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「編集」ってなんだろう? 赤羽卓美インタビュー

「編集」ってなんだろう? 赤羽卓美インタビュー

インタビュー・テキスト
さやわか
撮影:西田香織
2013/10/09

過去に読んだものを全部覚える必要はないと思うんです。「この情報はここにある」っていうアクセス先さえちゃんと覚えておけば、一回忘れちゃっていい。

―松岡正剛さんは『千夜千冊』でも有名なとおり、尋常ではないほどの読書家としても有名ですが、赤羽さんもやはり、読書量は多いのですか?

赤羽:今はそれなりに読んでいますが、高校生くらいの頃、今まで自分が読んだ本ってどのくらいの量があるんだろうと思った時期があるんです。それで1回読書ログを作ろうと思って、振り返ってみたんですよ。それで、意外に読んでないことに気がついて(笑)。

―読者の原体験みたいなものを探ってみたということですね。それは面白そうですね。

赤羽:やってみると面白いですよ。実はイシス編集学校でも「読書系統樹を作ろう」っていう編集稽古があります。

―そうやって自分に対する振り返りをしつつ、自分自身にまつわる膨大なデータも、編集という技能でまとめあげるわけですね。

赤羽:そうです。自分で使える情報を整理する。僕の場合は、まあ松岡さんも同じだと思うんですけど、過去に読んだものを全部覚える必要はないと思うんです。「この情報はここにある」っていうアクセス先さえちゃんと覚えておけば、一回忘れちゃっていい。

赤羽卓美

―「情報の編集」についてと言われると、なんだか博覧強記的なイメージがありますけど、実はそういうことではないんですね。それってむしろ、インターネットの仕組みみたいな感じにも似ていますね。検索エンジンで情報を検索して、任意の情報を取り出すという。

赤羽:松岡さんはコンピューターをほとんど使わないんですけど、思考がハイパーリンク状態というか、時空間化、オブジェクト化しているように思います。覚えられた知識ではなく、知の構造がそのまま存在しているという感じなんです。

―最近は「ビッグデータ」みたいな言葉も流行っていますけど、膨大な情報があるからこそ、どういう風にインデックス化して、取り出して、どう読むのかという、まさに編集の考え方がキモになってくるのかもしれませんね。

赤羽:ビッグデータですごく心配なのは、結局いかようにでも意味が生成できるということですよね。データを利用すれば統計的な詐欺がいくらでもできる。それって編集の負の側面なので(笑)。編集の力っていうのは確かに大きいんだけど、やっぱりそれがマイナスに働くときもある。だからちゃんと理解した方がいいのは、情報編集に対するリテラシーをもっと高めるべきだということですよね。

―情報は取り扱い方によって、どんな悪いことにも使えますからね。テレビや新聞が言っていることを鵜呑みにしないという意味でリテラシーみたいな言葉が使われることは増えてきましたけど、結局そこで何が問われているかというと、実はどのような編集がなされているかという話だったりしますしね。

赤羽:そうなんですよ。ドラマを観たときにどこがポイントになるかっていうさっきの話も、やっぱりドラマを楽しみながらも何が行われているのかに敏感に反応しているわけです。編集学校で学んだことによって、社会をわりと意味的に、複眼的に見ることができるようになる。そういう視点を持っていると、いろんなことを面白がれるようにもなると思います。

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講座情報

『イシス編集学校 秋講座 第32期「守」基本コース』

2013年11月4日(月)〜3月2日(日)
料金:一般84,000円 学生割引73,500円 再受講割引73,500円

プロフィール

赤羽卓美(あかばね たくみ)

1965年長野県生まれ。ゲームクリエイター、フォトグラファー、ゲームクリエイター、イシス編集学校師範。フェティッシュなオブジェクトの撮影から、トレーディングカードゲームの開発ディレクションを生業に、編集工学の研鑽に努める。これまでに関わった作品は『ポケットモンスターTCG』、『コロッサス・オーダー TCG』、『夜想』『hippie coco's planet』など。イシス編集学校では現在「物語講座」の編集コーチリーダーを担当。

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