないこともありますよね。普通に曲を演奏しているのだってズレているから面白いわけです。それを踏まえた上で、コンピューターで作曲するときも、その曲の時間軸とは関係ないものをどう入れておくかというのが醍醐味だと思っています。

―渋谷さん自身も、人間を想定してテクノロジーを使っていると。

渋谷:そう。最近よくやるのが、「ここは人間だったらこう揺れるよな」っていうのを想定して、コンピューター上でBPMの揺れをすごく細かく書き込むの。そうすると、完璧にデジタルで人工的な世界になるんだけど、変な感じでオーガニックな感覚が宿る。よくある実験音楽みたいにテンポがランダムに変わりまくるよりも、「人間だったらこうなるだろう」っていうのを、データのカーブで書くほうが大変なんだけど、結果的に面白くなる。人間っていう設定を、テクノロジーを通じてもう1回見直す時期が来てるんだと思う。

渋谷慶一郎

―リズムマシンを手打ちして人間の揺らぎを担保していた時代から、今度はその揺らぎをテクノロジーを使って再現する時代になってきたと。

渋谷:うん、僕はドラムマシンとかサンプラーを手打ち(実際に手でパッドを叩いて打ち込むスタイル)で叩くみたいなのは、一義的だからあんまり好きじゃないんです。デジタル処理によってオーガニックな感触を生み出すことのほうに興味があるんですよね。

ラーメン屋に行くって決まってて、スーツを着たりしないでしょ? 何かお題があったときは、それを特別意識しなくても、頭の片隅にあるぐらいが一番いい。(渋谷)

―楽曲自体はパリで作られたそうですね?

渋谷:そうです。シュンくん、1回パリまで来たよね?

川上:「どうですか?」って見に行ったら、もうほぼできてた(笑)。

―バイオテクノロジーというキーワードを表現するにあたって、何かポイントはありましたか?

渋谷:これはよく使う例えなんですけど、ラーメン屋に行くって決まってて、スーツを着たりしないでしょ? 逆に、相手がオシャレしてきてるのに、「俺はラーメン屋に行きたいんだ」って、意地を張る必要もないわけじゃない?(笑) だから、何かお題があったときは、それを特別意識しなくても、頭の片隅にあるぐらいが一番良くて、そのほうがテーマと楽曲がいい関係になると思うんです。

―つまり、今回も特別にバイオテクノロジーっていうのを意識していたわけではないと。

渋谷:さっきも言ったように、もともと僕の音楽にはその要素が入ってるし。今、パリのシャトレ座の一室を提供してもらっていて、そこが仕事場になってるんですけど、初めてその部屋に行ったとき、「ここで今日から音楽が作れるんだ、やった!」って思って、鞄をソファーに投げ捨ててピアノを弾き始めたら、すぐにメロディーが出てきて、それが今回の曲のもとになってます。

―環境の変化から生まれたものとも言えそうですね。

渋谷:外からの刺激や条件は、積極的に取り入れるほうなので、そうなんだと思います。今回の曲は今までとちょっと印象が違うって周りからも言われるし、自分でもそう思います。抜けがいいと言うか、せかせかしてない感じがする。こういうことを言うとポエティックな人みたいだけど、パリって空が広いのね(笑)。

川上:わかるわかる(笑)。

渋谷:見えてる景色がそうだからなのか、音もなんか抜けがいいわけ(笑)。そういうふうになってくるのかなって。

川上:渋谷さん自身がおおらかになってる感じしたもん(笑)。その感じは曲からも伝わってきて、東京とパリの空は色も広さも、温度も含めて全部違うから、それを感じて作ってる感じがして、このタイミングでオファーできて良かったなって思いました。

左から:川上シュン、渋谷慶一郎

渋谷:「できた!」と思った日があって、すごく興奮してなぜか「この曲は“天国と地獄”だ!」って思って、普段通ってるメトロの階段をすごい勢いで駆け下りて家に帰ったの。“天国と地獄”は(ジャック・)オッフェンバックの有名なオペレッタで、パリでの大衆性もあるんだけど、チャレンジングな仕掛けもしていて、その印象もあったのかな。それで、「“天国と地獄”って英語だと何だろう?」と思って調べたら、“Heaven and Hell”で、「ヘビメタみたいだな」って思って(笑)。

―AC/DCの曲名みたいですね(笑)。

渋谷:それでもう少し検索したら、『Heavenly Puss』っていうのが出てきて。これは『トム&ジェリー』の短編映画のタイトルで、トムの魂が夢の中で地獄に落ちて、ピアノの間に落ちて死ぬのね。それで夢から覚めて、「これは夢なのか? 現実なのか?」っていう話なんだけど、それが曲の展開とあまりにもぴったりだったから、そのまま曲名にしてみたんです。

「広告」って聞いた瞬間に心がつまらなくなるでしょ? でも、そこでイメージされるような観点じゃない作り方や設定があって、そういうプロジェクトがもっと増えれば、文化度が上がるんじゃないかって思うんですよね。(川上)

―川上さんもいろんな国に行かれていると思いますが、環境の変化がご自身の表現に与える影響について、どうお考えですか?

