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「あるがまま」を受け入れたリアム BEADY EYEインタビュー

「あるがまま」を受け入れたリアム BEADY EYEインタビュー

テキスト
金子厚武
2013/06/17

元OASISのリアム・ギャラガー率いるBEADY EYEの新作『BE』は、ブルックリンのエクスペリメンタルバンドTV ON THE RADIOのデイブ・シーテックをプロデューサーに迎え、サウンド面で大きな変貌を遂げた驚きの作品。UKロック冬の時代が未だ続く中、彼らがこの作品に込めた真意とは? 曲タイトルが発表されたときから話題を呼んでいる“Don't Brother Me”は、やはり兄のノエル・ギャラガーのことを歌った曲なのか? 8月には『サマーソニック』での来日を控えるバンドの現在に迫る。

UKロック冬の時代

近年ここ日本でも「ロックバンドに元気がない」と言われたりしているが、2013年の上半期を振り返ってみると、THE BAWDIES、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSIONなどが活躍していて、サカナクションやSEKAI NO OWARIあたりまで含めれば、なかなかの盛り上がりを見せていたと言えそうだ。そう考えると、むしろより深刻なのはUKのロックシーンかもしれない。2000年代初頭のロックンロールリバイバルを契機に、第2次ブリットポップと呼ばれるほどに活況を呈していたのも遥か昔、ARCTIC MONKEYSの登場を頂点とし、2000年代後半から徐々にロックバンドの数が減少。2010年代に入ってからは、THE VACCINESやジェイク・バグ(バンドじゃないけど)などの活躍はあるものの、まだ大きな流れを作るには至っていないのが現状だ。

そんな状況だったからこそ、BEADY EYEにかかる期待は大きかった。OASISがギャラガー兄弟による何度目(何十度目?)かの大喧嘩の末、遂に事実上の解散を選ぶと、リアム・ギャラガーをはじめ、ゲム・アーチャーとアンディ・ベルという後期OASISの主要メンバーはすぐにBEADY EYEを結成し、2011年にデビューアルバム『Different Gear, Still Speeding』を発表。


THE ROLLING STONESからU2、THE LA'Sまでを手がける御大スティーブ・リリーホワイトをプロデューサーに迎えたアルバムは、初期衝動を取り戻したかのような瑞々しいメロディーに溢れたロックンロールアルバムであり、ファンの期待に十分に応える内容だったものの、しかし、全英チャートの結果は3位どまり。OASISが発表した計7枚のオリジナルアルバムは、すべてが1位を獲得していたことを考えると、リアムにとっては初めて1位を逃した作品となってしまったわけだ。UKロックの不調ぶりは、こんなところにも表れていたと言える。

「エクスペリメントじゃない。正しいことをやっただけだ」(リアム)

この結果を受けて、BEADY EYEがセカンドでどのように巻き返しを図るかに注目が集まったわけだが、それは誰もが予想していなかった形でなされることとなった。何と、彼らはプロデューサーにTV ON THE RADIOのデイブ・シーテックを迎えたのだ。ブルックリンを拠点に活動するTV ON THE RADIOは、ポストパンクやアフロミュージックを掛け合わせ、エレクトロニックな要素もふんだんに盛り込んだ、エクスペリメンタルな作風が持ち味のバンド。デイブはそのバンドのキーマンであり、これまでにYEAH YEAH YEAHSやLIARSといったニューヨークの先鋭的なバンドに関わり、UKのバンドで言えばFOALSを手掛けてもいるが、やはりBEADY EYEとはかなりタイプの異なるバンドである。果たして、このチョイスの真相はいかに?

―デイブにプロデュースを依頼した経緯を教えてください。

ゲム:何人か考えているプロデューサーはいたんだけど、様々な理由でスケジュールが合わなかった。でも、俺たちはスタジオへ入る時間は決めてたし、デモもたくさんあった。だから、どっちみちスタジオへ入るつもりだったんだけど、マネージャーのスコットが彼の名前を出してきた。予期せぬものでうまく行くかわからなかった。レコーディングの初日まで直接会ったことはなかったし、双方ともに「信頼」というより「賭け」って感じだった。

―デイブと一緒にやって、驚いたことや新しいと思ったことは?

