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気軽に政治を楽しもう 津田大介、立薗理彦、前田豊インタビュー

気軽に政治を楽しもう 津田大介、立薗理彦、前田豊インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
インタビュー撮影:西田香織

日本におけるソーシャルメディア黎明期。記者発表やシンポジウムの内容をTwitterでリアルタイム実況するなど、ネットを使った新たなジャーナリズムの伝道師として登場し、今もっともその動向が注目されるジャーナリストの一人、津田大介。彼が2012年末にスタートしたウェブサイト「ゼゼヒヒ」は、さまざまな質問をユーザーに投げかけ、「Yes」「No」などの2択で回答を募るインターネット国民投票サイトだ。

『東京オリンピック』開催の是非や、スナック菓子「きのこの山」「たけのこの里」の人気競争など、硬派な時事問題から身近なトピックスまで幅広く用意された質問。サイト上ではそれらの賛否の比率、回答理由、意見の推移などを簡単に見ることができる。ビッグデータと呼ばれるネット上の多様な情報を集積し、現在の世論を視覚化するデータジャーナリズムの一つの体現とも言える「ゼゼヒヒ」は、サイト公開以来大きな注目を集め、『第17回文化庁メディア芸術祭』のエンターテインメント部門新人賞を受賞した。

常々、「新しい政治メディアを作りたい」と発言してきた津田にとって、「ゼゼヒヒ」はその理想型の1つなのだろうか。自民党の圧倒的勝利で終わった参議院選、『東京オリンピック』の開催決定、特定秘密保護法の可決など、さまざまな出来事に日本が揺れた2013年を経験した「ゼゼヒヒ」の現在と今後を、津田大介、サイト設計を担当した立薗理彦、デザインを手がけた前田豊の3名に聞いた。

Twitterで気軽に自己表明するような空気感とか、そのくらい敷居の低い、意見を表明するプラットフォームが欲しかったんです。(津田)

―『第17回文化庁メディア芸術祭』では、荒木飛呂彦さん(マンガ部門大賞)や、庵野秀明さん(アニメーション部門優秀賞)など、大物アーティストの受賞が話題になりましたが、その中で津田さんも、エンターテインメント部門で新人賞を受賞されました。まずはおめでとうございます。

津田:ありがとうございます。2013年は「ヤング・グローバル・リーダー」(世界経済フォーラムが認定する、40歳以下の各専門分野のリーダー的人物)にも選ばれて。ヤングでもないし、グローバルでもないぞって思っていたら、まさかの年の瀬に『メディア芸術祭』の新人賞(笑)。

―津田さんが新人賞というのには、びっくりしました(笑)。エンターテインメント部門審査委員の宇川直宏さんは、「メディア・アクティビストのメディアアート・デビュー作!」と講評で激賞されていましたね。

津田:たしかに設問をして、ユーザーに「Yes」「No」で、思考や行為を促すという点では、メディアアートのインタラクティブ性に通じるところがあるのかもしれません。実は『グッドデザイン賞』への応募も考えていたのですが、最終的には『メディア芸術祭』だけに応募したんですよ。

津田大介
津田大介

―その理由は?

津田:質問内容をユーザーに委ねずに編集部内で考えていたり、選択肢が「Yes」「No」の2択に限定されていたり、これだけコンセプトがはっきりしているウェブサイトが応募したらどうなるんだろう? という興味はありました。あと、同じウェブメディアである「DOMMUNE」が、『第14回文化庁メディア芸術祭』審査委員会推薦作品に選ばれていたのが個人的には大きかったです。「DOMMUNE」の受賞は、宇川さんと同じようにウェブ上での情報発信に携わってきた僕にとっても誇らしく思えた出来事でした。それが『文化庁メディア芸術祭』への応募を選んだ理由の1つだと思います。

―以前、「ゼゼヒヒ」が立ち上がった頃のインタビューで津田さんは、本格的な政治ウェブメディアに繋がるブリッジのようなものとして、「ゼゼヒヒ」を作られたとお話されていましたね。

津田:そうです。同時進行で「ポリタス」という、政治家のこれまでの発言とその話題度を可視化したウェブメディアも始めているんですけど、いずれもネットの特性を生かした政治メディア……ユーザーが政治の情報にアクセスし、何かアクションを起こせるようなものを作りたい、という思いが最初にあったんですね。たとえばネットを使って政治や社会を変えていく例で言えば、アメリカだと「change.org」(ネット上で署名を集めるサービス)のような新しい潮流が来ているのですが、日本でも同じような動向を作り出したくて。

―日本では「ザ・インタビューズ」のような意見交換サイトや、「Yahoo!ニュース」の意識調査などのアンケートサービスがありますが、それらと「ゼゼヒヒ」の違いというのは意識していましたか?

