インタビュー

会田誠が語る「アート」の未来

会田誠が語る「アート」の未来

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:西田香織
2012/12/31

「アートとエンターテインメントは違う」と言い放ったあの人に、「あのときはああ言ってたけど、私はもう過去の人間だわ」と、いつか言わせてみたい(笑)。

―かつて母校・東京藝術大学の老教授に「入る大学を間違えたね」と言われ、「オマエの100倍は真剣に毎日『日本にとって美術とは何か』ってことを考えてんだよ!」と心中で憤慨したエピソードもありますね。その会田さんも今は学生たちを教える場に立つことも増えています。個展の最後に登場する共同制作『モニュメント・フォー・ナッシングII』も、2008年から美大を主な舞台にして進められてきたものだとか。美術教育という面では、今の日本の状況をどう思いますか?

会田:基本的には、誰かが悪いというよりは、現代美術を教育するということ自体が難しいことなんじゃないですかね。親方から弟子にそのまま技術を伝える、みたいな世界でもないですし。僕の美大生時代は、担任だった榎倉康二先生を反面教師として学んだというのがあります(笑)。あと大学院では「油画技法材料研究室」というマニアックな専攻を選んだので、その手の知識はある程度役立ってますが、そこまで大きいものとは言いにくいですね。だから美大は……何にもないよりも、あったほうが何かしら学生の役に立つこともあるかも、くらいの存在でいいんじゃないでしょうか。美大を通過せずやっていく人たちも沢山いますし。

会田誠+21st Century Cardboard Guild『モニュメント・フォー・ナッシング II』2008年− ダンボール、その他 サイズ未定 Courtesy: Mizuma Art Gallery
会田誠+21st Century Cardboard Guild『モニュメント・フォー・ナッシング II』
2008年− ダンボール、その他 サイズ未定 Courtesy: Mizuma Art Gallery

―いっぽう、大学ではない専門校の「美学校」で会田さんが受け持ったクラスからは、Chim↑Pomや遠藤一郎さんなどが輩出されていますね。

会田:彼らにしても、僕が色々教えたという感じではないですから。強いて言うなら酒の席での話とかを通して、「他山の石」というか、何かしら感じたことはあるのかなと思います。

―たとえば作品の売買がなされるマーケットの規模など、日本の現代美術シーンはアーティストが生きて行く上では色々と厳しい状況にあるとの意見もあると思うのですが?

会田:もちろん、土壌が貧しいゆえにダメになる、という可能性もあるでしょうね。でも理想というか希望としては、養分の少ない荒れ地に育った雑草が強い生命力を持つ、みたいなことも一か八か起きてくれたらいいな、とは思います(笑)。例えるなら、THE BEATLESの歴史が「4人が育ったリバプールは大不況下で造船業がポシャって、みんなヤサグレてる中で……」みたいな感じで始まるように。

―ご自身の今後の展望はありますか? たとえば、森美術館は海外からの来場者も多いそうです。会田さんの脳内の「お客さん」の中にも海外の観衆は含まれるんでしょうか。

会田:海外の人たちが自分の作品をどう見るのかな、というのはいつもどこかで考えています。間違っているかもしれないけど……今の時代、一般の人々レベルでは、欧米やアジアも関係なく、実は色々な面で近づいてきているのではと感じます。これは良くも悪くもですが、感性の面とかでもそうだし、みんな同じマックやスタバを飲み食いしてる、みたいな面でも。むしろ、美術史とかに詳しい頭の良い美術関係者のほうが、僕のことを受け付けないのかもなと。

会田誠

―そこは、できれば、あちら側に合わせることなく認めさせたい?

会田:う〜ん、そのあたりを少しずつでも切り崩していくのは、多少野心が燃えないこともないです。具体的に顔が浮かぶ人も何人かいるんですけどね。ニューヨークで滞在制作していた頃、僕の作品を見て「アートとエンターテインメントは違うのよ」と言い放ったヨーロッパ出身の女性キュレーターがいて……もう名前忘れたけど、ああいう人に「あのときはああ言ってたけど、私はもう過去の人間だわ」とか、いつか言わせたい気持ちはちょっとありますね(笑)。

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イベント情報

『会田誠展:天才でごめんなさい』

2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)
会場:東京都 六本木 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
時間:10:00〜22:00(入館は閉館時間の30分前まで、火曜は17:00まで、1月1日は22:00まで)
料金:一般1,500円 学生(高校・大学生)1,000円 子供(4歳から中学生)500円
※会期中無休

プロフィール

会田誠

美術家。1965年新潟県生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。美少女、戦争、サラリーマンなど、社会や歴史、現代と近代以前、西洋と東洋の境界を自由に往来し、奇想天外な対比や痛烈な批評性を提示する作風で、幅広い世代から圧倒的な支持を得ている。主な展覧会に『六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004』(森美術館、2004年)、『ビリーフ』(シンガポールビエンナーレ、2006年)、『バイバイキティ!!! 天国と地獄の狭間で―日本現代アートの今―』(ジャパン・ソサエティ、ニューヨーク、2011年)、『ベスト・タイム、ワースト・タイム 現代美術の終末と再生』(第1回キエフ国際現代美術ビエンナーレ、ウクライナ、2012年)など。また小説やマンガの執筆など活動は多岐にわたる。

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