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世界にまたがる師弟対談 高野寛×トッド・ラングレン

世界にまたがる師弟対談 高野寛×トッド・ラングレン

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人

ウッドストックのスタジオは居心地の良さを大事にしていて、そういう雰囲気を作るのは自分の哲学。(トッド)

―お二人が実際に初めて会われたのは、1990年代の初頭にトッドが高野さんの作品のプロデュースをされたときですよね?

高野:そうなんですけど、その前から僕はトッドのアルバムを擦り切れるまで聴いて、輸入盤の歌詞を全部自分で訳して、コードを取って歌ってましたね。僕はよく「YMOの通信教育を受けて育った」って言ってるんですけど、トッドの『Hermit of Mink Hollow』(1978年)も、僕の教科書だったんです。

―初めて会われたときは、かなり緊張したんじゃないですか?

高野:最初はすごく緊張しましたね。でも、そのときは僕がセカンドアルバムをセルフプロデュースで進めていたときで、馬の蹄みたいな音で始まる曲を流してたら、それに合わせてトッドがカッポカッポカッポと踊りながらブースに入ってきて(笑)。「この人面白い人なんだ」と思って、一気に緊張がほぐれました。

高野寛

―トッドは当時のことをどんなふうに覚えていますか?

トッド:最初のシングルを日本で作ったのが8月で、とにかく暑かった(笑)。アレンジはすでに作られていたので、クリエイティブの面で大きな貢献をしたというよりは、発音をクリアにしたり、歌い方のアドバイスをしたりして、高野さんの頭の中にあるものをきちんと外に出せるような手助けをしたつもりですね。

高野:プロデューサーの役割は、右に行くか左に行くか迷ったときに、「右に行ったほうがいいよ」って方向性を示してくれることなんですよね。実は3枚目のアルバム(1990年発表の『CUE』)のときは制作の時間が全然取れなくて、全部の曲を書きかけの状態でアメリカに行って、最初の1週間は曲を作ってたんです。すごく不安だったし、できるかどうかわからないぐらいの背水の陣だったんですけど、そこで迷ったときにトッドがいつもちゃんと方向を示してくれたからこそ、すごく短期間でも仕上がったんです。

―そういう意味では、クリエイティブ面での貢献も大きかったですか?

高野:いくつかの曲ではコーラスアレンジのアイデアをくれましたし、“ベステンダンク”はもともとギターポップな感じのアレンジだったんですけど、トッドの弾いたキーボードのリフがメインになって、ああいうテイストになったんです。全部の曲ではないにしろ、要所要所で曲のすごく重要な要素をトッドのアイデアから決めたりしています。

トッド:高野さんにはシンセサイザーのプログラマーの方もいらっしゃったので、自分としても普段とは違う状況だったんです。その中で自分ができるのは、常に方向性を示すというよりは、何か言われたときに手助けができることだと考えて、常にそこにいることを心がけていましたね。

高野:あとはすごくカジュアルに接してくれて、ムードを作ってくれました。リゾートスタジオみたいな環境で、スタジオとトッドの家がちょっと離れてるんですけど、家でピザを焼いて持ってきてくれたり(笑)、すごく優しかったんです。

左から:高野寛、トッド・ラングレン

トッド:例えば、アーティストが初めてスタジオでレコーディングする場合、オーディエンスがいない無機質なスタジオの空間で歌うのが難しいと思う人もいるんです。それで、僕のウッドストックのスタジオは居心地の良さを大事にしていて、そういう雰囲気を作るのは自分の哲学でもありますね。

高野:理想的な環境だったので、東京に帰ってきて、ドアの重いスタジオにこもるのがすごく嫌で(笑)。ハイテクで立派なコンソールと、デジタルテープレコーダーがあるんだけど、トッドのところで録ったアナログの音のほうが好きで、ずっと葛藤し続けてましたね。

