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ちっぽけな僕らは如何に生きる? MOBYインタビュー

ちっぽけな僕らは如何に生きる? MOBYインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
2013/10/04

音楽に限らず、アートや執筆といったいかなる創作活動においても、自分の作品を誰か他の人に見せた瞬間、その作品に対する自分の見方がかなり変わるんだ。

―では、『Innocents』について聞かせてください。拠点をニューヨークからロサンゼルスに移したこと、初めて外部のプロデューサーを迎えたこと、この2点が制作に大きな影響を及ぼしたのではないかと思うのですが、まずは拠点をロサンゼルスに移されたのは、どういう理由からだったのでしょうか?

MOBY:ロサンゼルスに移住した一番の理由は、寒い冬を過ごすのが嫌になったからだよ(笑)。僕はニューヨークで生まれ育ったわけだけど、ニューヨークは東京と同じで、冬がとにかく寒い。それが耐えられなくなったんだ。あと、ロサンゼルスという街はすごく広大で、すごく不思議な街という印象があって、そのロサンゼルスの不思議さが僕にとって魅力だった。あとは、ニューヨークの物価が高騰するにつれて、多くのクリエイティブな人たちがロスに移住しているというのもある。画家、ミュージシャン、映画人として活動するには、それなりの居住空間が必要だ。今のニューヨークは地価があまりに高騰し過ぎた。ニューヨークからロサンゼルスに移住するミュージシャンが日に日に増えているように思うよ。

MOBY

―拠点の変化は制作にどんな影響を与えましたか?

MOBY:今回のアルバムに何らかの影響があったとしたら、さっきも言ったように、ロサンゼルスはとにかく広大な街で、東京もそうだけど、ロサンゼルスもとにかく果てしなく広がっている。その広大さに最初すごく戸惑ったことから、より静かで家で聴くような作品を作るに至ったんだと思う。広大で雑然とした場所に住んでることで、より静かで家に根ざした作品を作りたいと思ったんだ。

―本作は当初の「グランジーでローファイなエレクトロニックダンスアルバム」という想定から、徐々に「風変わりで、感情的な、メロディックなアルバム」へと変化していったとのことですが、その変化の過程を教えていただけますか?

MOBY:その変化はけっこう単純なものだったんだよ。もともとは、確かにアンダーグラウンドでローファイなダンスアルバムを作ろうと思っていたんだけど、マーク・スパイク・ステント(ビョークやマドンナ、U2、ビヨンセなどを手がける世界的プロデューサー)にアルバムをプロデュースしてもらうことになって、僕が作るさまざまな形の音楽の中で彼が一番好きな音楽は、よりメロディックで、繊細で、情緒に富んだものだから、「アルバムの焦点もメロディックなものにしよう」ということになったんだ。

―そもそも、初めて外部のプロデューサーを起用した意図は何だったのですか?

MOBY:自分一人で制作をしていると、すぐに冷静な判断力を失ってしまう。外部のプロデューサーを起用することで、物事がより鮮明に見えてくるし、冷静な判断もできる。それと、音楽に限らず、アートや執筆といったいかなる創作活動においても、自分の作品を誰か他の人に見せた瞬間、その作品に対する自分の見方がかなり変わるんだ。それも作品を作る上で非常に役立つ。それが外部のプロデューサーを起用する際の一番の利点だと思う。

僕たちがコンピューターに向かっているときよりも、犬がおもちゃと戯れてるときの方がよっぽど幸せな気もするし、人間の行動の方が馬鹿げているのかもしれないね。

―The Flaming Lipsのウェイン・コインをゲストボーカルに迎えた“The Perfect Life”は非常に印象的な曲です。この曲のテーマと、ウェインを起用した理由を教えてください。


MOBY:ウェインとは知り合ってもう20年近くなる。1995年にRED HOT CHILI PEPPERSのツアーで一緒になったのがきっかけなんだ。“The Perfect Life”を書いたとき、THE FLAMING LIPSっぽい曲に思えたから、ウェインに携帯メールを送って、「THE FLAMING LIPSみたいな曲を書いたんだけど、歌ってくれないか?」って聞いたんだ。そうしたら「ぜひやりたい」とすぐに返信がきたってわけ。この曲のテーマは、この星に生きる70億の人みんなが「完璧な人生」を求めて頑張っているけど、じゃあその「完璧な人生」って一体何なんだってことを考える以前に、70億の人間が揃いも揃って「完璧な人生」を求めるがゆえにやってしまうさまざまなことが、いかに無邪気というか、馬鹿げたことかと思ってね。

―例えば、それはどういったことですか?

MOBY:例えば、犬が小さなプラスチック製のおもちゃで楽しそうに遊んでいるのを見て、僕たちは馬鹿げていると思うかもしれない。「たかだかプラスチック製のおもちゃにそんなに興奮して」ってね。でも、犬の方だって、僕たちがコンピューターに向かってSNSばかりやってるのを見て、馬鹿みたいと思ってるかもしれない。僕たちがコンピューターに向かっているときよりも、犬がおもちゃと戯れてるときの方がよっぽど幸せな気もするし、人間の行動の方が馬鹿げているのかもしれないね。

―ちなみに、THE FLAMING LIPSの作品の中で、最も好きな作品を挙げるとすれば?

