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「見えないものを見る」ためには 八谷和彦インタビュー

「見えないものを見る」ためには 八谷和彦インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:小林宏彰

アートを越えて広がる「見えないものを見る」行為

─個展会期中にはワークショップなど、観衆との交流の場もありますね。八谷さんにとって観衆やワークショップはどういう存在ですか。

八谷:そうした現場で思うのは、やはりお客さんひとりひとりの体験こそが、僕の作品の本質だなということ。わかりやすいことを言えば、装着する人の世代や国民性が、作品と接したときの行動に出たりしますからね。例えば外国の人は、『視聴覚交換マシン』を付けたままゴロゴロ床に転がったり。

─困りますね。そういう仕様じゃないのに(笑)。

八谷:でも、より作品を理想形に近づけるために、そうした行動が活かされることもあります。ゲームで言うと、テストプレイ。これはメディアアート特有の手法ですが、大切です。

─具体的にはどんなことでしょう?

八谷:『視聴覚交換マシン』で言えば、カメラの画角ひとつで視野や体感が違ってきます。それをお客さんに合わせて変えていくのはアーティストとしては不純なのかもしれないけれど、何せ僕、ゲーム世代ですから(苦笑)。ゲームバランスしだいで、同じ内容が名作にもクソゲーにもなり得る。演劇だってそうで、お客さんの反応を見つつ、演出家は今日はなぜウケたのか、ウケなかったのかを考える。展覧会というのもある種のリアルタイムメディアだと思うから、会場では演出家やゲームデザイナー的な気持ちで立ち会っています。作品が役者さんだとすれば、「君は絶対にこう演じなさい」ではなく、「明日はこうやってみようか?」という姿勢のもと、作品を変えていきます。

展示風景
展示風景

─作品とは別に、「見えないものを見る」ことに対する八谷さんの姿勢を感じたのが、原発事故を受けて立ち上げたガイガーカウンター講習会です(※『ガイガーカウンターミーティング』は八谷主催のもと6月11日に3331 Arts Chiyodaで開催された)。

八谷:放射線量を測定するガイガーカウンターを、もし間違った方法で用いてしまった場合、本当に放射線量の高い場所がわからなくなってしまいます。そこで、正しい計り方を勉強できたら、と立ち上げたのがこの緊急イベントです。Ustreamで中継し、その後も見られるようにしました。これもある意味、可視化ですね。

─そういえば原発事故発生後の比較的早い段階で、子どもたちに向けた「うんち・おならで例える原発解説」をTwitterから連投もしましたね。

八谷:あの時期、根拠のないものを含め、恐怖を呼ぶ情報だけが飛び交っていてはまずいだろうと思っていました。特にあの時期は、子どもたちが事故をどう解釈していいかわからなかったはずで。だから当時あまり言及されることのなかった最悪の事態も含めて、ひとつの解釈の仕方を提示したつもりでした。残念ながら、事態は当時の予想でいう最悪か、それより深刻ですが、基本的な考え方や、「現場の人に感謝しよう」というような思いは変わりません。あと、あのTweetが事故を軽視したものだと言う人がもしいるとしたら、そういう人は逆に事態をよくわかっているのだから、それでいいとも思います。大人はあれを読んで終わりじゃなく、ちゃんと勉強していくでしょうし。あの件は作家としてというより、父親としてやったことですね。

─今日は「見えないものを見る」についてお話を聞いてきましたが、それがいろんな局面で問われているのも、今という時代のように感じました。

八谷:人はわからないことに対峙したとき、瞬時に判断をせまられる場合は、それを説明してくれる人々が自分にとって「信頼できるか」どうかで判断するしかないんだと思います。そんなとき、それぞれが信用、納得というものにどう向き合うか。主義主張とか知識量とか、そういうものを超えて伝え合う方法がもしあるとしたら、それは科学者だけでなく、アーティストやデザイナーといったコミュニケーションに関わる人にも担えるものがあると感じます。平常時と非常時で違いもあるでしょうが、今はそういうことについて考えるのも、自分がやれることのひとつかなと思っています。

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イベント情報

『魔法かもしれない。―八谷和彦の見せる世界のひろげかた―』

2011年6月2日(木)~9月4日(日)
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
時間:9:30~17:00(入場16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日) ※8月15日(月)は臨時開館
料金:大人500円 小中学生250円(常設展示も観覧可)

ホリデー•ワークショップ
『視聴覚交換マシンを体験しよう』

会期中の水・土・日曜日、祝日に開催
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム3F 未来映像ゾーン
時間:13:00~16:00
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)
定員:20組40名(先着順)

夏休み特別ワークショップ
『自分だけの「フェアリーファインダー」を作ろう』

2011年8月14日(日)13:00~16:00
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム3F ワークショップルーム
定員:10名(小学生~中学生対象・小学校低学年は保護者同伴)
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)

アーティストトーク

2011年8月28日(日)14:00~16:00
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ1F HDスタジオ
出演:八谷和彦
定員:100名
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)

プロフィール

八谷和彦

1966年佐賀県出身。発明の日(4月18日)生まれのメディアアーティスト。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業。コンサルティング会社勤務時代から個人TV放送局『SMTV』などのユニークな活動を行う。その後独立し作家活動を本格化させる。『視聴覚交換マシン』をはじめとするコミュニケーションツール・シリーズ、またパーソナルフライトシステム『オープンスカイ』などに見られる、映画・アニメに登場する夢の乗物を具現化したようなものなど、機能を持った発明品的作品が多い。メールソフト『ポストペット』の開発者でもあり、関連ソフトウェア開発とディレクションを行なうペットワークス社取締役も務める。

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