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奈良美智インタビュー「君や 僕に ちょっと似ている」

奈良美智インタビュー「君や 僕に ちょっと似ている」

インタビュー・テキスト
坂口千秋
撮影:西田香織

僕の中にいた僕自身のファンもずっと置いてきぼりだった。まだ追いついてないけど、追いつきたい。

―奈良さんの絵って、作品の実物を見ないまま、メディアを通して見ただけで、可愛いとか、漫画みたいとか、作品をわかったような気になってしまう人が多いように感じます。でも、一見大きく子供の絵が描いてあるように見えても、よくよく見ると、色の重なり方や表現力、技術力が、非常に高いんですよね。そしてその表現力によって、奈良さんのもの凄くパーソナルな感性のようなものが、とても繊細に作品に込められています。

奈良:そうですね。

―もの凄くパーソナルな表現でありながら、これだけ多くの人の心を感動させられるということは、そこに何らかの普遍性があるように感じるんですが。

奈良:そうだといいなと思います。今回の展覧会のタイトル『君や 僕に ちょっと似ている』の主語は作品なんです。作品が僕と君の間にある。今僕がいっぱい語ってるけど、制作についてとかパーソナルなことを語ることは実は重要じゃなくて、僕がいなくても作品が語るようでなくちゃいけない。結局僕は、作家が作品から離れていけばいくほど、作品がみんなに近づいていくタイプの作家なんだと思う。一番離れるのは僕が死んじゃうことなんですね。ここ1週間くらいインタビューを受けているうちに、だんだんわかってきたことなんですけど。

『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』会場風景

―奈良さんにとってオーディエンスってどういう存在ですか?

奈良:よくわからないけど、誰にでも見てもらいたいわけじゃない。作品を見てもらう前提として、僕はこういう音楽や本が好きだ、っていうことを色々なところにばらまいておく。そういうものを理解する人なら僕の作品に入っていけるんじゃないかな。それはインディーズのバンドとファンの間にあるパーソナルな関係と同じで、そのファンというのが、実は自分の中にもいる。でも、バンドがメジャーになって、いろんな人と関わるようになっていった時、インディーズ時代からのファンは自分たちから離れていったって思うよね。ドローイングのイメージばかりが進化していくうちに、僕の中にいた僕自身のファンもずっと置いてきぼりだった。まだ追いついてないけど、追いつきたいと思っています。

ナラ・イズ・バック!

―これまでの奈良さんの全作品をまとめたカタログレゾネの中で、村上隆さんが「僕と奈良さんは異母兄弟」というコメントをしていました。一見まったく対照的な2人に見えますが、奈良さんにとって村上さんはどういう存在なんですか?

奈良:村上さんは本当に「真剣」っていう言葉が一番合う人ですね。僕と村上さんって、2人で写ってる写真をみるとすごく仲良さそうなの(笑)。こんな仲良かったっけ? ってね。僕たちはずっとパラレルな関係だと思う。近づいても一緒になることはないし、考えていることもお互い影響されつつも違う。村上さんを見て、僕は同じことをしてはいけないと思うし、だから僕はファクトリー形式みたいのもやらない。村上さんは美術教育の現場を否定する時があるけど、僕は学生たちと過ごしてみて、まだまだやれることはあると思った。僕は見える範囲の世界のことをやろうとする性質で、村上さんは見えない範囲の世界とも戦い、外に出たら敵がいる。そこが違いですね。

奈良美智

―ブロンズの部屋の後に、奈良さんのスタジオ風景を再現したインスタレーション作品がありましたね。去年あの作品を水戸芸術館で見たときに、奈良さんのパーソナルな視点がすごく伝わってきて、奈良美智が帰ってきた! と思ったんです。

奈良:あのインスタレーション作品は震災のあと、ブロンズよりも前にできた作品です。去年の夏、水戸芸術館のグループ展に誘われたのに何も作れなくて悩んでいた時、家の郵便受けの横に積んであった中身を抜いた封筒の山とその上に置いたおもちゃの家が目に入った。それを見ていたら、なんだか可笑しくなってきて、こんななんでもないものでも力をくれるんだなってすごく救われたんですね。なんだ、自分の家で自分が飾ったものを、そのまま持っていけばいいじゃないかって気がついたんです。

『2011年7月の僕のスタジオから/水戸での展示を経由して2012年7月の横浜へ』(部分) 2006-2012
『2011年7月の僕のスタジオから/水戸での展示を経由して2012年7月の横浜へ』(部分) 2006-2012

―以前grafとコラボレーションしていた頃にも、展覧会内にたくさん小屋を立てて、小屋の中に奈良さんのスタジオ風景を再現するという、同じようなインスタレーション作品を作っておられましたが、繋がる部分はありましたか?

奈良:過去に小屋の中にスタジオ風景を作っていた時って、最初は制作現場の痕跡を持ってきていたはずだったのに、だんだんわざとディスプレイしていって、それがダメになっていく兆候だと気づきながらも考えないようにしていた。でも今回は自分にとって自然なものだったんですね。それと、今までは小屋という閉じた空間だったものが、今回の作品では開かれているんだなって昨日気づいたんです。

―今回は壁がないですよね。

奈良:小屋ってとてもパーソナルなものだけど、今回はそれが物理的にパーソナルじゃなくなっている。でもそのパーソナルじゃない状態がすごくパーソナルになっているってところが面白いなって思いました。

『2011年7月の僕のスタジオから/水戸での展示を経由して2012年7月の横浜へ』(部分) 2006-2012
『2011年7月の僕のスタジオから/水戸での展示を経由して2012年7月の横浜へ』(部分) 2006-2012

―インスタレーションの中で、お客さんがひとつずつじっくり作品を見て、それぞれのパーソナルとつながっている共有感が、デモで自然に使われていった奈良さんの『No Nukes』の絵の広がり方と共通するものを感じました。

奈良:そうかもしれないね。でも実は、僕は人がいるときに自分の作品を見たくないんです。恥ずかしいとかじゃなくて、なんというか、自分のものが取られちゃう感じがするんだよね(笑)。

―実は先ほど思っていたのですが、奈良さんが1人で展示室におられる時、凄く嬉しそうな表情をされていたんですよね。その理由が今わかった気がしました(笑)。今後はどんなことをやっていきたいですか?

奈良:展覧会とか関係なく1点1点作品を作っていきたい。インスタレーションをどんどん捨てて、どんなスペースに持っていっても、その作品が力を持つようなものをつくりたいな。自分だけじゃなくて世の中全部、なんとなくの雰囲気に頼りすぎている気がしていて、だけど本当の力を持つものは1枚でも強いはずだし、そこが近代のスピリットでもあるんです。つまり結局は、アコースティックギターひとつで歌えるか歌えないかってことなんですね。

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イベント情報

『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』

2012年7月14日(土)〜9月23日(日)
会場:神奈川県 横浜美術館
時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:木曜
料金:一般1,100円 大学・高校生700円 中学生400円 ※小学生以下無料

プロフィール

奈良美智

1959年青森県生まれ。愛知県立芸術大学修士課程修了。1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍。ケルン在住を経て2000年帰国。2001年国内で初めての大規模な個展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館で開催。独特のひねた表情の子どもを描く絵画やドローイングが国境や文化の枠組みを越えて絶賛される。2000年中頃、大阪のクリエイター集団grafとの共同プロジェクト「Yoshitomo Nara+graf: A to Z」を展開。音楽を愛し、山々を望む栃木のアトリエで制作する。

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