トッド:僕のスタジオは森の中にあるので、環境自体が都市のスタジオとは全然違うんです。

高野:星がすごく見えるんですよね。

トッド:そう、スタジオ自体が小屋みたいな感じで、都会のスタジオだとあえて作り出さないと出せないアコースティックな雰囲気がそのままあるような、そういうスタジオなんです。

高野:クリスマスケーキの上にチョコレートの小屋が乗ってるじゃないですか? あんな感じ(笑)。

トッド:まさにそうだね(笑)。

―高野さんにとっては、トッドはプロデューサーはどうあるべきか? ということを教えてくれた先生でもあるわけですね。

高野:そうですね。プロデュースの基本として、雰囲気を作ることは心がけてます。あと、当時僕はソロでやることに不安があったんです。一人で全部やってるとアイデアが枯渇しちゃうんじゃないかって心配で、バンドがすごくうらやましかった。それをトッドに話したら、「バンドは大体主なソングライターが1人いて、あとはプレイヤーの場合がほとんどだから、そういう意味ではソロと変わらないよ」と言ってくれて、そういうのにも励まされましたね。

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イベント情報

『高野寛 Live Tour「from 1988 to 2013」〜HT debut 25th Anniversary 1st season〜』

2013年10月12日(土)
会場:徳島県 徳島 第二倉庫アクア・チッタ

2013年10月13日(日)
会場:愛媛県 松山 若草幼稚園

2013年10月14日(月・祝)
会場:香川県 高松 umie

2013年10月25日(金)
会場:岩手県 盛岡 カフェ・ポルトボヌール

2013年10月26日(土)
会場:宮城県 仙台 SENDAI KOFFEE CO.

2013年10月27日(日)
会場:栃木県 黒磯 SHOZO 音楽室

2013年11月2日(土)
会場:奈良県 奈良 法徳寺

2013年11月3日(日)
会場:鳥取県 鳥取 カフェ・ダール ミュゼ

2013年11月4日(月・祝)
会場:島根県 松江 清光院下ギャラリー

2013年11月9日(土)
会場:東京都 下北沢 mona records

2013年11月14日(木)
会場:福岡県 福岡 café teco

2013年11月16日(土)
会場:大分県 日田 リベルテ

2013年11月17日(日)
会場:鹿児島県 鹿児島 GOOD NEIGHBORS

2013年11月28日(木)
会場:愛知県 名古屋 TOKUZO

2013年11月30日(土)
会場:兵庫県 姫路 ハルモニア

2013年12月1日(日)
会場:広島県 尾道 やまねこカフェ

2013年12月13日(金)
会場:岡山県 岡山 城下公会堂

2013年12月14日(土)
会場:大阪府 大阪 中之島デザインミュージアム

2013年12月15日(日)
会場:静岡県 浜松 Esquerita68

2013年12月20日(金)
会場:宮崎県 日向 nap cafe

2013年12月21日(土)
会場:熊本県 熊本 長崎書店

2013年12月22日(日)
会場:福岡県 福岡 TAGSTA

『高野寛 Live「2014 to next」〜25th Anniversary 1st season : FINAL〜』

2014日1月19日(日)  OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京都 恵比寿ザ・ガーデンルーム
出演:高野寛(宮川剛[Dr,Per]、鈴木正人[Ba,Key]
料金:5,250円

リリース情報

高野寛<br>
『TOKIO COVERS』(CD)
高野寛
『TOKIO COVERS』(CD)

2013年10月9日発売
価格:3,000円(税込)
SUNBURST / SBST-002

1. Sunshine Superman / ドノヴァン
2. 音楽 / YMO
3. THE DRIFTER / ハーパース・ビザール
4. Revolution / ザ・ビートルズ
5. わたしのにゃんこ / 矢野顕子
6. FAR EAST MAN / ジョージ・ハリスン
7. (I Can't Get No)Satisfaction / ローリング・ストーンズ
8. CUE / YMO
9. Southern jukebox music / ペンギン・カフェ・オーケストラ
10. ワンダーフォーゲル / くるり
11. 終りの季節 / 細野晴臣
12. International Feel / トッド・ラングレン
13. いとこ同士 / ムーンライダーズ
14. Groove Is In / ザ・ビートルズ
16. At last I Am free / シック

