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気軽に政治を楽しもう 津田大介、立薗理彦、前田豊インタビュー

気軽に政治を楽しもう 津田大介、立薗理彦、前田豊インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
インタビュー撮影:西田香織

「どちらでもない」って答えは、すごく考えて選んだように見えるけど前に進まないよね、って話があって。(立薗)

―津田さんとは、「ナタリー」を一緒に立ち上げられた盟友でもある立薗さんからもお話をお伺いしたいのですが、「ゼゼヒヒ」の立ち上げの際に、津田さんとはどんな話をされていたんですか?

立薗:「ゼゼヒヒ」は、そもそも今のような「Yes」「No」の2択ありきのサービスを作ろうとして始まったわけではないんです。社会問題に対して、たとえば「診断メーカー」のように、みんなが気楽に答えられるアンケートがあったらいいよね、というのが出発点。一般的なアンケートでは「Yes」「No」「どちらでもない」の3択が多いのですが、それだと「どちらでもない」を選ぶ人が多くて、それ以上の議論が深まらないんです。「どちらでもない」って、なんかすごく考えて選んだような答えに見えるけど、それだと前に進まないよね、って話があって。

立薗理彦
立薗理彦

―確かにそうですね。そこで話が止まってしまう。

立薗:でも、津田が最初から強く言っていたのは、みんなが「そうだよね、わかるわかる!」と共感して終わるんじゃなくて、その後のアクションに繋がるメディアにしたい、ということだったんです。社会に対する実際的な効力は未知数だとしても、どこかで実際に政策決定や立案に影響を与えるような回路を開いておきたかった。そんなことを考えながら模索しているうちに、「選べないような究極の質問をするサイト」という方向性が見えてきました。それで最終的に2択形式を採用し、同時にその理由を尋ねるという構造になったわけです。

津田:「Yes」「No」に絞った設問に答えることって、すごく政治的だと思うんです。政治では結果責任が求められ、「どちらでもない、保留だ」という態度で済ますことが許されない。もちろん「継続審議」という選択肢もあるけれど、基本的にはさまざまな条件の中で、「Yes」か「No」を選択していくサービスが政治だと言える。「ゼゼヒヒ」を始めてみてわかったのは、2択の答えを求めるということは、ユーザーに擬似的な政治家体験を提供するものでもあるということでした。

一番初めの合宿のときに津田さんが言っていたのは、「女子高生やおばちゃんをキャッチしたい」でした。(前田)

―擬似的な体験という意味では、先ほど津田さんがおっしゃっていたようにインタラクティブなアート作品やゲームを思わせますね。サイト自体のデザインも親しみやすいですし。

立薗:先ほど『グッドデザイン賞』への応募も考えていたという話があったように、デザインには最初からすごくこだわっていました。いわゆる政治系のウェブメディアって、見た目からいかにも堅くて、面白くなさそうじゃないですか(笑)。でも僕らはエンタメ側から来た人間なので、見た目には絶対こだわりたいし、何よりも政治と人との距離を縮めたかった。そこで、以前から津田とも親交のあった前田さんにデザインをお願いすることになったんです。

「ゼゼヒヒ」より ©neo-logue inc.
「ゼゼヒヒ」より ©neo-logue inc.

津田:多くの人に使ってもらえるような、親しみやすい政治メディアを作ろうと思ったら、ちゃんとユーザーインターフェースを考えたデザインが必要になる……。そんなことを悶々と考えていた2012年春のある夜更けに、「自分はデザイナーを探す旅に出る」ってツイートしたんですよ(笑)。そうしたら前田さんが深夜にも関わらず速攻で反応してくださって。

前田:僕の本業は紙媒体のデザインなのですが、10年以上前からウェブの仕事も少しずつやっていました。ただ、ウェブサイト全体を本格的にデザインするという例はそれほど多くなかったので、僕自身の挑戦としても面白かったですし、津田さんが掲げる「新しい政治メディア」というビジョンにも共感を持てた。なので、さっそくお会いして、すぐさまブレスト合宿にも参加して(笑)。

―熱いですね!

前田:一番初めの合宿のときに津田さんが言っていたのは、「女子高生やおばちゃんをキャッチしたい」でしたね。

津田:いやー、現状あんまりキャッチできていないですけどね(笑)。

前田:政治メディアとして、なかなか実現が難しい部分ではあると思うのですが、でもデザインとしてはそこを目指してやってほしいと言われたので、間口の広い、極端に言えば「かわいい」と言われるようなデザインは常に意識しましたね。

前田豊
前田豊

―紙媒体とウェブサイトでは、当然デザインの見せ方に違いが現れると思うのですが、前田さんはこの2つの差別化をどのように考えていますか?

