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渋谷慶一郎×川上シュン アーティストと共生する新しい広告の形

渋谷慶一郎×川上シュン アーティストと共生する新しい広告の形

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望, 場所提供:INTERSECT BY LEXUS CAFE

「広告」って聞いた瞬間に心がつまらなくなるでしょ? でも、そこでイメージされるような観点じゃない作り方や設定があって、そういうプロジェクトがもっと増えれば、文化度が上がるんじゃないかって思うんですよね。(川上)

―川上さんもいろんな国に行かれていると思いますが、環境の変化がご自身の表現に与える影響について、どうお考えですか?

川上:僕は非常に旅が好きで、いろんな国で仕事をするのも好き。それは外国に行くと刺激を受けて、何かしらのレスポンスが自分の中に生まれるっていう循環があるからなんですよね。パリで言うと、昼間の時間がやたら長かったりして、そういう経験だけでも自分の作品に絶対影響があるし、逆に、海外に行けば行くほど、オリジンである日本の文化に対して、より深く知りたくなるっていうある種の反射もあったりするから、僕は移動することってすごく大事だと思ってます。なので、代官山にいつもいたあの渋谷慶一郎が、東京とパリ半々ぐらいの生活になって、それがどう音楽に影響するかはすごく楽しみだし、このプロジェクトがその1曲目になったっていうのは、すごく嬉しいです。

渋谷:僕は意識的に何かをすることはほとんどないですけど、自分の中にどうしても変わらない部分はあるから、変われる部分はなるべく変えたいと思っていて。じゃないと僕は自分に飽きるんだよね。自分がやってることっていうより、自分自身に飽きちゃう。だから、ものを作るのが好きなのかもしれないですね。よく言うけど、「音楽」よりも、「音楽を作ること」のほうが好きなんです。

川上:「呼吸をするように音楽を作ってる」って渋谷さんがインタビューで言ってて、僕の中ではちょっと意外だったんですよ。最初はもっと研究者みたいな考え方で、音楽と戦ってる人なのかなって思っていて、そういう人の中には、なかなか理想とする音が見つからなくて、音楽を作ることをしんどく感じている人もいると思うんですけど、逆に渋谷さんは音楽を作らないとノイローゼになるんだなって。

渋谷:そう。音楽が作れない環境だと、すごいストレスがたまる。

―「ライフサイエンス」というテーマに立ち返ると、渋谷さんは音楽を作ることによって、生きる実感を得ているということかもしれませんね。

渋谷:それはすごくあると思う。昨日コンサートをやって、すごく嬉しかったのが、「生きるに値する喜びがある気がした」って感想を何人かからもらったのね。それは僕も音楽を作ってるときに感じることで、「こういう新しいものができるんだったら、やっぱり人生は生きるに値するな」って思うんです。

―川上さんは、生活の中における音楽の力についてどうお考えでしょうか?

川上:僕はビジュアルアーティストでもあるので、普段は視覚的に何かを表現するほうなんですけど、いつも音楽に嫉妬してるんです。音楽ほど、人を瞬間的に感動させる表現はないと思います。視覚ってどうしても、見てもらわないと感動させることができないけど、音楽って飛び込んでくるんですよね。実は、今回のプロジェクトは最初、視覚表現でテーマを伝えるっていうアイデアもあったんですけど、オンラインのプロジェクトだからやっぱり飛び込んでくるもののほうがいいと思ったんです。

左から:川上シュン、渋谷慶一郎

―普段の生活の中でも、人を瞬間的に感動させることができる。そこに音楽の力を感じると。

川上:協和発酵キリンが伝えている「ライフサイエンス」っていう言葉には「健康的で美しい人生を生きるためのサポート」っていう考え方があって、それに基づいて日々研究されている。それって音楽も同じで、僕は音楽が大好きなので、人生に音楽がなかったらどれだけ寂しいだろうって思うんです。だから、僕は今回のプロジェクトでオーダーをした側ではあるけど、何より僕自身がその曲を聴きたいっていうのがあって(笑)。

―そこでの感動や驚きっていうのが根幹にあるんですね。

川上:ユーザー側から見ると、「広告」って聞いた瞬間に心がつまらなくなるでしょ? でも、そこでイメージされるような観点じゃないものの作り方や設定があって、そういう考え方のプロジェクトがもっと増えれば、文化度が上がるんじゃないかって思うんですよね。

渋谷:それはすごくよくわかる。僕はパリに住む前からある種、俯瞰的に自分のいるところを見る癖があって、僕が感じるヨーロッパのヒエラルキーは「アート>ファッション>広告」の順番で、日本は「広告>ファッション>アート」だと思ってるんです。だから、日本に関して言うと、僕は広告のクリエイターと一緒に作品を作ったり、広告にコミットすることに全く抵抗がなくて、むしろ日本ではそのほうが面白かったりもする。よく「日本が嫌だから海外に行った」って思われるんですけど(笑)、そうじゃなくて、面白いと思う部分が日本と外国だと違って、それぞれを楽しんでるだけなんですよね。

―そういう意味では、今回のプロジェクトが契機になって、日本でも今後こういった取り組みが増えてくるかもしれませんね。

川上:そうなっていくといいですね。『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』の話で言うと、9組のアーティストの作品も次々に上がってきているのですが、同じ会社のテーマを伝える企画なのにそれぞれ全く違って面白いですよ。楽しみにしていただけたらと思います。

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リリース情報

『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』

参加アーティスト:
渋谷慶一郎
no.9
STUDIO APARTMENT
JEMAPUR
DJ KAWASAKI
blanc.
Open Reel Ensemble
i-dep
高木正勝
蓮沼執太+コトリンゴ

プロフィール

渋谷慶一郎(しぶや けいいちろう)

音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。2012年末に、初音ミク主演によるボーカロイドオペラ『THE END』を山口情報芸術センター(YCAM)で制作、発表。2013年5月には東京・渋谷のBunkamura・オーチャードホールで、11月にはパリ・シャトレ座にて『THE END』公演を開催。2014年4月、パリのパレ・ド・トーキョーで開催された現代美術家・杉本博司の個展に合わせて、杉本とのコラボレーションコンサート『ETRANSIENT』を公演。同年10月には、シャトレ座にて、ピアノとコンピューターによるソロコンサート『Perfect Privacy』を開催。2015年6月には、ボーカロイドオペラ『THE END』のオランダ・ホーランドフェスティバルでの公演が決定している。

川上シュン(かわかみ しゅん)

1977年、東京都生まれ。artless Inc.代表。ブランディングやデザイン・コンサルティングを中心に「アートとデザイン」を横断的に考え、グローバルに活動している。2010 年にはフィンランドの TV 局(ch4)の為に制作した映像作品が「カンヌ国際広告祭」で金賞を受賞。NY ADC、D&AD、The One Show、 London International Award 、NY TDC、Tokyo TDC、グッドデザイン賞、Tokyo Interactive Ad Award 等、国内外で多数の受賞歴を持つ。

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