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人生をサバイブする旅人の方法論 DEAN FUJIOKAインタビュー

人生をサバイブする旅人の方法論 DEAN FUJIOKAインタビュー

インタビュー・テキスト
森直人
撮影:西田香織

自分が続けていく行動の積み重ねのうちに、「好き」とか「やりたい」以上につながる感覚を持てるかどうか。

―今回、主題歌(“My Dimension”)も担当されているのはどういう経緯があったんでしょう?

DEAN:音楽に関しては、2008年くらいからインドネシアのジャカルタで制作を続けているんです。DJ Sumoというアレンジャーと二人でアルバムを完成させたんですけど、その中に今回の“My Dimension”もあって。だからこの曲は、2009年の段階で形になっていました。

―そうなんですね。

DEAN:今回、主題歌が最後の最後まで決まらなくて、結局、“My Dimension”がこの映画に合うんじゃないかという話に転がっていきました。この曲に関しては、僕の自己紹介みたいなものなんですけど、確かに映画にハメてみて世界観と合っているなと思えたので。

―曲作りを始められたきっかけはなんなんですか?

DEAN:母親がピアノ教師で、僕の最初の夢は音楽家になることだったんです。子どもの頃からずっと音楽には親しんできたんですが、仕事という面ではなかなか縁がなくて。結果的に俳優の仕事が生活の糧であり、自分の表現手段になっていったんですが、そんな折、今年6月に日本でも公開になった『夢の向こう側〜ROAD LESS TRAVELED〜』というロックバンドの映画を2008年に台湾で撮ったんですよ。役者としてギタリストの役を演じてみた中で、すごく込み上げてくるものがあったんですね。それで、ずいぶんと俳優の仕事もやったし、映画もテレビドラマも1回ストップして、本格的に音楽をやり始めたんです。もの作りのうえで自分のステートメントをはっきりさせたいと思って。

DEAN FUJIOKA

―その流れでお聞きしたいんですけど、DEANさんはまずは日本の高校を卒業後、アメリカに留学されるんですよね。

DEAN:はい。子どものときから、コンピューター関係の仕事をしている父親の関係で自宅に海外の人が来ることが多かったし、お土産で買ってくるレーザーディスクとか、ビデオとか、本や音楽がたくさん身近にあったんですね。その家庭環境の影響もあって、シアトルの大学に進みました。そしてITを専攻して。

―留学先にアメリカを選んだのは?

DEAN:僕がまだ幼かった1980年代って、アメリカがすごい輝いてた時代だと思うんですよ。当時の子どもにとっては「外国=アメリカ」だった。いま考えると、おバカなんですけどね(笑)。でもあの時代、日本に育った子どもなら、素朴にアメリカがスーパーヒーローに見えたと思うんです。だから、とりあえず一度行ってみようと思って、結局シアトルに5年間住みました。そのあとアジアを中心に各国への旅に出かけるんですが。

―その転換点は何だったんでしょう?

DEAN:いろんなサインはあったんですけど、シアトル在住中に9.11が起こって、あれがハッキリ1つの切り替わりになっていますね。自分が移民だから、僕とアメリカとの関係の本質がぼんやりとわかってきた。じゃあ、別の社会体制の国にはどういう人たちがいるんだろう? と思って。大学のクラスにはいろんな国の留学生がいたのですが、その人たちのリアルな世界を見たくて、中国やロシア、タイ、ベトナムなどを廻っていったんです。

―そんな中、まずは香港でモデルや俳優の仕事に就かれたわけですよね。

DEAN:最初から香港に移住しようとは考えてなかったですね。「バックパッカー以上、移住未満」のようなテンションで、香港のワンチャイに流れ着いたときに、たまたま『オープンマイク』という音楽のイベントがあって。そこに飛び入り参加してフリースタイルのパフォーマンスをやったんです。アメリカ西海岸の男の子は完全にヒップホップが生活に染みついていて、僕もその環境の中にしばらくいましたからね。そうしたら、偶然フロアに香港のファッション雑誌の人がいて、話しかけられて。「モデルやってみないか」と。

DEAN FUJIOKA

DEAN FUJIOKA

―すごい話ですね! 旅先の香港でパフォーマンスしている最中にスカウトされたと。

DEAN:はい。ちなみにその当時は、ゲストハウスにインド人の宝石商みたいな胡散臭い人たちと一緒に住んでました(笑)。ずっと貧乏旅行をしていたから、お金が必要だったし。それでまず雑誌のモデルをやって、スタジオのつながりでショーのモデルをやったり、広告に出たりしているうちに、自分で家を借りられるようになるじゃないですか。すると今度は家賃を払い続けていかなくちゃならない。だからモデルと並行して、グラフィックデザインやウェブデザインの仕事もやってました。食べるためにいろいろなことをやって、最終的には俳優が一番形になっていったんです。

―それは、ご自身も俳優業に興味があったからなんでしょうか?

