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「起きてほしくない未来」を描く映画 岩井俊二×鈴木敏夫対談

「起きてほしくない未来」を描く映画 岩井俊二×鈴木敏夫対談

テキスト・構成・撮影
CINRA編集部

自分たちの見てきた景色が一掃されることなんてなかった(岩井)

鈴木:メッセージ性というところでは、『空飛ぶゆうれい船』は久しぶりに観てビックリした作品です。前に観た時は少年の活劇ものとしか捉えておらず、設定の方をあまり聞いていなかったんですね。でも今回改めて観たときに、セリフの中でとんでもないことを言っていることに気づかされました。

岩井:僕も思っていた以上にメッセージ性が強くて驚かされました。子どもが聞いても分からない内容ですし、現在のいろいろな物事をさりげなく言い当てていますよね。「踊らされる消費者」という構図には、あの時代(映画は1969年公開)ならではのメッセージが強く込められていたのかもしれませんね。

鈴木敏夫と岩井俊二

鈴木:池田宏監督とは親しいんですが、今まで『空飛ぶゆうれい船』について語り合うことがなかったので、今度会ったらきちんと話そうと思います。震災後の視点で見ると、面白い作品ってたくさんありますね。

岩井:『日本沈没』もそうで、3.11以降に観ると後半部分には「日本はこれからどうなるのか」というテーマが切実に描かれていると思ったし、思想的にも哲学的にも考えさせられる内容ですよね。いわゆるパニック映画とはちょっと違うテイストで。しかも「御用学者」なんて言葉も登場しているし、真実をぼかして報道するメディアに対する批判もある。

驚くのは、映画と同じ状況になったとき、現実は映画をそのままなぞっているかのように見えることです。現実に起こる前は、映画で描かれるようなことにはならないと思っているけれど、そうではない。僕らの世代は戦争もなかったし、映画で描かれてきたような、自分たちが暮らしていた景色が一掃されるようなことなどなかったわけです。しかし震災によって、部分的ではあるけれど日本で実際にそれが起きました。放射能汚染が、よりによって僕たちの国で起きたわけです。今回放送されるラインナップは、震災前に観るとピンとこなかった作品もありますよね。『生きものの記録』なんて、出てくるセリフの単語のひとつひとつが、震災後に耳にする言葉だったりしますし。

『日本沈没』スチール ©東宝
『日本沈没』スチール ©東宝

鈴木:黒澤監督は、関東大震災を目の当たりにしているそうなんですね。たくさんの瓦礫と人の死が自分の記憶の底に残った、と著書に書いていて、そういう意味でも戦争や核の問題に対して敏感だったんでしょう。昔観たときは、『生きものの記録』はむしろ「喜劇映画かよ」っていう印象でしたが、震災を経ることによって、黒澤監督が作品に込めた考えが、やっと伝わってきたような気がしています。

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番組情報

日本映画専門チャンネル×岩井俊二映画祭
『映画は世界に警鐘を鳴らし続ける』

2012年1月5日(木)から2月23日(木)毎週木曜日23:00から放送

1月放送作品
『生きものの記録』
『日本沈没』
『風が吹くとき』
『ヒバクシャ HIBAKUSHA 世界の終わりに』
『特別番組「岩井俊二×鈴木敏夫 特別対談(仮)」』
2月放送作品
『夢』
『空飛ぶゆうれい船』
『六ヶ所村ラプソディー』
『原子力戦争 Lost Love』
『特別番組「岩井俊二×坂本龍一 特別対談(仮)」』

プロフィール

岩井俊二

1963年生まれ。宮城県仙台市出身。1988年より、音楽ビデオとCATVの仕事からスタート。1993年、テレビドラマ『ifもしも~打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞を映画監督デビュー前に受賞。その後映画へ進出し、1995年に『Love Letter』、1996年には長篇第2作目として、架空都市「円都」(イェンタウン)を舞台にしたサクセスストーリー『スワロウテイル』を発表。2001年には、2000年4月から7月にかけてインターネット上で、BBS(電子掲示板)のスタイルを使い、一般の人たちの対話の中から物語を展開していくインターネット小説『リリイ・シュシュのすべて』を自ら映画化。2003年ショートフィルム『花とアリス』をインターネット上で発表し翌年には長編映画『花とアリス』を劇場公開。2011年10月には東日本大震災を題材に、著名人のインタビューで構成したドキュメンタリー『friends after 3.11』を発表した。

鈴木敏夫

1948年生まれ。愛知県名古屋市出身。1972年に徳間書店に入社し、記者として「週刊アサヒ芸能」で執筆。児童少年編集部配属後に画期的なアニメ専門誌『アニメージュ』を創刊する。このとき宮崎駿と出会い、後に宮崎、高畑勲とアニメーション制作会社スタジオジブリを設立する。映画『おもひでぽろぽろ』『もののけ姫』など数々のヒット作をプロデュースし、映画『千と千尋の神隠し』は第75回アカデミー賞最優秀長編アニメ映画賞を受賞。2000年には『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる庵野秀明監督、岩井主演の実写映画『式日』を製作した。これまで鈴木が発表した文章や対談をまとめたドキュメントエッセイ『ジブリの哲学 変わるものと変わらないもの』が発売中。

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