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クラブシーンの「へうげもの」 小林径インタビュー

クラブシーンの「へうげもの」 小林径インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:西田香織
2013/04/02

群雄割拠の漫画界で、異色の存在感を放つ山田芳裕『へうげもの』(講談社『モーニング』連載中)。武勲はイマイチな武将・古田織部(1544〜1615)がやきものと茶の湯に魅せられ、破格の「へうげる=ふざける / おどける」感性で独自の価値観を極める物語だ。笑いも涙も野望も抱え込んでの熱いドラマが繰り広げられる中、クラブ界の大御所DJ・小林径との乙なコラボ盤『Kei Kobayashi×へうげもの=数奇國』が発売された。山田からのリクエストに対し、ジャンルを越境する手さばきで、小林が『へうげもの』ワールドを大胆解釈した一枚だ。

実は小林径、現代アート好きから始まり、無類の茶の湯・やきもの好きでもある。そこで今回は、アルバム誕生の背景はもちろん、DJと茶の湯の共通点(!)、『へうげもの』の舞台である安土桃山時代から今の日本を眺める視点で語ってもらった。さらにインタビューのフォロー役として、『へうげもの』担当編集者も参戦。趣ある陽春の和室にて交わされた、ときに「ホヒョン」と軽快で、ときに「どぺぇっ」と豪快な語りの一部始終をどうぞ!

『へうげもの』って、古美術を知らない人でも楽しめる一方、ある程度知らないとわからないギャグが多いんです。(小林)

―今回のアルバムは、小林さんのDJとしての目利き(耳利き?)による選曲が『へうげもの』ワールドを織りなす一枚ですが、そもそもの実現のきっかけは?

小林:『へうげもの』の企画アルバムは第2弾なんですが(第1弾:cro-magnon×Hyouge Mono『乙』)、ポニーキャニオンの担当・村多正俊さんからお話をもらったのが始まりです。彼自身が古唐津の熱心なコレクターで、古美術屋さんが集まる飲み屋で顔を会わせたりしていたんです。

―小林さん自身も茶の湯ややきもの好きで、雑誌連載もしていたほどですよね。音楽界にはそういう人、多いんでしょうか?

小林:クラブ関係の知り合いにはいないですね。でも、僕は僕で『へうげもの』を読んですごく気になっていたので、村多さんからお話があったときは喜んで引き受けさせていただきました。

―「数奇者」同士が必然的に結び付いた、と(笑)。

小林:いや、その時点ではまだ最終確定に至っていなかったんです。作者の山田芳裕さんが僕を気に入るかどうかという最終のハードルがあって(笑)、お宅にお邪魔することになりまして。

小林径
小林径

―面接みたいですね(笑)。

小林:何事も好みがはっきりした方らしいので、周囲は「大丈夫か?」とハラハラしていたと思います。でも、僕には自分が最高の読者だという根拠のない自信があったので、そんなに心配はしていませんでした(笑)。

―そういう自信を持てるくらい、『へうげもの』を読み込んでいたってことですよね。

小林:『へうげもの』って、古美術を知らない人でも楽しめる一方、ある程度知らないとわからないギャグが多いんです。そういうのを見るにつけ「このギャグがわかる読者は自分くらいだろう」という勝手な思い込みもありました(笑)。たとえば僕が大好きなシーンに、主人公の古田織部と、出家した元武将・荒木村重との最後の会見があるんです。

―荒木村重は武士なのに、武士の誇りよりも数奇者としての欲望に走った人物ですよね。

小林:そう。それで晩年の荒木が「自分の命も長くないから……」みたいな感じで、集めた名物の中からひとつだけ、織部に好きなものをやるっていう場面があって。

第四十一席「Golden Years」より|『モーニング』KC『へうげもの』
第四十一席「Golden Years」より|『モーニング』KC『へうげもの』 ※クリックで拡大

―あ〜、それで織部がうつわを選んだら「それだけはダメ!!」ってゴネて奪い合いになり、あげく器が欠けちゃうという(笑)。

小林:そうそう。あのうつわのモデル「高麗 割高台茶碗」の実物には、確かに何かをもぎとったような跡があるんですよ。つまり『へうげもの』では、実在するうつわが欠けている原因を、数奇者同士のえげつない奪い合い、というギャグとして描いている。もちろん山田さんの創作でしょうけれど、僕にすればあのあたりこそリアルで。金をかけて名物を集めてる美術好きの業や生々しさが、見事に伝わってくるエピソードじゃないですか。

―山田さんと打ち合わせの際も、やっぱりそういう話で盛り上がったんですか?

