特集 PR

行間に気付けなきゃ歌謡曲は歌えない 大西ユカリインタビュー

行間に気付けなきゃ歌謡曲は歌えない 大西ユカリインタビュー

インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
撮影:前田伊織
2012/03/13
  • 0
  • 25

大阪・新世界をホームグラウンドにR&Bや歌謡曲を歌い続け、その歌ひとつで著名人からおっちゃん、おばはんまでを虜にしてきた大西ユカリ。「平成のゴッドねえちゃん」(byクレイジーケンバンド横山剣)の異名を持つ彼女が、韓国音楽(しかも、いわゆるK-POPではなく!)と真っ向勝負! 既に韓国でも先行発売されたニューアルバム『直撃!韓流婦人拳』は、昔ながらの韓国の大衆音楽を取り込んだ濃ゆ〜い楽曲から、これぞ日本歌謡とでも言うべき歌心あふれる楽曲まで、大西ユカリが持てる経験とエネルギーを注ぎ込んだ野心的な作品だ。

言語だけでなく収録内容も分けられた日本盤・韓国盤について、韓国レコーディングから見えてきた日韓の音楽の違いについて、そして、活動25年を超えた今もなお成長を欲する歌への姿勢について、たっぷりと語ってもらった。

「やりたいんや!」っていう情熱。ちょっと前の日本人みたいやなって。日本人はもう1回ここへ戻らなアカンと思った。

―改めて今回のアルバムをリリースすることになった経緯をお聞きせいただきたいのですが。

大西:前のアルバム(2010年5月発売『やたら綺麗な満月』)の制作で煮詰まったときに、たまたま『朱蒙(チュモン)』という韓国ドラマを見とったんですよ。それで、ちょっと落ち着いてから、「やっぱ韓国ドラマええなぁ」と思い始めたんですけど、よう考えたら私は1stアルバムが韓国でリイシューされてて。

―2001年発売の『大西ユカリと新世界』ですよね。

大西:そうです。2007年に韓国でもライセンス発売されて。それで、(所属レコード会社の)P-VINEに「まだそのレーベルあるやろか?」って聞いてみたら「ありますよ」って言うんで、「じゃあ、行ってみようか?」って韓国に行ったら、すぐ「やろう!」って話になって…それが去年の6月くらいかな。もう8月には韓国でライブやってましたからね(笑)。あれよあれよと言う間に。

―韓国自体はいつ頃から興味を持たれていたんですか?

大西:15年前とかになるのかなぁ。クレイジーケンバンドの横山剣さんが、ポンチャックっていう韓国の古い大衆音楽をカセットテープで作らはったりしてて。自分もそんなんすごい興味ありましたから、韓国行ってポンチャックを探したりしたんですよ。でも、「そんなもんいまは誰も聴かん!」みたいに言われて。高速のサービスエリアに行ったら売ってたんやけどね(笑)。

韓国滞在時の大西ユカリ

―日本の演歌みたいですね(笑)。アルバムでは韓国の歌謡曲やロックのカバーもされてますけど、歌ってみていかがでした?

大西:みんな喉から血ィ出しとんなって感じがしましたね。当時の韓国の歌手の映像とか見てたら、みんな必死で歌うてはるんですよ。でも、日本の昔の歌手が、プロデューサーの言うこと聞いて歌わされてるみたいな世界観とも似てると思ったんです。やっぱり曲を作った人が1番強いんですけど、それをちゃんと歌わなアカンから、歌手も必死で。そういうことを感じながら自分も表現をしないといけないと思いましたね。

―音楽性的な部分では、いかがでした?

大西:歌ってて思いましたけど、曲の構成も独特。私の感覚だったら次はここ行きたいのに、そっち行くの!? っていう作り方してある。ここで叫ぶの!? っていうところで叫んでたり(笑)。たぶん70年代とかに独自で開発されたんちゃうかな。

―確かに昔の韓国ロックって、変なオリジナリティがありますよね。間奏やアウトロが異常に長かったり。

大西:ほんっとにおもしろいですね。特に今回カバーした“コジンマリヤ”はシン・ジュンヒョン先生(韓国ロックの重鎮)の曲ですけど、オリジナルは23分あるから。

―23分(笑)。今回のアルバムには韓国のプレイヤーも参加していますが、そちらのほうはいかがでした?

