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繋がって当然の世界、このままでいいの? 村松亮太郎×川村真司

繋がって当然の世界、このままでいいの? 村松亮太郎×川村真司

構成
島貫泰介
撮影:野村由芽

広告においても、受け手とのコミュニケーションの道筋から創造することが必要だと思うんです。そこに関わることができなければ、今コミュニケーションに携わることに意味なんてない。(川村)

村松:自分の望む方向へ進んでいった結果、新しい道が切り拓かれたという話は、すごく納得できるし、共感できます。僕にとっては、川村さんが手がけたSOURの“映し鏡”がまさにその象徴で、今の時代、こうあるべきだよなと感じたPVでした。


川村:“映し鏡”はやっぱり特殊ですよね。今の自分でも、あの内容をいきなりメジャーレーベルやアーティストに売り込めるかって言われたらやっぱ自信がないですよ。SOURのメンバーって、実は高校の同級生で、予算がなくても「面白いもの作ろうぜ!」と思える信頼感があったからこそ実現できたんです。

村松:そうなんですね。今の時代、どんなに素晴らしい映像を作れたとしても、昔のような訴求力はないと思うんです。同世代のクリエイターが時代の空気感を共有していたからこそあそこまで盛り上がることができたんじゃないでしょうか。

川村:ただ一方で、あるコンテクストを知らなくても通じるような映像表現の強さも必要だと思っていて。単純に新しい技術を持ってきてデモンストレーションしただけでは、時代とともに風化しちゃう。“映し鏡”に関しては、今観ても、けっこう面白く観られるから、狙ったみたいにその強度はちゃんと保てたとは思うんですけど、なんでもネット、なんでもソーシャルっていうトレンドはちょっと心配ですよね。

村松:新しい技術に注目が集まるのは仕方ないことだとしても、やはり重要なのは演出ですよ。表現だと名乗る以上、映像の演出的な強さは絶対に必要だと思います。僕も、東京駅のプロジェクションマッピングを手がけたときに気をつけたのはそこで、例えばスピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』はCG技術の進歩を体感できたけれど、面白かった理由は演出の巧みさであり、スピルバーグの手腕じゃないですか。


川村:すごく分かります。よくPARTYのメンバーと話すのは、映画館に行っても、その映画をスマホから操作できるようにしたいとか思わないじゃないですか? 別に『ローマの休日』のエンディングをインタラクティブに変えたいとか思わない(笑)。

村松:今度10月に、東京国立博物館で特別展『京都―洛中洛外図と障壁画の美』っていう、400年前の京都に焦点を当てて、国宝、重要文化財の作品がズラッと並ぶような展覧会があるんですが、そこでプロジェクションマッピングの新作を発表するんです。今回の自分なりのテーマとして、ストーリーと演出を見てほしいというのがあって。

川村:と言うと?

村松:『京都〜』展の見どころの1つが、国宝・重要文化財に指定されている『洛中洛外図屏風』全7件が全部出展されることなんですけど、当時これらの屏風は相当アヴァンギャルドなものとして描かれたんだと思うんですね。だから僕もそのマインドを継承しつつ、その世界観を映像化しようと。

川村:映画的な見せ方になるのでしょうか?

村松:どちらかと言うと、ディズニーランドとかのアトラクションに近いかもしれません。屏風絵を描いたのが岩佐又兵衛という絵師なんですが、作品の中で又兵衛本人らしき人物が少年の姿として座っているんですよ。そこを起点にして、江戸時代と現代の京都を行き来する、時空を超えた又兵衛の旅を表現するんです。

川村:観てみたい。物語の着眼点が面白いですね。

村松:プロジェクションマッピングというと、目まぐるしく映像が変化してインパクトのある映像であればいいという風潮がありますけど、会場となる東京国立博物館は歴史のある建築物ですから、歴史の深みも同時に感じてほしいんです。

