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浦沢直樹×石川俊樹(フラットライナーズ)対談

浦沢直樹×石川俊樹(フラットライナーズ)対談

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中慎一郎

『20世紀少年』『MONSTER』をはじめとした大ヒット作を多数持つ、日本を代表する漫画家・浦沢直樹。そして、かつて浦沢のアシスタントを務めていた石川俊樹と佐藤誠司のバンド、フラットライナーズ。『20世紀少年』で示され、自身も2008年にCDデビューを果たしているように、浦沢は超がつくほどの音楽通であり、音楽人。石川と佐藤がアシスタントをしていた時代は、多忙の合間を縫って、音楽と漫画について常に議論を重ねていたという。

それから約20年の月日が経ち、遂に(本当に遂に!)フラットライナーズのデビュー作『不運な人』が発売され、師弟対談が実現することになったわけである。この2人、年齢こそさほど離れていないものの、その師弟関係は非常に明確。話を始めると、おそらく20年前から何ら変わっていないであろうやり取りが実に軽妙で、あっという間に時間が過ぎてしまった。浦沢曰く「20年間全く上手くなっていない」という石川のベースプレイを発端とする衝動と成熟の問題は、音楽と漫画はもちろん、あらゆる表現に通じるテーマであることは間違いないだろう。

「これ以上は上手くなるな」って、見事に20年間守り続けたよね。(浦沢)

―まずは、浦沢先生にフラットライナーズのCDに対する感想をお伺いしたいのですが。

浦沢:さかのぼれば20年ぐらい前かな? (石川が)バンドを始めて最初にスタジオに入ったときの音を聴いて、「ひっでえな」と思って。

石川:あれはひどかったですね(笑)。

浦沢:そのとき僕が言ったことは、「これ以上は上手くなるな」ってことで、見事に20年間守り続けたよね。

石川:ちょっとは上手くなったと思うんですけど…

浦沢直樹
浦沢直樹

浦沢:いやいやいやいや、20年間やってこんなに進歩しない人はいないよ! 普通人間って、何をするにも20年間も続ければこなれてくるんですよ。でも石川君は1個もこなれてないからね。だって、8ビートしか刻めないんだもん。

石川:まあ、ルートです…

浦沢:ルートとか言ってるけど、果たして「ルート」が何を意味しているのかちゃんと理解してるか怪しい(笑)。20年間やってもまだど素人っていうのは、やろうと思ってできることじゃないんです。だからそれは賞賛に値しますよ。きっと進歩とか進化を拒否してるんです。

石川:そんな意思は持ってないですよ!

浦沢:分かってるって(笑)。でも、あのPVもやっぱすごいよね。石川君が池の前にたたずんでる様子もさ、本人は最高にかっこつけてるんだけど、パンクの白けた感じとか、斜に構えた感じがまるでない、いつも通りの石川君で。「ホントにこれでいいの?」って思ってしまう(笑)。あれも絶対にできないですよ。普通、何かしちゃうもん。

―でも、「進歩とか進化を拒否する」ってかっこよく言えばパンク的ですよね(笑)。

浦沢:いやいや。この人はいきなりパンクロックから音楽が始まってる人なんだけど、よくそれでもめたんですよ。要するに、彼が何に対してパンクをやっているのか分からないわけ。元々THE BEATLESもTHE ROLLING STONESも知らないパンク野郎だから、本来的にはパンクの意味が分かってないの。

石川俊樹
石川俊樹

石川:僕THE ROLLING STONESの“サティスファクション”は、DEVOのカバーで最初に知ったんです(笑)。

浦沢:この年齢でそのずれ方ってちょっとおかしいんです。この年だと小中学校のときにある程度オールドウェイブを刷り込まれるはずなんだけど、それが一切入ってない。土台がスポンと抜け落ちてて、いきなり78年とか79年から歴史が始まってるわけ。50年代のエルヴィス・プレスリーから始まって、THE BEATLESになって、70年代に培ったロックのベースが一切入ってないんです。創世記がおかしいんですよ。

石川:あんまり深く考えてなかったんですけど…そのとき流行ったものを聴いてたんです。まずパンクを聴き出して、今はちゃんとその元をたどって聴くようになったんですけど。