大西:最初、録音は日本のアロージャズオーケストラが全部やる予定だったんやけど、「韓国のバンドと昔の韓国の歌謡曲もやってみないか?」という話をいただいて。長谷川陽平君(「チャン・ギハと顔たち」などもプロデュースする韓国在住の日本人ギタリスト)たちのバンドと、Funkafric & BoostDahってバンドに、それぞれ3曲ずつ演奏してもらったんです。

―日本のバンドとの違いは感じました?

大西ユカリ
大西ユカリ

大西:とにかくすごい努力するね。それと「やりたいんや!」っていう情熱。ちょっと前の日本人みたいやなって。日本人はもう1回ここへ戻らなアカンと思った。「なんでもやります!」みたいな子たちが、バッてスタジオに来るんですよ。例えば今日、「明日の夜10時にレコーディングな」って言うてても、10時に来たらもう終わっとる。それで何時に来たか聞いたら、8時に来たって言うんですよ。「昨日10時って言うたやん!」「いや、早くやりたかったから」って。


―待てなかったんだ(笑)。

大西:待てないし、待たない(笑)。やっぱり演奏の熱さが音にもシンクロしてて、先に日本で録ったサウンドは、音を足さないと負けてまうくらいすごかった。韓国のバンドを見て、もう1回ミックスやり直したもんね。韓国の人たちって、気に入らんかったらみんなやり直すんです。だから自分もやり直したくなっちゃって。結局日本語の歌も日本で8割入れてたのに、もう1回韓国に行って歌入れしましたから。

2/3ページ:横山さん(クレイジーケンバンド)に「これ韓国語でやるべきやと思うんやけど、あたしやっていいかな?」って言うたら、「やってやって!」って(笑)。

Page 1
次へ

リリース情報

大西ユカリ『直撃!韓流婦人拳』国内盤
大西ユカリ
『直撃!韓流婦人拳』国内盤

2012年3月7日発売
価格:2,800円(税込)
PCD-18673

1. 韓流婦人
2. 嘘をつく貴方(コジンマリヤ)
3. 夜汽車(パムチャ)
4. 済州エアポート
5. まぼろしのブルース
6. 想い(センガッケ)
7. 雨の日のあやまち
8. 悲しい恋のお話
9. 恋の十字路
10. 叱らないで
11. ウエブロ(なぜ呼ぶの)
12. なんでこんなに(モラヨモラ)
13. 身も心も
14. ハンリュウプイン(韓流婦人〜ハングル・ヴァージョン)

大西ユカリ『直撃!韓流婦人拳』韓国盤
大西ユカリ
『直撃!韓流婦人拳』韓国盤

2012年2月2日発売
価格:2,625円(税込)
PCD-17519

1. 韓流(ハンリュウ)
2. コジンマリア(ウソつきな貴方)
3. チャンス(チャンス到来)
4. キイハント
5. けむり
6. センガッケ(想い)
7. ピオヌン・ナレ・チャルモッ(雨の日のあやまち)
8. まぼろしのブルース
9. パムッチャ(夜汽車)
10. サランエ・マッ(恋の味)
11. チョビ・チョロム(ツバメみたい)
12. スルプン・サラン・イヤギ(悲しい恋のお話)
13. カンダゴ・ハジマオ(離れて行かないで)
14. コムン・オートバイ(黒いオートバイ)
15. スマートゥポル(恋のスマートボール)
16. モラヨモラ(何がなんだかわからない)
17. セサイ・ナル・オラハハネ(世界が私を呼んでいる)
18. モンド・マウンド(身も心も)

プロフィール

大西ユカリ

1986年より音楽活動を開始。2000年に「大西ユカリと新世界」を結成。翌年にデビューアルバムを発売し、同時に昭和歌謡ブーム火付け役として注目を浴びる。2009年に「大西ユカリと新世界」の休止を発表し、ソロ活動開始。2010年に宇崎竜童プロデュースのアルバム『やたら綺麗な満月』発売。2012年、『直撃!韓流婦人拳』韓国盤と日本盤で各国で2タイトル発売。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

シャムキャッツ“Four O'clock Flower”

ただシャムキャッツの四人がフラットに存在して、音楽を鳴らしている。過剰な演出を排し、平熱の映像で、淡々とバンドの姿を切り取ったPVにとにかく痺れる。撮影は写真家の伊丹豪。友情や愛情のような「時が経っても色褪せない想い」を歌ったこの曲に、この映像というのはなんともニクい。(山元)