インタビュー

会田誠が語る「アート」の未来

会田誠が語る「アート」の未来

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:西田香織
2012/12/31

「取扱い注意作家」「タブーを扱う美術家」。これまで何度もそんな枕詞で紹介されてきた会田誠だが、ついに待望の美術館での初個展が実現した。出品数約100点という大ボリュームで、大学時代の記念碑的作品から、幅17.5メートルにおよぶ最新絵画まで、多彩な会田ワールドにまとめて浸れる初の機会でもある。そして、一見ただ過激な部分にばかり目がいきがちになるかもしれないが、美少女、戦争、社会問題、エログロ、ナンセンスなどを、美術史と接続しながらラディカルに扱うその手つきは、実は希有なバランス感覚と知性に支えられている。それらを「良し」とするかどうかは、観る者に委ねられるのかもしれないけれど……。いま会田はかつての枕詞を払拭する新ステージに進んでいるのか? またそんな彼から見た、現在とこれからの「アート」とは? 森美術館で2013年3月31日まで開催中の最新個展『天才でごめんなさい』会場で話を聞いた。

『天才でごめんなさい』は、リトアニアの飲み屋で思いついたものをダメもとで送ってみたら採用されちゃいました(笑)。

―今回の『会田誠展:天才でごめんなさい』は、謙虚なのか不遜なのかわからない謎めいたタイトルですね(笑)。

会田:美術館から「タイトル候補を早く出して欲しい」とずっと催促されていたんですが、そんななか別の展覧会で出かけていたリトアニアの飲み屋で、ふと思いついたんです。それをダメもとで送ってみたら採用されちゃいました(笑)。

会田誠『ハート』2011年 竹、紐、和紙、アクリル絵具、リンシードオイル、電球、鉄  550×φ325 cm 電気制御盤制作:勢濃 徹 制作協力:張 嘉巖『会田誠展:天才でごめんなさい』展示風景、森美術館 Courtesy: Mizuma Art Gallery 撮影:渡邉修 写真提供:森美術館
会田誠『ハート』2011年 竹、紐、和紙、アクリル絵具、リンシードオイル、電球、鉄  550×φ325 cm 電気制御盤制作:勢濃 徹 制作協力:張 嘉巖『会田誠展:天才でごめんなさい』展示風景、森美術館 Courtesy: Mizuma Art Gallery 撮影:渡邉修 写真提供:森美術館

―ちなみにどうして「天才でごめんなさい」?

会田:自分はもともとコツコツ作るような職人的アーティストに憧れていたはずなのに、気がついたらいわゆる天才っぽくやってしまっていたな、という自嘲と反省もこめて……でしょうか。どこか勘とノリで作っていて、真面目に考えて練っていないところもありまして。

会田誠『灰色の山』2009-11年 アクリル絵具、キャンバス 300×700 cm タグチ・アートコレクション蔵 制作協力:渡辺篤 Courtesy: Mizuma Art Gallery
会田誠『灰色の山』2009-11年 アクリル絵具、キャンバス 300×700 cm タグチ・アートコレクション蔵 制作協力:渡辺篤 Courtesy: Mizuma Art Gallery

―なるほど。でも展覧会場に大貼りされた「いかにすれば世界で最も偉大な芸術家になれるか」の十か条なんかは、かなり挑発的ですよね? 「同じことは――いや似ていることさえ、二度と繰り返すな」「天才芸術家にとって過去の奴らなんて、みんな取るに足らない下手っぴばかりだ」「芸術家にスケジュールや納期という概念はない」などなど。

会田誠『灰色の山』(部分)2009-11年 アクリル絵具、キャンバス 300×700 cm タグチ・アートコレクション蔵 制作協力:渡辺篤 『会田誠展:天才でごめんなさい』展示風景、森美術館 Courtesy: Mizuma Art Gallery
会田誠『灰色の山』(部分)2009-11年 アクリル絵具、キャンバス 300×700 cm
タグチ・アートコレクション蔵 制作協力:渡辺篤
『会田誠展:天才でごめんなさい』展示風景、森美術館 Courtesy: Mizuma Art Gallery

会田:あれは個展にお決まりのアーティストステイトメント(作家による宣言文)を求められて、その代わりとして書いたものです。最初は『天才でごめんなさい』の「ごめんなさい」に比重をかけて、「ごめんなさい20連発」みたいなのを書いてみたんですが、つまらなくてゴミ箱行きにしました。だったらということで、今度は「天才」寄りに、ふんぞり返る系にした結果ですね。書きながら色々なアーティストの顔が脳裏をかすめつつ……たとえば村上隆さんのお顔などもチラチラと(笑)。まぁ、この十か条のどれかひとつでも本気でやらかしたら、美術家としてダメだとわかって書いたものなので、だから村上さんの色々な言葉を全部裏返したギャグみたいなものでもあります。

会田誠
会田誠

―そうなんですか。本気にする若い美術家志望もいたりして(笑)。

会田:でも、僕が新宿歌舞伎町で運営していたバー「芸術公民館」に集まっていた飲み仲間には、あれを地でいっているような人たちもいます。ちゃんとした発表はしていないのに、マインドだけは芸術家である人とか(笑)。彼らも僕にとっては大切な友人たちです。村上隆さんみたいなアーティストと芸術公民館の仲間たちとの狭間にいる、そんな自分の状況も我ながら不思議で、あの十か条はそんな心境から出てきたものとも言えますかね。

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イベント情報

『会田誠展:天才でごめんなさい』

2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)
会場:東京都 六本木 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
時間:10:00〜22:00(入館は閉館時間の30分前まで、火曜は17:00まで、1月1日は22:00まで)
料金:一般1,500円 学生(高校・大学生)1,000円 子供(4歳から中学生)500円
※会期中無休

プロフィール

会田誠

美術家。1965年新潟県生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。美少女、戦争、サラリーマンなど、社会や歴史、現代と近代以前、西洋と東洋の境界を自由に往来し、奇想天外な対比や痛烈な批評性を提示する作風で、幅広い世代から圧倒的な支持を得ている。主な展覧会に『六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004』(森美術館、2004年)、『ビリーフ』(シンガポールビエンナーレ、2006年)、『バイバイキティ!!! 天国と地獄の狭間で―日本現代アートの今―』(ジャパン・ソサエティ、ニューヨーク、2011年)、『ベスト・タイム、ワースト・タイム 現代美術の終末と再生』(第1回キエフ国際現代美術ビエンナーレ、ウクライナ、2012年)など。また小説やマンガの執筆など活動は多岐にわたる。

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