川村:僕自身、広告会社がバックグラウンドとしてあるんですけど、やっぱり僕らが作るべきものは広告じゃなくて、エンターテインメントや、サービスや、プロダクトなんですよ。ひと昔前の広告なら、ある種ストーカーみたいに「好きだ好きだ好きだ」って叫び続けてもそれなりに成立していた。そんな告白が好きな人も多かったし、そういうモノだって思ってる人も多かったから。でも、今は人の好みもライフスタイルも多様になって、花束を送られて嬉しい人もいれば、LINEの変なスタンプから気になり始める人もいますよね。だから、エンターテインメントコンテンツの土台部分から考えていって、広告においても、何をどうやってコミュニケーションするかの道筋から創造することが必要だと思うんです。もちろん、商品を考えたりするのはクライアントの仕事で、「聖域に踏み込むんじゃない」みたいに言われることもあると思う。でも、僕らからしてみたらそこが解決しなくてはいけない問題の一番のコアだったりする。そこに関わることができなければ、今コミュニケーション作りに携わることに意味なんてない。

川村真司

村松:僕のルートと真逆なのが面白いですね。僕は自主映画から始まっているので、自分でゼロから作ってきたタイプです。ただ、だんだんと仕事の内容が広がっていって、それまで「知ったこっちゃねえよ」と自分中心でやってこれたのが、組織やスタッフのことを考えないといけなくなってきていて。

川村:もの作りの本当の理想ってそのちょうど真ん中じゃないですか? 好き勝手やっててもダメだし、表現的に面白くない、ただ伝えるだけのものを量産してもダメ。実験的なことにチャレンジしつつ、感性の鋭い層にも刺さることができて、そこにちゃんとクライアントがお金を出せるという環境を作りたい。

村松:そのバランスがよかったのが“映し鏡”ですよ。映像が三者の接点になっている。

川村:そうかもしれないですが、あれは予算がない状態からスタートしてますから、奇跡みたいなものかも……(笑)。やはり、僕にとってこれからの課題はマネタイズです。PARTYという会社で、自分たちが作っているような表現できちんとお金を発生させられるような仕組みをもっと業界全体で築いていかないと続かなくなっちゃう。悲しいかな、アイデアやデザインをタダだと思っている人たちって少なくないんですよ。才能のある映像作家やクリエイターが食えなくなっちゃう環境はなんとかしないといけない……とか言いながら、僕もいまだに数十万のビデオとか受けちゃったりするんですけどね。面白そうなプロジェクトを聞くと、いてもたってもいられなくなる(笑)。

村松:両方ともすごくわかる話です。クリエーションへの欲求と、マネタイズ。全ての理想を成立させることって、やってみると本当に難しいです。

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村松亮太郎関連イベント

特別展『京都−洛中洛外図と障壁画の美』秋のスペシャルナイト
『3Dプロジェクションマッピング付き特別夜間開館』

2013年10月16日(水)〜10月17日(木)18:00〜21:00(入館は20:30まで)
会場:東京都 東京国立博物館 平成館
時間:18:10〜20:20(約5分間の映像をループ上映予定)
料金:2,400円
3Dプロジェクションマッピング鑑賞券+特別『「京都−洛中洛外図と障壁画の美』特別夜間開館入場券1枚+マッピング映像DVDお土産つき
※9月20日からチケット発売開始、枚数に達し次第販売終了(2日間で限定2,728枚)

川村真司関連イベント情報

第325回企画展
『PARTY そこにいない。展』

2013年9月4日(水)〜9月28日(土)
会場:東京都 銀座 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
時間:11:00〜19:00(土曜は18:00まで)
休館日:日曜、祝日
料金:無料

プロフィール

村松亮太郎(むらまつ りょうたろう)

映画監督、映像クリエイター。クリエイティブカンパニーNAKED inc.代表。TV、広告、MVなどジャンルを問わず活動を続ける。2006年から立て続けに長編映画4作品を劇場公開した。自身の作品がワールドフェストヒューストングランプリ受賞など、国際映画祭で48ノミネート&受賞中。近年は3Dプロジェクションマッピングに着目し、昨年末話題となった東京駅の3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』の演出を手掛けた。

川村真司(かわむら まさし)

1979年東京生まれ、サンフランシスコ育ち。博報堂、BBH Japan、180 Amsterdam、BBH New York、Wieden & Kennedy New Yorkといった広告代理店を経て、現在東京とニューヨークを拠点とするクリエイティブ・ラボPARTYを設立し、クリエイティブディレクターとして在籍。ToyotaやGoogleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、「Rainbow in your hand」のようなプロダクト・デザイン、SOUR「日々の音色」やandrop「Bright Siren」ミュージックビデオのディレクションなど活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Show、等。2011年Creativity誌によって「世界のクリエイター50人」そして2012年Fast Company誌「100 most creative people in business」に選ばれた。

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