川上:僕は非常に旅が好きで、いろんな国で仕事をするのも好き。それは外国に行くと刺激を受けて、何かしらのレスポンスが自分の中に生まれるっていう循環があるからなんですよね。パリで言うと、昼間の時間がやたら長かったりして、そういう経験だけでも自分の作品に絶対影響があるし、逆に、海外に行けば行くほど、オリジンである日本の文化に対して、より深く知りたくなるっていうある種の反射もあったりするから、僕は移動することってすごく大事だと思ってます。なので、代官山にいつもいたあの渋谷慶一郎が、東京とパリ半々ぐらいの生活になって、それがどう音楽に影響するかはすごく楽しみだし、このプロジェクトがその1曲目になったっていうのは、すごく嬉しいです。

渋谷:僕は意識的に何かをすることはほとんどないですけど、自分の中にどうしても変わらない部分はあるから、変われる部分はなるべく変えたいと思っていて。じゃないと僕は自分に飽きるんだよね。自分がやってることっていうより、自分自身に飽きちゃう。だから、ものを作るのが好きなのかもしれないですね。よく言うけど、「音楽」よりも、「音楽を作ること」のほうが好きなんです。

川上:「呼吸をするように音楽を作ってる」って渋谷さんがインタビューで言ってて、僕の中ではちょっと意外だったんですよ。最初はもっと研究者みたいな考え方で、音楽と戦ってる人なのかなって思っていて、そういう人の中には、なかなか理想とする音が見つからなくて、音楽を作ることをしんどく感じている人もいると思うんですけど、逆に渋谷さんは音楽を作らないとノイローゼになるんだなって。

渋谷:そう。音楽が作れない環境だと、すごいストレスがたまる。

―「ライフサイエンス」というテーマに立ち返ると、渋谷さんは音楽を作ることによって、生きる実感を得ているということかもしれませんね。

渋谷:それはすごくあると思う。昨日コンサートをやって、すごく嬉しかったのが、「生きるに値する喜びがある気がした」って感想を何人かからもらったのね。それは僕も音楽を作ってるときに感じることで、「こういう新しいものができるんだったら、やっぱり人生は生きるに値するな」って思うんです。

―川上さんは、生活の中における音楽の力についてどうお考えでしょうか?

川上:僕はビジュアルアーティストでもあるので、普段は視覚的に何かを表現するほうなんですけど、いつも音楽に嫉妬してるんです。音楽ほど、人を瞬間的に感動させる表現はないと思います。視覚ってどうしても、見てもらわないと感動させることができないけど、音楽って飛び込んでくるんですよね。実は、今回のプロジェクトは最初、視覚表現でテーマを伝えるっていうアイデアもあったんですけど、オンラインのプロジェクトだからやっぱり飛び込んでくるもののほうがいいと思ったんです。

左から:川上シュン、渋谷慶一郎

―普段の生活の中でも、人を瞬間的に感動させることができる。そこに音楽の力を感じると。

川上:協和発酵キリンが伝えている「ライフサイエンス」っていう言葉には「健康的で美しい人生を生きるためのサポート」っていう考え方があって、それに基づいて日々研究されている。それって音楽も同じで、僕は音楽が大好きなので、人生に音楽がなかったらどれだけ寂しいだろうって思うんです。だから、僕は今回のプロジェクトでオーダーをした側ではあるけど、何より僕自身がその曲を聴きたいっていうのがあって(笑)。

―そこでの感動や驚きっていうのが根幹にあるんですね。

川上:ユーザー側から見ると、「広告」って聞いた瞬間に心がつまらなくなるでしょ? でも、そこでイメージされるような観点じゃないものの作り方や設定があって、そういう考え方のプロジェクトがもっと増えれば、文化度が上がるんじゃないかって思うんですよね。

渋谷:それはすごくよくわかる。僕はパリに住む前からある種、俯瞰的に自分のいるところを見る癖があって、僕が感じるヨーロッパのヒエラルキーは「アート>ファッション>広告」の順番で、日本は「広告>ファッション>アート」だと思ってるんです。だから、日本に関して言うと、僕は広告のクリエイターと一緒に作品を作ったり、広告にコミットすることに全く抵抗がなくて、むしろ日本ではそのほうが面白かったりもする。よく「日本が嫌だから海外に行った」って思われるんですけど(笑)、そうじゃなくて、面白いと思う部分が日本と外国だと違って、それぞれを楽しんでるだけなんですよね。

―そういう意味では、今回のプロジェクトが契機になって、日本でも今後こういった取り組みが増えてくるかもしれませんね。

川上:そうなっていくといいですね。『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』の話で言うと、9組のアーティストの作品も次々に上がってきているのですが、同じ会社のテーマを伝える企画なのにそれぞれ全く違って面白いですよ。楽しみにしていただけたらと思います。

リリース情報
『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』

参加アーティスト:
渋谷慶一郎
no.9
STUDIO APARTMENT
JEMAPUR
DJ KAWASAKI
blanc.
Open Reel Ensemble
i-dep
高木正勝
蓮沼執太+コトリンゴ

プロフィール
渋谷慶一郎(しぶや けいいちろう)

音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。2012年末に、初音ミク主演によるボーカロイドオペラ『THE END』を山口情報芸術センター(YCAM)で制作、発表。2013年5月には東京・渋谷のBunkamura・オーチャードホールで、11月にはパリ・シャトレ座にて『THE END』公演を開催。2014年4月、パリのパレ・ド・トーキョーで開催された現代美術家・杉本博司の個展に合わせて、杉本とのコラボレーションコンサート『ETRANSIENT』を公演。同年10月には、シャトレ座にて、ピアノとコンピューターによるソロコンサート『Perfect Privacy』を開催。2015年6月には、ボーカロイドオペラ『THE END』のオランダ・ホーランドフェスティバルでの公演が決定している。

川上シュン(かわかみ しゅん)

1977年、東京都生まれ。artless Inc.代表。ブランディングやデザイン・コンサルティングを中心に「アートとデザイン」を横断的に考え、グローバルに活動している。2010 年にはフィンランドの TV 局(ch4)の為に制作した映像作品が「カンヌ国際広告祭」で金賞を受賞。NY ADC、D&AD、The One Show、 London International Award 、NY TDC、Tokyo TDC、グッドデザイン賞、Tokyo Interactive Ad Award 等、国内外で多数の受賞歴を持つ。



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