MOBY:面白い作品をたくさん出しているから選ぶのは難しいけど、1枚挙げるとしたら、ありきたりかもしれないけど『Yoshimi Battles The Pink Robots』だね。“Do You Realize??”が入っているから。多くの人が最も好きな作品に挙げるアルバムだと思うけど、本当に素晴らしい作品だと思う。

―“The Perfect Life”のミュージックビデオには、どんなコンセプトがありましたか?

MOBY:ミュージックビデオ、特にメジャーレーベルの作品の中には、重過ぎるんじゃないかって思うものがある。作り込み過ぎてたり、真剣に考え過ぎてたり。だから、“The Perfect Life”のビデオのアイデアは、馬鹿馬鹿しくて、楽しくて、お祭りみたいなもので、そこに「完璧な人生」の要素になり得るものをいろいろ取り入れてみることだった。基本は楽しくて馬鹿みたいなビデオで、真面目になり過ぎないことがコンセプトだったと言えるかもね。

MOBY“The Perfect Life”ミュージックビデオより

―“Saints”には、あなたのクラシックである“GO”を連想させる雰囲気があるように感じました。本作はさまざまな新しい試みが試されている作品ですが、どこか1周回ってスタートに戻ってきたような、そんな感触もお持ちなのでしょうか?

MOBY:僕は自分の音楽活動の歴史について考えることがない。だから、音楽を作っているときに「これは過去に作ったあの作品に似ている」と思うこともない。常に自分が好きな音楽を作ろうとしているだけなんだ。決して質問を否定しているわけじゃないよ。もし僕が作った曲が過去に僕が作った曲を連想させるサウンドだったとしても、僕にはその自覚がない、ということなんだ。もしかしたら、すごく似ているものもあるかもしれない。ただ、僕自身は作っているときにそういうことは一切意識していないんだ。

―では、今作を作るにあたって、「新鮮な気持ちを取り戻した」という感覚はありましたか?

MOBY:今回は本当に自分が好きな音楽を作ることだけに専念して、制作過程を楽しもうと思った。そうやってできた作品を世界に出してみて、みんながどう思うか見てみよう、そういう気持ちで臨んだんだ。何百万枚も売ろうという気持ちもなかったし、大ヒットするようなポップソングを書こうとも思わなかった。情緒に溢れて、自分が興味をそそられる音楽を作りたかっただけなんだ。アルバムの発売にまつわる商業的な結果をまったく気にせず、自分が好きなものを作ることに専念できたことはすごく解放的だったし、そういう意味ではすごく新鮮な気持ちにもなれたよ。

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リリース情報

MOBY<br>
『Innocents』国内2枚組限定生産盤(2CD)
MOBY
『Innocents』国内2枚組限定生産盤(2CD)

2013年10月2日発売
価格:2,400円(税込)
BEAT RECORDS / BRC-397DLX

[DISC1]
1. Everything That Rises
2. A Case For Shame(with Cold Specks)
3. Almost Home(with Damien Jurado)
4. Going Wrong
5. The Perfect Life(with Wayne Coyne)
6. The Last Day(with Skylar Grey)
7. Don't Love Me(with Inyang Bassey)
8. A Long Time
9. Saints
10. Tell Me(with Cold Specks)
11. The Lonely Night(with Mark Lanegan)
12. The Dogs
13. The Perfect Life(with Wayne Coyne)(Moby's M-90 edit) [Bonus Track for Japan]
[DISC2]
1. I Tried
2. Illot Motto
3. Miss Lantern
4. Blindness
5. Everyone Is Gone
6. My Machines

MOBY<br>
『Innocents』国内通常盤(CD)
MOBY
『Innocents』国内通常盤(CD)

2013年10月2日発売
価格:2,100円(税込)
BEAT RECORDS / BRC-397

1. Everything That Rises
2. A Case For Shame(with Cold Specks)
3. Almost Home(with Damien Jurado)
4. Going Wrong
5. The Perfect Life(with Wayne Coyne)
6. The Last Day(with Skylar Grey)
7. Don't Love Me(with Inyang Bassey)
8. A Long Time
9. Saints
10. Tell Me(with Cold Specks)
11. The Lonely Night(with Mark Lanegan)
12. The Dogs
13. The Perfect Life(with Wayne Coyne)(Moby's M-90 edit) [Bonus Track for Japan]

プロフィール

MOBY(もーびー)

世界的大ヒット・アルバム『Play』や続く『18』を筆頭に、2000万枚ものトータル・セールスを記録しているマルチ・ミリオンセラー、モービー。音楽作品、パフォーマンス、ビデオ作品のすべてにおいて、グラミー賞を含む様々な世界的音楽アワードで受賞およびノミネートされている他、マット・デイモン主演の映画『ボーン』シリーズ、マイケル・マンの代表作『ヒート』、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』への楽曲提供、レオナルド・ディカプリオ主演映画『ビーチ』主題曲「Porcelain」の大ヒットなど、映画界からも信頼度は厚い。

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