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高木正勝による気楽な生き方のススメ

高木正勝による気楽な生き方のススメ

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:西田香織
2013/02/15

高木正勝の音楽には、不思議な魅力が宿っている。そのメロディーには、まるで幼い子どもが初めて歌ったときのような純粋さがある。彼がピアノを弾いているところを目の当たりにすると、それがどういうところから生まれているのか、よくわかる。音楽を奏でているというよりも、ピアノと戯れているような演奏。何らかのパフォーマンスを見せるのではなく、自分自身が鳴らした音に「見たことのない場所」へ連れていってもらおうとするような、そういうタイプの音楽が鳴らされている。

彼がリリースした3年半ぶりのアルバム『おむすひ』には、2枚組全43曲が収録されている。中心となっているのは、彼がCMや映画、ドキュメンタリー番組などのために制作してきた楽曲群だ。約10年前に世界中を旅し現地の人たちと演奏した“Light Song”シリーズを除けば、その全てが2011年以降の作品となっている。

昨年には映画『おおかみこどもの雨と雪』の主題歌とサウンドトラックを手掛け、最近もONWARD「組曲」や、JR東日本「行くぜ、東北」など、数多くのCMやプロジェクトに楽曲を提供している彼。昨年にCINRAで行ったインタビューでは、震災以降に音楽観、表現への意識が大きく変わったことを語っていた。今回の取材では、その変化がどういうものだったのか、そして、音楽制作の秘訣から生き方や暮らし方のヒントになることまでを、語ってもらった。

相手を自分に引き寄せて、イタコみたいになると上手くいく。

―正直、これまでの高木正勝さんって、「孤高の音楽家」みたいなイメージもあったと思うんですよ。

高木:そんなんでしたっけ?(笑)

―京都の亀岡にこもって、独自の美学を追求している、みたいな。

高木:普通に生活してますよ。音楽を作るときに自分自身を出そうと思わなくなりましたね。自分の中にあるものをムリヤリ出そうとすると失敗するけど、相手を自分に引き寄せて、イタコみたいになれると上手くいくことに気が付いたんです。自分の身体なんだけど、相手になりきっているような感覚というか。まあ、きっと妄想なんですけれど、そういう感覚を一生かけて大事にしていきたいし、階段を登っていくように少しずつ培っていけてる実感はあります。どんどん気楽になってきてますね。

高木正勝
高木正勝

―どういったことが変化のきっかけになったんでしょう?

高木:一通りやってしまった感じがあるんです。たとえば『タイ・レイ・タイ・リオ』(2008年に行ったコンサート。歴史が根付く遥か以前から日本に受け継がれている感覚を、音楽を通して今に蘇らせることを目指した)の続きをやれと言われても、今やろうとすると、ちょっと嘘が入るというか。神話や民話を遡って、昔の人たちの気持ちや考え方に素晴らしいものがたくさんあるのはわかった。だけど、それをただ続けていっても、客観的に考えたら、今生きている自分の生活と折り合いがついてないなって思ったんです。そうやって煮詰まりかけているときに、Twitterを始めたんですよね。

―アルバムでは、Twitterで声を募集して作った“Ten Ten”のような曲も収録されていますね。

高木:音楽を作り始めるときは、大体Twitterを見るんですけど、そこにはほとんど知らない人ばかりが並んでいる。フォローしてくれた人がどういう人か知りたいから、フォローするようにしていて。本屋に行っても、テレビを見ていても、入ってこないような情報が入ってきて面白いんです。以前と比べて、音楽を一人で作ってる感じがなくなりましたね。

―人と関わるようになったわけですね。

高木:自分の仕事と関係しない人たちと関わるようになったのも、大きいかもしれないです。たとえば、地元の幼稚園を運営しているお母さんたちや子どもたち、京都の市内でお店をやってる人たちと触れ合うようになって。そしたら、出したい音も変わってきたんです。

―アルバムの他の曲にも反映されていますか?

高木:“Kaze Kogi”っていう、四国の仁淀川に想いを馳せて作った曲があるのですが、近所に住んでいて目が合うと挨拶するおっちゃんが、四国出身の人だと最近知ったんですね。ときどき家のピアノで演奏してるのですが、彼が住んでる土地の曲だと思いながら弾いてます。聴いてくれてるかわかりませんけど、彼が子どもの頃の記憶を思い出すようなものになればいいなって。最近は、会う人によく「励まされてます」って言われるようになったんですけど、とても嬉しくて。ずっとそういう気持ちで作ったり演奏してきたから。

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リリース情報

高木正勝『おむすひ』(2CD)
高木正勝
『おむすひ』(2CD)

2013年2月20日発売
価格:3,500円(税込)
felicity / PECF-1063/4 / cap-165

[DISC1]
1. Light Song
2. Niyodo - piano
3. Kaze Kogi
4. Niyodo
5. Hasirimiz
6. Mikura
7. Odori
8. Garbha
9. Kaze Kogi - piano
10. Niyodo - piano(reprise)
11. Kaze Kogi - koti koti teiiyu
12. Odori - variation
13. Light Song
14. Nijiko
15. Nijiko - tiny piano
16. Nijiko - Origin
17. Light Song
18. Mahoroba
19. Ten Ten
20. Light Song
[DISC2]
1. Light Song
2. Tamame
3. Horo
4. NGIA
5. Colleen
6. ohoti
7. HEHE-MIHI
8. Sione
9. VEDA
10. Tamame(reprise)
11. Light Song
12. Sora
13. Yume
14. Furu-Fusa-Fusa
15. Yubi Piano
16. Light Song
17. 一起走
18. Light Song
19. Kigi
20. Ticora
21. Musuhi
22. Light Song
23. Light Song
※絵本作家さとうみかをによる32ページブックレット付き

CINRA.STOREで取扱中の商品

高木正勝 iPhone5ケース「ぶどうがり」
高木正勝
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プロフィール

高木正勝

1979年生まれ、京都府在住。音楽家/映像作家。普遍的で深遠な要素を持ちつつ、カラフルでPOPな映像と、自ら作曲する音楽を融合させた作品により注目を集めるアーティスト。2009年のNewsweek日本版で、「世界が尊敬する日本人100人」の1人に選ばれている。国内外のレーベルからCD/DVDをリリースするだけでなく、アニエスベーとのコラボレーションによる作品制作、東京都現代美術館でのビデオ・インスタレーションなど、アート、音楽、クラブ、ファッションといった表現の境界線を軽々と超える活動を展開している。

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