津田:もちろん参考にしましたが、ユーザーが参加するという意味では「診断メーカー」を、構想段階でモデルにしていました。ちょっとした遊び感覚で、みんな自分の名前を入力しますよね。ああいうTwitterで気軽に日常的に自己を表明するような空気感とか、そのくらい敷居の低い、意見を表明するプラットフォームが欲しかったんです。

―たしかに「診断メーカー」って、ついついやっちゃいますよね。

津田:遊びの感覚を維持しつつ、そこにサイト運営側がユーザーに「お題」を投げかける仕組みがあれば、政治的なサイトであっても多くの民意が見えてくると思ったんです。普通に生活していて、社会とか政治の問題について意見を表明することってほとんどないですよね。でも、何かしらの問いかけがあり、「Yes」「No」で聞かれたとしたら回答するハードルも低いし、それが問題について考えてみるきっかけにもなる。ただ、それだけだと単なる多数決にしかならないので、そう答えた理由をさらに尋ねてみる。このプロセスを通すことで、いろんな人たちの意見や考えを可視化できると考えたんです。当たり前ですけど、作っているときは「アート」っていう感覚で作っていたわけではありませんでした。

―ただ、直接的に政治問題を扱う作品がエンターテインメント部門を受賞した例は初めてのことです。その意味でも、この受賞は時代を反映しているように感じました。

津田:サイトの設計を担当した立薗とも話していたんですが、最近アートとジャーナリズムの距離が近くなっている気がします。たとえば今回、アート部門優秀賞に選ばれたウェブサイト「Dronestagram」などがありますよね。

―戦争や暗殺計画などで使われる無人航空機(drone)に攻撃された風景の写真を、SNS上に投稿していくというウェブプロジェクトですね。

津田:アート作品としてすごく優れているけれど、あれは同時に優れたジャーナリズムでもあると思います。多種多様なオープンデータを集めて可視化していくデータジャーナリズムという手法がありますが、「Dronestagram」はインタラクティブなアート作品でありながら、同様の手法を用いて社会に問題を投げかけている。先鋭的なデータジャーナリズムの一例とも言えますよね。

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イベント情報

『第17回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』

2014年2月5日(水)〜2月16日(日)
会場:東京都 六本木 国立新美術館(10:00〜18:00 金曜は20:00まで ※2月12日(水)休館)、東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックス
料金:無料

受賞作品

『第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品』

アート部門
大賞
『crt mgn』Carsten NICOLAI
優秀賞
『   を超える為の余白』三原聡一郎
『Dronestagram』James BRIDLE
『Situation Rooms』Rimini Protokoll
『The Big Atlas of LA Pools』Benedikt GROSS
新人賞
『Learn to be a Machine | DistantObject #1』LAU Hochi
『Maquila Region 4』Amor MUNOZ
『The SKOR Codex』La Societe Anonyme

エンターテインメント部門
大賞
『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』菅野薫、保持壮太郎、大来優、キリーロバ・ナージャ、米澤香子、関根光才、澤井妙治、真鍋大度
優秀賞
『スポーツタイムマシン』犬飼博士、安藤僚子
『プラモデルによる空想具現化』池内啓人
『燃える仏像人間』宇治茶
『トラヴィス「ムーヴィング」』Tom WRIGGLESWORTH、Matt ROBINSON
新人賞
『ゼゼヒヒ』津田大介
『やけのはら「RELAXIN'」』最後の手段(有坂亜由夢、おいたまい、コハタレン)
『TorqueL prototype 2013.03 @ E3』なんも(柳原隆幸)

アニメーション部門
大賞
『はちみつ色のユン』ユン、ローラン・ボアロー
優秀賞
『有頂天家族』吉原正行
『ゴールデンタイム』稲葉卓也
『サカサマのパテマ』吉浦康裕
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』庵野秀明
新人賞
『ようこそぼくです選』姫田真武
『Airy Me』久野遥子
『WHITE THE CROW WEEPS ―カラスの涙―』鋤柄真希子、松村康平

マンガ部門
大賞
『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8―』荒木飛呂彦
優秀賞
『昭和元禄落語心中』雲田はるこ
『それでも町は廻っている』石黒正数
『ちいさこべえ』望月ミネタロウ、原作:山本周五郎
『ひきだしにテラリウム』九井諒子
新人賞
『アリスと蔵六』今井哲也
『塩素の味』バスティアン・ヴィヴェス、訳:原正人
『夏休みの町』町田洋

プロフィール

津田大介(つだ だいすけ)

ジャーナリスト / メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。大阪経済大学客員教授。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)ほか。

立薗理彦(たちぞの まさひこ)

エンジニア・UI/UXデザイナー。1972年東京生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。『ナタリー』『Twitter社会論 for iOS』『ゼゼヒヒ』『ポリタス』『音ログ』『Beautiful Days』などのウェブサイトやアプリを開発。

前田豊(まえだ ゆたか)

1972年大阪生まれ。氏デザイン株式会社代表。グラフィック、広告、エディトリアル、VI、Web、サイン、空間、パッケージなど、様々な分野のデザインを横断的に行っている。2012年サインデザイン大賞・経済産業大臣賞受賞。

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