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驚異を生む言葉の作り方 ハルカ(ハルカトミユキ)×穂村弘

驚異を生む言葉の作り方 ハルカ(ハルカトミユキ)×穂村弘

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人

ハルカさんみたいな書き手は、「魔女狩りにあいそうなタイプ」(笑)。(穂村)

ハルカ:この前フェスに出たんですけど、ああいう場所って踊りたい人たちが来てて、コール&レスポンスをやったり、みんなで飛び跳ねたり、そういうバンドが8割なんですね。私たちはまったくそういう風にはならないから、「フェスには私たちみたいなバンドは必要ないのかな」とか「言葉を聴いてる人たちはいないんじゃないか」とか自分たちの立ち位置を考えさせられたんですけど、でも、一方では決してそんなことはないとも思ってて。あの空間でも私たちの言葉を聴いてくれた人はいたと思うし、育てるなんて偉そうなことは言えないですけど、そこに立ち続けなくちゃいけないのかなと思いました。

―今の日本のロックフェスの現場って、かなり偏りがありますよね。音楽の楽しみ方って本来自由なものなのに、「みんなと一緒に同じことをする」という楽しみ方しかないような感じを受けるんです。一番わかりやすいのが、曲に合わせてみんなで手を前後に振る動きで、もちろんそれをしなくちゃいけないルールなんてないんだけど、それをするのが当然のことのようになっていて。

ハルカ:楽屋である人が「みんなを固まらせちゃうようなロックスターがいなくなっちゃった」と言ってて、それがショックだったんですよね。第一声で聴いた人を固まらせちゃうような、そういう人がいなくちゃいけないんだなって思いました。


穂村:表現には「共感=シンパシー」と「驚異=ワンダー」があって、詩や音楽の本質はワンダーだと思うんだけど、今は圧倒的にシンパシーの時代ですよね。少なくとも僕が青春期の頃までは、「誰も見たことがないものを見たい」とか、「自分がそれを最初にやる」というようなワンダーの価値が大きかったと思うんだけど、それがここまで値崩れしたのがショックで。「見たことがない、聴いたことがない」ものへの憧れって、どこに行っちゃったのかなって。

―なぜここまで値崩れしてしまったんだと思われますか?

穂村:1つは社会が厳しくなったこと。同調圧力が強くなって、「変なおじさん」みたいな人の存在が許されない。僕みたいな人が昼間に住宅地の公園に行くと、お母さんたちがみんな警戒して、「いるだけで罪」みたいな(笑)。そういう厳しさと、シンパシーの強制力はリンクしてると思います。今は逸脱した魂の居場所がない。

―今の話を聞いていて、渋谷でトウモロコシにスリッパをはかせて散歩させてるおじさんが話題になってたのを思い出しました……。

穂村:隕石が地球に突っ込んだりして、社会の価値観が激変したら、「トウモロコシを散歩させてたのは、こういうことだったんだ!」って理解される可能性もあるかもしれなくて、僕らの仕事も基本は隕石と同じ役割なんですよね。散文は現在を補強するけど、韻文は未来の価値観の提示なんです。ただ、それって今はまだ証明できないから、すごくわかりづらい。そこでリトマス紙的に大事なのは、若い人の反応で、なぜかというと、若者は生きている未来だから。「何かわかんないけど、これいい」というのは、未来を感じ取る感覚ですよね。

左から:穂村弘、ハルカ(ハルカトミユキ)

―これまでハルカトミユキとして2枚のEPをリリースする中で、同世代の人や、ハルカさんよりも若い人からのリアクションはいかがですか?

ハルカ:私は絶対に反応してくれる人がいると信じて、共感や生きるための言葉に対してちょっと違った角度から球を投げたんですけど、思った通りの反応があったので嬉しかったし、これがどんどん広がれば間違いないなって思います。今はまだ共感勢力の方が強くて戦ってますけどね(笑)。

穂村:共感性の勢力に対して、ハルカさんみたいな書き手は、「魔女狩りにあいそうなタイプ」ですよね(笑)。椎名林檎にしても、Coccoにしても、リスペクトされる日本の女性アーティストって、「魔女狩りにあいそうなタイプ」が多いのですが、そういう魂の存在感は、例えば、戦時中に投獄されたような詩人や俳人を見ても明らかで。つまり、そういう人たちが提示する未来の価値観は、戦争をやりたいという現在の世界にとって危険だと思われたわけですよね。未来の言葉を使える人たちというのは、やっぱり光ってるんですよ。

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リリース情報

ハルカトミユキ
『シアノタイプ』(CD)

2013年11月6日発売
価格:3,150円(税込)
AICL-2598

1. 消しゴム
2. マネキン
3. ドライアイス
4. mosaic
5. Hate you
6. シアノタイプ
7. 7nonsense
8. 振り出しに戻る
9. 伝言ゲーム
10. 長い待ち合わせ
11. ナイフ
12. Vanilla

プロフィール

ハルカトミユキ(はるかとみゆき)

2012年終盤に突如現れた、新生フォークロックユニット、ハルカトミユキ。詩人・ハルカ(Vocal / Guitar)と奇人・ミユキ(keyboard / Chorus)のデュオ。1989年生まれの二人が立教大学の音楽サークルで知り合い、唯一「同じ匂いがする」とひかれあう。森田童子、銀杏BOYZ、ニルバーナを同時期に聴いていた「言わない」世代が静かに奏でるロックミュージック。2012年11月14日、『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』(H+M Records)でデビュー。iTunesが選出する2013年ブレイクが期待新人アーティスト「newARTIST2013」にも選ばれる。2013年3月13日、2nd e.p.『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』(H+M Records)を発売。2013年11月6日に待望のメジャー移籍第1弾となる1stフルアルバム『シアノタイプ』を発売予定。

穂村弘(ほむらひろし)

歌人。日経新聞歌壇選者。歌集に『シンジケート』『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』など。エッセー集や絵本などの著書も多数。近刊に『えほん・どうぶつ図鑑』(絵・横尾忠則)、エッセー『蚊がいる』。『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、「楽しい一日」で第44回短歌研究賞、『あかにんじゃ』(絵・木内達朗)で第4回ようちえん絵本大賞を受賞。また石井陽子とのメディアアート作品『「火よ、さわれるの」』でアルス・エレクトロニカ・インタラクティブ部門栄誉賞を受賞。

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