前田:そんなに深く意識していないのですが、たぶん日本って紙とウェブで作り手側がまったく違うんですよね。ウェブ側は、紙を中心としたグラフィックデザインの本流みたいなところを通ってきた人が少ないし、紙側はものすごくローテクな古いシステムで育ってきた人が多い。最近は、この両者を行き来する人も少しずつ現れてきてはいるんですけど、10年くらい前まではほとんどいなくて。

津田:言論状況もまったく同じですよね。実はIT苦手なんだよね、っていう紙媒体出身のライターは結構多かったりする。一方でウェブメディアはPV(ページビュー)至上主義みたいなところがあって、釣り記事や追い記事でPV数を稼ぐ方向に偏ってしまう。そもそも、きちんと文章を書く訓練を受けてないようなライターや編集者が多かったりするのもやっぱり問題で……。ただ、やっぱり既存のメディアでは絶対できないようなことが実現できるのがウェブの良さでもある。僕自身、前田さん同様にどっちの世界も行き来してきたような人間なので、既存メディアの面白い部分を取り入れつつ、ネットでしかできないことをやっていきたい。前田さんとの仕事がやりやすいのもそれが大きいです。

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イベント情報

『第17回文化庁メディア芸術祭受賞作品展』

2014年2月5日(水)〜2月16日(日)
会場:東京都 六本木 国立新美術館(10:00〜18:00 金曜は20:00まで ※2月12日(水)休館)、東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックス
料金:無料

受賞作品

『第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品』

アート部門
大賞
『crt mgn』Carsten NICOLAI
優秀賞
『   を超える為の余白』三原聡一郎
『Dronestagram』James BRIDLE
『Situation Rooms』Rimini Protokoll
『The Big Atlas of LA Pools』Benedikt GROSS
新人賞
『Learn to be a Machine | DistantObject #1』LAU Hochi
『Maquila Region 4』Amor MUNOZ
『The SKOR Codex』La Societe Anonyme

エンターテインメント部門
大賞
『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』菅野薫、保持壮太郎、大来優、キリーロバ・ナージャ、米澤香子、関根光才、澤井妙治、真鍋大度
優秀賞
『スポーツタイムマシン』犬飼博士、安藤僚子
『プラモデルによる空想具現化』池内啓人
『燃える仏像人間』宇治茶
『トラヴィス「ムーヴィング」』Tom WRIGGLESWORTH、Matt ROBINSON
新人賞
『ゼゼヒヒ』津田大介
『やけのはら「RELAXIN'」』最後の手段(有坂亜由夢、おいたまい、コハタレン)
『TorqueL prototype 2013.03 @ E3』なんも(柳原隆幸)

アニメーション部門
大賞
『はちみつ色のユン』ユン、ローラン・ボアロー
優秀賞
『有頂天家族』吉原正行
『ゴールデンタイム』稲葉卓也
『サカサマのパテマ』吉浦康裕
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』庵野秀明
新人賞
『ようこそぼくです選』姫田真武
『Airy Me』久野遥子
『WHITE THE CROW WEEPS ―カラスの涙―』鋤柄真希子、松村康平

マンガ部門
大賞
『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8―』荒木飛呂彦
優秀賞
『昭和元禄落語心中』雲田はるこ
『それでも町は廻っている』石黒正数
『ちいさこべえ』望月ミネタロウ、原作:山本周五郎
『ひきだしにテラリウム』九井諒子
新人賞
『アリスと蔵六』今井哲也
『塩素の味』バスティアン・ヴィヴェス、訳:原正人
『夏休みの町』町田洋

プロフィール

津田大介(つだ だいすけ)

ジャーナリスト / メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。大阪経済大学客員教授。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)ほか。

立薗理彦(たちぞの まさひこ)

エンジニア・UI/UXデザイナー。1972年東京生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。『ナタリー』『Twitter社会論 for iOS』『ゼゼヒヒ』『ポリタス』『音ログ』『Beautiful Days』などのウェブサイトやアプリを開発。

前田豊(まえだ ゆたか)

1972年大阪生まれ。氏デザイン株式会社代表。グラフィック、広告、エディトリアル、VI、Web、サイン、空間、パッケージなど、様々な分野のデザインを横断的に行っている。2012年サインデザイン大賞・経済産業大臣賞受賞。

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