高野寛<br>
『tide』(CD)
高野寛
『tide』(CD)

2013年10月9日発売
価格:3,000円(税込)
SUNBURST / SBST-003

1. 新しいカメラ / my brand-new camera
2. フルーツみたいな月の夜に / under the fruity moon
3. 黒焦げ / burn out
4. オレンジ・ジュース・ブルース / orange juice blues
5. Phenix (翼なき僕達に)
6. 皆既日食 / total eclipse
7. 暮れてゆく空 / at dusk
8. Everlasting Blue
9. No word, No think(メディスン・ソング)
10. Bye Bye Television(ボーナストラック)
11. 偽りの中で(ボーナストラック)

高野寛<br>
『Ride on Tide』(2CD)
高野寛
『Ride on Tide』(2CD)

2013年10月9日発売
価格:3,000円(税込)
SUNBURST / SBST-004

[DISC1]
『smooth side』
1. 相変わらずさ(1999.7の月編)
2. 夢の中で会えるでしょう
3. 二十歳の恋
4. フルーツみたいな月の夜に
5. オレンジ・ジュース・ブルース
6. Wailing wall
7. 皆既日食
8. Phenix
[DISC2]
『dynamic side』
1. 夜の海を走って月を見た
2. Bye Bye Television
3. AMBIENT1/1〜 Another Proteus
4. 何も知らないで生まれて
5. 黒焦げ
6. All over, Starting over
7. ベステンダンク
8. 500マイル
9. On & On

トッド・ラングレン<br>
『STATE』国内盤(CD)
トッド・ラングレン
『STATE』国内盤(CD)

2013年5月29日発売
価格:2,580円(税込)
Warner Music Japan / WPCR-15022

1. イマジネーション
2. シリアス
3. イン・マイ・マウス
4. ピング・ミー
5. アングリー・バード
6. スモーク
7. コライド‐ア‐スコープ
8. サムシング・フロム・ナッシング
9. パーティー・リカー
10. サー・リアリティ
11. メドレー:キャン・ウィ・スティル・ビー・フレンズ/アイ・ソー・ザ・ライト/ハロー・イッツ・ミー(ボーナストラック)

プロフィール

高野寛(たかの ひろし)

1988年、高橋幸宏プロデュースによるシングル「See You Again」でデビュー。現在までにベスト / ライブ盤を含む16枚のアルバムをリリース。代表曲は、「虹の都へ」「ベステンダンク」(共にトッド・ラングレンのプロデュース)、「夢の中で会えるでしょう」(坂本龍一プロデュース)など。ソロワークのほか、ギタリスト / プロデューサーとしても多くのプロジェクトに参加。ナタリー・ワイズ、GANGA ZUMBA(ガンガ・ズンバ)、pupa(ピューパ)等、バンドでの活動も精力的に行う。最新オリジナルアルバムは2011年リリースの「Kameleon pop(カメレオン・ポップ)」。デビュー以来、音楽への真摯な姿勢と非凡なポップセンスは、多くの音楽ファンに支持されている。

トッド・ラングレン

1948年アメリカ、ペンシルベニア州出身。1967年、自身のバンドNAZZを結成し、ソロとしてはアルバム『RUNT』でデビュー。その後、ヒット曲「I Saw The Light」を収録した名盤『Something/Anything?』(1972年)や名ライヴ・アルバム『Back To The Bars』(1978年)などをリリース。美しいメロディーを編みだすソロ・アーティストとしてだけではなく、バンドUTOPIAのメンバーとしても活躍。また、Grand Funk Railroad、Hall & Oatesなどのプロデューサーとしても卓越した才能を発揮。1980年代後半から1990年前半にかけてはレピッシュや高野寛などのプロデュースを手掛けるなど、日本における人気と実績はかなりのもの。現在までに23枚のソロ・アルバムを発表し、来日公演も幾度となく行っている。

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