
高野寛+伊藤大助(クラムボン)インタビュー
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:田中慎一郎
音源の形態が多様化し、ライブという現場の重要性が改めて問われる現代は、音楽そのものの良し悪しはもちろん、それをどうやって作り上げたのか、どのように発表するのか、そういったところまでもがミュージシャンの表現の一部となっている。そんな中、高野寛が昨年クラムボンのライブに飛び入り参加したことをきっかけに、クラムボンのドラマーの伊藤大助と結成した新バンドが選んだのは、ツアーで曲を育て、それをそのままライブアルバム『TKN+DSK Live2012』として発表するという方法だった。デビュー作がライブアルバムというのは単純に異例だし、なおかつ宅録を好み、作り込んだ作品を作るイメージが強い高野が、こういう思い切ったやり方を選んだというのは、大きな驚きであった。しかし、それぞれが音源とライブの関係性を見つめ直すこととなった今回の邂逅というのは、決して交わした会話は多くなくとも、約15年に及ぶミュージシャンとしての交流を続けた2人だからこそ生まれた、必然の邂逅だったような気がしてならない。
、もっと自分で見てみたいということだったのかなって。(伊藤)―今年の春に行われた初めてのツアーには「happening!!」というタイトルがつけられていましたが、お二人で活動することは文字通りハプニングのようなものだったのか、それとも今思えば必然だったのか、いかがですか?
高野:そうですね……偶然は必然とも言いますからね(笑)。去年の9月末に僕がクラムボンのライブに飛び入りしたのがきっかけになっていて、その時点で僕も大ちゃんも今年何をするのか全く決めてなかったんですよ。それで、一緒に何かできるかもと思って、先にツアーのスケジュールが決まったんですけど。
高野寛
―それってかなり異例なことですよね。
高野:この二人だったら上手く行くだろうという確信とは裏腹に、どういう音楽をやるかはおぼろげだったので、ツアーの旅先で何かを作り上げていく、その過程を見せるようなツアーでいいんじゃないかと思ったんです。そういう意味で、「happening!!」っていうタイトルをつけたんですけど。
―おぼろげながらも、バンドとしての青写真があるにはあったんですか?
高野:ツアーが始まる前はフリーなセッションを中心にやろうと思っていて、機材ももうちょっとエレクトロニックなものを多く使ったりしてたんですけど、やってみたら「あんまり盛り上がんないね」ってことになり(笑)。そこから徐々にこの二人でやるイメージを固めていって、まず“た す け て”という曲を書き下ろしました。
―伊藤さんはオフィシャルサイトに掲載されているコメントで、去年のクラムボンの長いツアーの中で、「新しくなりたい」と思うようになったと書かれていましたね。
伊藤:そうですね。だからこの二人でセッションやインプロをやるのも面白そうだと思ったんですけど、実際にやってみると、結局は自分がすでに持っているものを出してるっていうことになりがちだったんですよね、今思えば。それっぽく形をまとめることはできても、何か新しいことがあるわけではなくて。だからその「新しくなりたい」っていうのは、この二人でやることでどんな形が生まれるのか、もっと自分で見てみたいということだったのかなって。
伊藤大助
―さらには、ツアーの最終日がそのままライブ盤になって、初のオリジナル作品としてリリースされるという、これもかなり珍しいですよね。
高野:2人編成っていうのは、ものすごい縛りもある反面、ものすごい自由でもある、極端な編成なんですよ。だからまず、僕は音楽やアレンジを作り込んでしまうクセがあるのも自覚しているので、「2人編成でライブをどうやろうか?」って悩んでしまうような音楽にしないようにしたいと考えたんです。
―高野さんには作り込まれたレコーディング作品のイメージがありますもんね。
高野:だから最初のアルバムをライブアルバムにしておけば、ステージ上でできることだけをツアー中に練ればいいわけで、その方が迷いも少ないだろうと思ったんです。一度そういう形で作っておけば、その後スタジオに入ったときに、もっとシンプルかつ大胆に遊べるんじゃないかとも思ったし。でも、僕の音楽キャリアの中でこういうやり方をしたのは初めてですね。大ちゃんもそう?
伊藤:そうかもしれないですね。僕は少ない人数編成での演奏経験は多いんですけど、音を足していく方向だったり、何かの代わりを自分がやらなきゃとか、そういう発想でずっとやってきた気がするんです。でも今回の場合は逆で、どうやって音数を減らそうとか、そういうことをよく考えてましたね。
イベント情報
- 『2012 autumn tour 「happening again」』
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2012年11月8日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:愛知県 名古屋 K.D Japon2012年11月10日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 Music Club JANUS2012年11月11日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:静岡県 浜松 窓枠2012年11月13日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE2012年11月17日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡県 福岡 ROOMS2012年11月18日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:鹿児島県 鹿児島 GOOD NEIGHBORS料金:全公演 前売3,800円 当日4,300円(共にドリンク別)
リリース情報

- 高野寛+伊藤大助
『TKN+DSK Live2012』(CD) -
2012年10月31日発売
価格:2,800円(税込)
tropical / QACC-300021. パンと蜜をめしあがれ
2. Baby, alright
3. いちぬけた
4. id
5. Proteus Boogie
6. Magic days
7. 四六時中夢中
8. た す け て
9. ベステンダンク
10. 太陽と月、ひとつになるとき
11. 夢の中で会えるでしょう
12. 確かな光
13. 太陽と月、ひとつになるとき(studio recording)
- 高野寛+伊藤大助
『太陽と月、ひとつになるとき -EP』 -
2012年9月19日からiTunes storeなどで配信リリース
価格:600円(税込)
tropical1. 太陽と月、ひとつになるとき
2. た す け て
3. いちぬけた
4. Proteus Boogie (2012.3.11)
プロフィール
- 高野寛
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1988年、高橋幸宏プロデュースによるシングル「See You Again」でデビュー。現在までにベスト / ライブ盤を含む16枚のアルバムをリリース。代表曲は、「虹の都へ」「ベステンダンク」(共にトッド・ラングレンのプロデュース)、「夢の中で会えるでしょう」(坂本龍一プロデュース)など。ソロワークのほか、ギタリスト / プロデューサーとしても多くのプロジェクトに参加。ナタリー・ワイズ、GANGA ZUMBA(ガンガ・ズンバ)、pupa(ピューパ)等、バンドでの活動も精力的に行う。最新オリジナルアルバムは2011年リリースの「Kameleon pop(カメレオン・ポップ)」。デビュー以来、音楽への真摯な姿勢と非凡なポップセンスは、多くの音楽ファンに支持されている。
- 伊藤大助
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95年より原田郁子・ミトと共に“クラムボン”として活動を開始。99年「はなれ ばなれ」でメジャーデビュー以降、精力的な活動を続け、今までにオリジナルアルバム8枚をリリースしている。自身のバンドとして、「LOTUS GUITAR」〜ASH(Vo&Gu)と二人からなるツーピースバンド〜や、「The Sun calls Stars」〜オータコージ(Dr)とツインドラムからなるインプロビゼーション・ドラム・ユニット〜でも活動中。その他、ゲストドラム、ドラムチューナーとしても様々なアーティストの作品へ参加。また2010年4月〜今年の3月までNHK教育「ハートをつなごう」のナレーションを担当していて、声にも定評がある。