小林:かなり盛り上がってしまい、ポニーキャニオンの村多さんと一緒に帰るはずが、僕だけ長居して(笑)。結局その日は音楽の話はせず、編集担当の藤沢さんも交えて、古美術の話ばかりでした。

―今日はその藤沢さんにもフォロー役として来てもらっているので、山田さんについてあれこれ聞かせていただきたいと思っています。

小林:山田さんはもちろん、藤沢さん(以下、担当)もけっこう詳しくて、僕の好きな武将茶人・佐久間不干斎(正勝:1556〜1631)のこともご存じでした。ものすごい数奇者で、あまりにも度が過ぎて、信長に追放されるような変わった武人なんですけど……。

担当:いや、本で読んだだけで詳しくは知りません(笑)。ちなみに『へうげもの』にはその父親で、織田家の重臣だった佐久間信盛(1528?〜1582)が名前だけ出てきます。

―『へうげもの』では茶の湯の巨人・千利休の描かれ方も独特ですね。超人的だったり怪物っぽかったり、人間臭さものぞかせたり。ふだん無表情なのが、たまに激変するシーンも強烈です。

第八十三席「本命はお前だ」より|『モーニング』KC『へうげもの』
第八十三席「本命はお前だ」より|『モーニング』KC『へうげもの』※クリックで拡大

小林:茶人とか政治家的な面だけでなく、同じうつわを2つとも欲しがるような、業にとらわれた生臭い感じもしっかり出てくる。利休のことは、小説などでも様々な作家がいろんな描き方をしていますが、ストイックな人物像ばかりで、権威主義的だなって思っちゃうんです。だけど山田さんは彼を生々しく描いている。それも『へうげもの』に惚れた理由のひとつです。

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リリース情報

V.A.『Kei Kobayashi×へうげもの=数奇國』
V.A.
『Kei Kobayashi×へうげもの=数奇國』(CD)

2013年3月6日発売
価格:1,980円(税込)
PCCA-03773
※『へうげもの』コラボCD第2弾

1. j'irai cracher sur vos tombes(墓に唾をかけろ)remastered edition / Makoto Miura
2. Firecraker(ranjatai version) / Fascinated Session
3. Iron Hands (edit version) / Makoto Kuriya
4. Interlude 1
5. les morts ont tous la meme peau(死の色はみな同じ)remastered edition / Makoto Miura
6. ノンキな父さん(hechikan mix) / 名曲堂
7. Others go to A.Y.S / Miu Chop
8. Space Funk(electro mix) / Ryouhei Tanaka(Manzel Bush)
9. YOUNG STARR / The Nude Band
10. Interlude 2 (African Village short version) / Nation Of Multiverse 
11. クーデタークラブ / GAGLE
12. Time Flows On(enermy in honnouji Mix)(AFLEX COMBO)
14. OMEGAROCK / Omega f2;k
15. Perfect Day(Basara dancer mix) / Dark Shadow
16. My Big Hands(Fall Through The Cracks) / J Funk Express
17. Regged Mutang(pineapple mix) / Slow Motion Replay
18. It's Just Began In Africa(solid gold momoyama Mix) / Dj Sadou
19. Skit / AFLEX COMBO
20. I LOVE OMEGA / Omega f2;k
21. Bell's(I'll Be Waiting) / Idea Six
22. Endtitle
23. Routine Mama Funk(Kind of black mix) / Dj Sadou

書籍情報

『へうげもの』16巻(『モーニング』KC)
『へうげもの』16巻(『モーニング』KC)

2013年2月22日発売
著者:山田芳裕
価格:580円(税込)
発行:講談社

リリース情報

cro-magnon×Hyouge Mono『乙』(CD)
cro-magnon×Hyouge Mono
『乙』(CD)

2012年7月25日発売
価格:2,000円(税込)
※『へうげもの』コラボCD第1弾

1. Bowl Man feat. IKZO
2. 乙スポート
3. 天主
4. La
5. 業火
6.Dolce Vita I
7. 時間よ止まれ
8. 昭和ブルース
9. DREAM
10. Gamou
11. La Dolce Vita II
12. Queen of Quiet feat. 土岐麻子
13. ウイスキーが、お好きでしょ
14. 風に吹かれて…
15. Cannibal Holocaust

プロフィール

小林径

黎明期である80年代からDJ活動を始め、常に日本のクラブ・シーンの中心的な存在として活躍を続けている。代表作の『routine』、『Routine Jazz』シリーズのトータルは25タイトルを超え、ジャイルス・ピーターソンもレコメンドするなど世界的にも評価が高い。現在は渋谷BALLを拠点に「NEW-TRIBE」というdopeな音楽しかプレイしないイベントが評判を呼んでいる。

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