アンディ:彼のアプローチは新鮮だった。バンドとして同じ感覚が芽生え、すぐに理解できたし、彼がすでに持っていたビジョンで意気投合できた。俺たちは「違うことをやろう」ってオープンマインドだったし、すぐに色んなアイデアが浮かんだよ。もしひとつが上手く行かなかったら次にトライして、すぐに先へ進むことができた。毎日、新鮮なアプローチで続けることができた。

リアム:なにも決めずに、オープンだった。「チェックしてみよう、ドアを開けて中へ入ってみて、何もなかったらドア閉めて鍵閉めよう」って感じだ。で、「次を開けて入って見てみよう、そしたら、スペース・オデッセイ2001じゃないか!」って感じだった。

アンディ:やってて面白かったよ。いっぱい笑ったな。笑い飛ばしてた。

リアム:みんなエクスペリメントって言うけど、エクスペリメントじゃない。正しいことをやっただけだ。俺たちはいつもそうだ。でも上手く行かないときもたまにあったけどな。

ゲム:彼が言ったとおりにやってみて、やり過ぎたら、戻る。デイブはプレッシャーはかけない。どんなときでも全体を聴いてるんだ。細かくチェックするタイプじゃなくて、いちいち心配しない。ベースが正しいかとかチェックするタイプじゃない。もしうまく行かなくて、気に入らなかったら、うまく行くようにする。それでもダメなら破棄する。そこが俺たちの気に入ったところだ。彼が「手早くやりたい」って言い出したから、「俺たちもだ」ってことで、1日3曲というリクエストに「ああ、やってみよう」ってなってた。

つまり、BEADY EYEとデイブの邂逅は、バンドが主体的に選択したものではなく、偶然の産物だったというわけだ。しかし、これが結果的にBEADY EYEに新たな風を吹き込んだことは間違いない。『BE』のサウンドの特徴を挙げるとすれば、まずは先行シングルの“Second Bite of The Apple”や“Flick of The Finger”で聴くことのできるホーンセクションやストリングスの重用。そして、“Don't Brother Me”の長尺のアウトロに代表される、サイケデリックな音響処理が挙げられる。リアムが「スペース・オデッセイ2001じゃないか!」と言っているのは、この音響処理についてだろう。


では、この作風を過去のOASISの作品と比較してみることにしよう。まず、ストリングスの重用という意味では、OASISが栄華を極めた3枚目『Be Here Now』が思い出されるが、とにかくゴージャスなサウンドプロダクションを追求したあの作品に比べ、『BE』ではデイブのセンス溢れるプロデュースワークが光る。印象的なのがそれぞれのラスト曲で、『Be Here Now』のラストを飾った“All Around the World”がオーケストラルな大作であったのに対し、『BE』のラストの“Start Anew”では一瞬スケール感のあるストリングスが登場するものの、フッといなくなるのが美しい。また、サイケデリックという意味では、続くOASISの4枚目『Standing on the Shoulder of Giants』がそうだった。『Be Here Now』からは一転、枯れた印象を受ける作品で、あの作品同様に『BE』でもアコギが多用されているものの、ファーストの瑞々しさもちゃんと残っていて、そこまで枯れた雰囲気というのは感じられない。そう、『BE』という作品は、BEADY EYEのファーストとも、過去のどのOASISの作品とも、まったく異なる作品なのだ。

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リリース情報

BEADY EYE<br>
『BE』国内盤(CD
BEADY EYE
『BE』国内盤(CD)

2013年6月5日発売
価格:2,520円(税込)
SICP-3829

1. Flick of The Finger
2. Soul Love
3. Face The Crowd
4. Second Bite of The Apple
5. Soon Come Tomorrow
6. Iz Rite
7. I'm Just Saying
8. Don't Brother Me
9. Shine A Light
10. Ballroom Figured
11. Start Anew
12. Dreaming of Some Space
13. The World's Not Set in Stone
14. Back After The Break
15. Off At The Next Exit

プロフィール

BEADY EYE(びーでぃ あい)

1991年にイギリスはマンチェスターにて結成された、英国史上ビートルズ以来の最強ロック・グループ「オアシス」のシンガー、リアム・ギャラガー率いる新バンド。アルバム全7作が全英1位&ワールドワイドで5000万枚以上のセールスを記録するなど数々の歴史を塗り替えてきたオアシスが、ノエル・ギャラガー(g,vo)の脱退で惜しまれつつもその軌跡にピリオドをうった09年8月以降、リアムが他オアシス・メンバーと共に心血を注ぐ全世界注目の新バンド「ビーディ・アイ」が、いよいよベールを脱ぐ!

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