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「編集」ってなんだろう? 赤羽卓美インタビュー

「編集」ってなんだろう? 赤羽卓美インタビュー

インタビュー・テキスト
さやわか
撮影:西田香織
2013/10/09

既成概念や自分中心的なものの見方をやめて、突き放して考える。

―赤羽さんはゲームクリエイターとして活躍されていますが、そこに至るまで、かなり色んなことをやっていらっしゃいますよね? もともとカメラマンなどもされていたとか。

赤羽:特殊な物撮をしたりとか、写真の仕事はけっこうやってましたね。でも、カメラマンというより、デザイナーとか編集者とか、全部を自分でやりたいっていう風に考えていたんです。請負いでライターもやったり、思想系のミニコミとかも結構作ってました。

―幅広いですね。

赤羽:ただ結局、あまりにもお金にならなくて(笑)。全部自分でやりたいと思っていたけど、1人で抱えることの限界を感じていたんです。そのタイミングでたまたま友達に声をかけられて、糸井重里さんが代表をしていたエイプっていうゲームを作る会社に入りました。そこで『MOTHER2』の開発に関わったんです。

赤羽卓美

―『MOTHER2』は、名作として今でも評価の高いロールプレイングゲームですよね。その後には『ポケモンカードゲーム』を開発されて大ヒットしたわけですが、そういうものを作るときに、松岡さんの編集理論は応用されていたんですか?

赤羽:ちょうどその頃、松岡さんが「情報を編集する」という言い方で新しい仕事を始められていたんです。それを見て「あ、そうか。この仕事も編集的に捉えればいいんだ」という視点で作ったのが、『ポケモンカードゲーム』でした。当時ポケモンはゲームボーイの大人気ソフトだったわけですが、テレビゲームの中の世界観を、カードとして現実の世界で再編集したんです。

―『ポケモンカードゲーム』は、日本初のトレーディングカードゲームと言われていますが、あれ自体はカードを集めて闘って、強さを競い合うゲームです。おそらく人はそこに「物語性」のようなものは感じていませんよね。

赤羽:そうですね(笑)。あれは、ゲームボーイのソフトとして発売された『ポケットモンスター』の世界観を一度断片化した上で、自分だけのポケモン世界を再構築するためのツールとしてカードに差し替えるっていうプロセスを試したんです。ゲームをするにあたって、たくさんのカードをデッキという1つの形に再編集するんですけど、それが自分だけの物語=世界を作ることになるんですね。

―つまり、それぞれのプレイヤーが、『ポケットモンスター』という物語を「作る=再編集」するところにも面白さを感じていて、それがヒットに繋がった理由でもある、と。

赤羽:そうだと思います。もともとゲームボーイ版『ポケットモンスター』は、モンスターを集めて育てて闘うというロールプレイングゲームだったんですが、その構造をあえてバラしてみたんですね。編集を学ぶということは、考え方を学ぶということなんです。特に、既成概念や自分中心的なものの見方をやめて、突き放して考えるというのは、編集学校の教えの中ですごく大事なもののような気がします。やっぱり俯瞰的に見ることで、ものの見え方が全く見え方が変わってくるんですよね。

―『あまちゃん』とか『半沢直樹』みたいな人気ドラマを観ていても、その構造を俯瞰的に見てしまうという話をされていましたね。

赤羽:もちろん楽しくは観てるんですけどね(笑)。でも、たとえば『あまちゃん』なんかでいうと、テレビドラマって時間軸を持ったメディアだから、音楽がものすごい影響力を持つ可能性のある表現だとも思うんです。そういう意味では、僕はあのドラマの一番の根幹って大友良英さんの音楽だと思っているんですよ。大友さんの音楽が作り出している世界観が、目には見えないけど一番大きく影響してるんじゃないかなって。逆に言うと、『半沢直樹』はあえて主題歌を作らなかったんだっていう見方もできますしね。

赤羽卓美

―それは面白いですね。たとえばそうやって、テレビドラマの物語より音楽に注目するようなことが、「俯瞰的に見る」ということで可能になるわけですよね。それこそ『あまちゃん』みたいな作品って、一体なぜこんなに面白いんだろうとか、あるいはなぜこんなに流行っているんだろうとか、あんまり振り返って考える機会がない人がほとんどでしょうしね。

赤羽:そうですね。特にテレビドラマは脚本について語られがちですけど、『あまちゃん』のあの音楽性なんかは、なかなか言葉にしきれないものですし。

―なるほど。俯瞰することによって、言葉にできない部分がどこなのかもわかる。そっちのほうが重要なことかもしれませんね。

赤羽:そうなんですよ。「『あまちゃん』の物語は神話の構造を用いている」とか言って分析してるような気になっている人もいますが、そんなことは言われなくたってみんなわかってる。音楽に注目してみると、今年は『泣くな、はらちゃん』というドラマがあって、あれも音楽が重要な位置を占めている作品でした。そういった伏線があって、『あまちゃん』で一気に爆発したんじゃないかなと思うんですよ。

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講座情報

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料金:一般84,000円 学生割引73,500円 再受講割引73,500円

プロフィール

赤羽卓美(あかばね たくみ)

1965年長野県生まれ。ゲームクリエイター、フォトグラファー、ゲームクリエイター、イシス編集学校師範。フェティッシュなオブジェクトの撮影から、トレーディングカードゲームの開発ディレクションを生業に、編集工学の研鑽に努める。これまでに関わった作品は『ポケットモンスターTCG』、『コロッサス・オーダー TCG』、『夜想』『hippie coco's planet』など。イシス編集学校では現在「物語講座」の編集コーチリーダーを担当。

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