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奈良美智インタビュー「君や 僕に ちょっと似ている」

奈良美智インタビュー「君や 僕に ちょっと似ている」

インタビュー・テキスト
坂口千秋
撮影:西田香織
2012/08/01
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ツンとしたちょっと猫目の少女や物憂げに目を伏せる少女。奈良美智の描く子どもたちは、みんなちょっと誰かに似ている。友達だったり家族だったり、あるいは子供時代の自分だったり。見る人にパーソナルに語りかける不思議な普遍性を持つ作品は、奈良自身の自画像だ。2001年の大規模な個展から11年後、再び横浜美術館で始まった個展『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』は、ブロンズ彫刻と絵画を中心とした新作展で、これまで知られるカラフルな奈良のイメージを払拭するものだ。この11年の間に「インディーズバンドが突然メジャーになったように」急激なナラ・ブームが沸き起こり、村上隆と並んで世界のアートシーンを賑わせる存在となった一方で、自分だけのパーソナルな世界を見失っていた時期もあったという。震災を経て、あらためて作ることの原点に戻ってきた奈良が、今回の展覧会に至るまでと、その心境の変化について語ってくれた。ナラ・イズ・バック!

作ること自体に価値を見出すような、売れなくてもやるスピリット

―会場に入って、まず最初のブロンズ像の部屋が薄暗くて、まるで近代美術館のような重厚な雰囲気に驚きました。どうしてブロンズだったんですか? これまでの奈良さんの作品イメージとはちょっと異なりますよね。

奈良:僕は作品を作るとき、いつも本能的であまり考えてなくて、後から「そうだったのか」とわかってくることが多いのだけど、今回はまさにそういう重厚で物質的なものを作りたかったということなんです。今思うとそれは、僕の中で「近代」への精神的な回帰があったからだと思っています。

『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』会場風景

―奈良さんのいう近代というのは、たとえば明治時代くらいの頃のことですか?

奈良:いえ、僕のいう近代とは特定の時代の話じゃなくて、僕が小さかった頃にまだ日本にも残っていたある種の空気感や、人々が持っていた、なにかが確立される以前のスピリットのことです。アメリカでいえば、アートがマーケットという資本主義に取り込まれてしまう以前の20世紀前半、ジャクソン・ポロックのような画家たちがまだ学生で、作品にスピリットの力が溢れていた時代です。作ること自体に価値を見出すような、売れなくてもやるっていう、そういう価値観が残っていた時代のことですね。

奈良美智
奈良美智

―奈良さんといえば、それこそ近代までのアートの世界では誰もやらなかったようなタッチで女の子を画面いっぱいに描くという作風で、新しい世代のアーティストとして評価されたり、また一方では物議をかもしてきたわけですよね。

奈良:自分の中には、同じ絵でも、実はアカデミックな作風とポップな作風というものがあって、前回横浜美術館で展覧会をさせて頂いた2001年頃までは、それらが自分の中で共存できていたんです。それが2001年以降、メディアやマーケットに取り上げられることが多くなって、作風の表層のイメージだけがすごく浸透してしまっていたんですね。また自分自身も無意識にそういった流れに影響を受けてしまっていたことに後から気がつきました。

『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』会場風景

―そんな中で、今回の11年ぶりの大きな展覧会を行うことになって、はじめはどういったことを考えていたのですか?

奈良:最初に話が来た時も、いい絵が描ける状況に思えなかったから断ったんです。でもあえてポップなイメージの方を、さらにもっと追求していけばなんとかできるかもしれないと思って、「Let's Rock Again!」というタイトルの展覧会を考えていました。だけど、そこに震災が起きて、そんな馬鹿みたいなことを考えていた自分をすごく反省しました。そこからまったく絵が描けなくなってしまって、結果的に、震災以降から今に至るまでの、約1年間の反省と苦悩の中で制作してきた作品、また僕自身の流れのようなものが見える展覧会になっています。

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イベント情報

『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』

2012年7月14日(土)〜9月23日(日)
会場:神奈川県 横浜美術館
時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:木曜
料金:一般1,100円 大学・高校生700円 中学生400円 ※小学生以下無料

プロフィール

奈良美智

1959年青森県生まれ。愛知県立芸術大学修士課程修了。1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍。ケルン在住を経て2000年帰国。2001年国内で初めての大規模な個展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館で開催。独特のひねた表情の子どもを描く絵画やドローイングが国境や文化の枠組みを越えて絶賛される。2000年中頃、大阪のクリエイター集団grafとの共同プロジェクト「Yoshitomo Nara+graf: A to Z」を展開。音楽を愛し、山々を望む栃木のアトリエで制作する。

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