浦沢:石川君があんまりパンクパンク言うもんだから、THE CLASHなんてDJっぽくて実はパンクじゃないのとかね。

石川:僕の主張は「こうやってるじゃないですか?」(ベースを叩き壊す『ロンドン・コーリング』のジャケを真似する)って(笑)。

浦沢:僕は音楽のパンクはニューヨークパンクだと思っているんですよ。ロンドンパンクはファッションだからって。だから、石川君は「丘パンク」って言ってましたね(笑)。

―(笑)。

浦沢:でもね、僕が今まで言ったことは全部ほめ言葉なんですよ。日本において、それが一番リアルなんだから。パンクだなんだ言ったって、日本においては何のリアリズムもないわけ。それよりも、「パンクってかっこいいよね」だけでやってる方がリアルなのよ、中身なんかないんだもん。それで、(石川が)ナチュラルボーンで下手なのが非常に貴重だと思ったから、「絶対上手くなるなよ」って言ったの。そうすれば、今言ったようなパンクに直結する可能性があるわけだから。そうしたら…見事に上手くなんなかったからね(笑)。

2/4ページ:鼻歌でもいいんですよ。その中に、どれくらいの音宇宙があるかの方が大事でしょ?(浦沢)

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リリース情報

フラットライナーズ『不運な人』
フラットライナーズ
『不運な人』

2012年1月18日発売
価格:2,100円(税込)
uruoi-001

1. トゥルーラブストーリー
2. ヘルシーガール
3. 不運な人
4. パインボックス
5. セダン
6. 犬の一生
7. 狭き門
8. 遠くへ行きたい
9. ビューティフルガール

イベント情報

viBirth × CINRA presents
『exPoP!!!!! volume60』

2012年3月29日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷O-nest
出演:
フラットライナーズ
and more
料金:無料(2ドリンク別)
※ご予約の無い方は入場できない場合があります

リリース情報

フクシマレコーズ2ndアルバム『声に出して。』
フクシマレコーズ2ndアルバム
『声に出して。』

2012年1月12日発売
価格:3,045円(税込)
FKSR-1002

1. 声に出して / Happy Island
2. サンシャイン / 髭
3. さよならの夏〜コクリコ坂から〜 / 玲里
4. 妖精写真 /A.P.J.
5. 冒険者たち / 浦沢直樹
6. 春夏秋冬/ 砂川恵理歌
7. Homeward Bound / 臼井健
8. Bronson / Dodekachordon
9. Back To My Roots / 菅波ひろみ feat.武田和大
10. 雪の樹 / Harmonigon
11. くっつかない運命 / 藤原美穂
12. Time After Time / Stay G

名古屋造形大学卒展記念
『浦沢直樹トーク&ライブ』

2012年2月15日(水)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知県 芸術劇場 大ホール(愛知芸術文化センター1階)
料金:無料(要申込み、全自由席)

プロフィール

浦沢直樹

1960年生まれ。日本を代表する漫画家であり、代表作に『YAWARA!』(脚本:工藤かずや)『パイナップルARMY』『MASTERキートン』(脚本:勝鹿北星 / 長崎尚志)『MONSTER』『20世紀少年』などがある。無類の音楽好きとしても有名で、ボブ・ディランの大ファンである。2008年11月にファーストアルバム『半世紀の男』をリリースしている。

フラットライナーズ

漫画家、浦沢直樹氏のアシスタントだった石川、佐藤が1990年頃バンドを結成。幾度かのメンバー・チェンジを経て2003年頃に現状のメンバー構成に落ち着く。なおドラムの磯は石川の妻であり自身のバンド「Sweet Sunshine」ではピアノ&ボーカルを務めるが夫の依頼で初心者ながらドラムで加入、ギターの井上はtoddleの小林愛氏のバンド「swarms arm」でも活躍していた。師匠である浦沢直樹氏とは、2009年の自主企画、2010年の「Sweet Sunshine」企画のライブで2度共演を果たしている。2012年1月18日に、ファーストアルバム『不運な人』をリリース。

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