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驚異を生む言葉の作り方 ハルカ(ハルカトミユキ)×穂村弘

驚異を生む言葉の作り方 ハルカ(ハルカトミユキ)×穂村弘

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人

インディーズシーンで話題を呼んでいる女性ユニット、ハルカトミユキが1stアルバム『シアノタイプ』でいよいよメジャーデビューを果たす。その名前が示す通り、ボーカル、ギターで全曲の作詞を手掛けるハルカと、キーボード、コーラスのミユキによる二人組であるハルカトミユキの持ち味は、選び抜かれた鋭い言葉で人間の本質をあぶり出す歌詞と、リリカルな詩情あふれるフォーキーなメロディー。内面から湧き出る怒りや苛立ちはパンクスのような刺々しさを感じさせるが、アウトプットはあくまでもポップであり、マスへと開かれた視点を感じさせるところが素晴らしい。いわば彼女たちのメジャー進出は、一面的な感情の共感を強制するような生ぬるい音楽への、最後通牒だと言ってもいいかもしれない。CINRAではこれから3回にわたって、彼女たちの魅力を様々な角度から分析していく。

第1回目の主役は、音楽を奏でるよりも先に、言葉を綴り始めていたボーカル、ギターのハルカ。インディーズで発表した2枚のEPのタイトル『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』が、共に五七五七七を基調としているように、彼女は歌人としても活動しており、今年の3月には自ら歌集『空中で平泳ぎ』も出版している。そして、ハルカが短歌の世界へと足を踏み入れるきっかけとなったのが、今回の対談相手である歌人・穂村弘だ。1990年代のニューウェーブ短歌で知られ、エッセイから絵本の翻訳まで、幅広く活動する穂村は、はたしてハルカの歌詞をどう読み解くのか? 緊張感を伴って始まった対談は、結果的には言葉で表現を試みる者同士の、世代を超えた魂の交感となった。

短歌って31文字なんですけど、31文字だけじゃないんですよね。(ハルカ)

―ハルカさんはもともと「音楽の人」である以前に「言葉の人」で、歌集も出していますが、短歌とはどのように出会ったのですか?

ハルカ:大学1年生のときに、穂村さんの『もうおうちへかえりましょう』のページを開いて、空白の中に1行だけあるという見た目と、読んだときの衝撃で、「こんなものがあるんだ」ってびっくりしたんです。

ハルカ(ハルカトミユキ)
ハルカ(ハルカトミユキ)

穂村:僕も最初に短歌を見たときは異様に感じました。今の経済原則からすると、もし本を買って白いページに1行しかなかったら、「これは損だ」となりますよね。コストパフォーマンスが悪い、と。でも、僕はそれを見て、自分が知っている世界を支配してる原則とは違うルールがあることにショックを受けたんです。テレビやラジオでも、誰もしゃべらない10秒ってないですよね? でも僕はそれを見たら、逆に興奮すると思うんです。

―そういったある種の異様さに衝撃を受けて、その後より深く短歌にはまったのは、どういった要因が大きかったですか?

ハルカ:31文字に無理やり収めてる感じでしょうか。31文字なんですけど、31文字だけじゃないんですよね。何も説明していないのに、書かれている言葉以上のことが書いてあるように読めたんですよ。「これは私にとって小説や散文詩を読むよりも面白い」と思って、そこからいろんな歌集を読むようになりました。

穂村:普通の言葉って、足し算のイメージなんですよね。でも、詩的な言語は、掛け算で、文字を読むことで生まれる情報量が全然違うんです。だから逆に言うと、真っ白な中に1行だから読めるのであって、小説と同じだけ言葉を詰め込んじゃうと、情報量が多過ぎて読めなくなっちゃう。

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リリース情報

ハルカトミユキ
『シアノタイプ』(CD)

2013年11月6日発売
価格:3,150円(税込)
AICL-2598

1. 消しゴム
2. マネキン
3. ドライアイス
4. mosaic
5. Hate you
6. シアノタイプ
7. 7nonsense
8. 振り出しに戻る
9. 伝言ゲーム
10. 長い待ち合わせ
11. ナイフ
12. Vanilla

プロフィール

ハルカトミユキ(はるかとみゆき)

2012年終盤に突如現れた、新生フォークロックユニット、ハルカトミユキ。詩人・ハルカ(Vocal / Guitar)と奇人・ミユキ(keyboard / Chorus)のデュオ。1989年生まれの二人が立教大学の音楽サークルで知り合い、唯一「同じ匂いがする」とひかれあう。森田童子、銀杏BOYZ、ニルバーナを同時期に聴いていた「言わない」世代が静かに奏でるロックミュージック。2012年11月14日、『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』(H+M Records)でデビュー。iTunesが選出する2013年ブレイクが期待新人アーティスト「newARTIST2013」にも選ばれる。2013年3月13日、2nd e.p.『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』(H+M Records)を発売。2013年11月6日に待望のメジャー移籍第1弾となる1stフルアルバム『シアノタイプ』を発売予定。

穂村弘(ほむらひろし)

歌人。日経新聞歌壇選者。歌集に『シンジケート』『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』など。エッセー集や絵本などの著書も多数。近刊に『えほん・どうぶつ図鑑』(絵・横尾忠則)、エッセー『蚊がいる』。『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、「楽しい一日」で第44回短歌研究賞、『あかにんじゃ』(絵・木内達朗)で第4回ようちえん絵本大賞を受賞。また石井陽子とのメディアアート作品『「火よ、さわれるの」』でアルス・エレクトロニカ・インタラクティブ部門栄誉賞を受賞。

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