DEAN:いえ、もともとモデルや俳優になりたいと思ったことは一度もないんです。最初は撮られるのも、お芝居するのも恥ずかしかったし(笑)。

―そうなんですね。コンピューター系のデザインの仕事もされていたということは、大学でITを学ばれたことも役に立っていますよね。

DEAN:アートやソーシャルカルチャーにはすごく興味があって。ITが先なのか、新しいアートの作り方や見せ方が先なのかわからないんですけど、例えば、1970年代にはフォークミュージックが若者のすがる表現手段だったとしたら、今のサンプラーを使ったハウスやヒップホップ、エレクトロニックがあの時代のフォークミュージックみたいなものだと思うんですよ。家で手軽に使える楽器として、ギターの代わりにラップトップがあるっていう。時代によって使う道具と広がるジャンルが完全にリンクしている。

―表現においてはハードとソフトの関係が同時に進行していますものね。

DEAN:あと僕が大学にいた当時、録音や編集にコンピューターを使う人はいたけど、楽器として使う人はまだそんなにいなかったと思うんですよ。でもシアトルって雨ばっかり降ってるから意外とオタクの街で(笑)、家やガレージでラップトップの音楽バトルとかやってるんですよ。2000年頃の段階から。そのラップトップバトルに、ラッパーやダンサーがカブせていくパーティーシーンがあって、それにものすごく衝撃を受けたんですね。

―そうやって行く先々のものをスポンジのように吸収されて、糧にしてきたんですね。

DEAN:「やらなきゃ生きていけない」っていうことが原動力でしたね。生活していくためにはお金が必要だし、そのためにキャリアアップしなくちゃどうしようもない。もちろん言葉も覚えなきゃいけない。そうやって、そのつど必要な技術を身につけていった。

―必要に迫られて身につけた技術のおかげで、活動できる範囲が広がっていったのは面白いですね。

DEAN:今は「ノマド」って言葉を世間でも普通に使うようになりましたけど、僕の場合は当時、ITのノウハウを使いこなせないと移動しながら仕事できないんじゃないか、ってことは直感で察していました。ちょっとした疑問や、風向きみたいなものを、そのつど自分の中で咀嚼して、力にしていく。すると、また違うステージが待っていると思うんです。

―全部「旅」ですね。

DEAN:そうですね(笑)。だから僕の場合、「こうなりたい」っていう目標や理想が先にあるんじゃなくて、「こういう風になりたくない」っていう想いの方が強いと思うんですよ。それに、やっぱり1回しかない人生の中で、自分がどこまで何をできるか知りたくないですか? どの回路からでもいいから、自分が続けていく行動の積み重ねのうちに、「好き」とか「やりたい」以上につながる感覚を持てるかどうか。そういう基準で、自分の道先を決めてきた気がします。

―「何かをめざす」のではなく、必然性が積み重なっていく。それは表現者として、むしろ強度のあるものですよね。

DEAN:だと嬉しいですね。

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リリース情報

DEAN FUJIOKA
『My Dimension』

2013年11月6日からiTunes Storeでリリース

作品情報

『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』

2013年11月6日(水)からネット配信、11月9日(土)から一部109シネマズ、新宿ミラノで公開
監督:ディーン・フジオカ
原作:市橋達也『逮捕されるまで 〜空白の2年7ヶ月の記録〜』(幻冬舎)
エンディングテーマ:DEAN FUJIOKA“My Dimension”
出演:ディーン・フジオカ
配給:セディックインターナショナル 電通

プロフィール

DEAN FUJIOKA(でぃーん ふじおか)

日本生まれ。父親から語学、母親から音楽を学ぶ。高校卒業後、アメリカへ渡り多文化が混じり合う環境で感性を大きく刺激される。カレッジ卒業後アジアのさまざまな国々を旅をし、多様な人種、文化、言語に触れながらそれらを詩や写真として残す。旅の中で香港と出会いモデルとして活動を開始する。その活動が注目を浴び、映画「八月的故事」の主演に抜擢され俳優としてのキャリアがスタートする。その後活動拠点を香港から台湾へ移す。映画、TVドラマ、PV、CMなどでの演技が評価を受け中華圏エンターテイメントの新星として旋風を起こす。

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