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舞台芸術は本当にアツいのか? 『TPAM』ディレクター座談会

舞台芸術は本当にアツいのか? 『TPAM』ディレクター座談会

テキスト・構成:萩原雄太, 撮影:高見知香, 撮影場所:ヨコハマ創造都市センター(YCC)
2014/01/23

毎年2月、世界中から横浜に舞台芸術関係者が集まる大規模な国際ミーティングがある。その名は『TPAM』、正式名称は『国際舞台芸術ミーティングin横浜』。日本を始め、世界中からパフォーマンス作品が集い、舞台芸術シーンの「今」が感じられるイベントだ。

このイベントで毎年開催されているのが『TPAMディレクション』という枠組み。ここでは、舞台芸術のこれからを担うディレクターが選出したアーティストやカンパニーの作品が上演されている。2014年、これに参加するのは、横浜市内最小の小劇場「STスポット」館長の大平勝弘、神戸のディープタウン・新長田で劇場ArtTheater dB神戸を運営する「NPO法人DANCE BOX」プログラムディレクターの横堀ふみ、劇団青年団の主宰である平田オリザがオーナーを務める「こまばアゴラ劇場」の野村政之、劇団「ままごと」プロデューサーの宮永琢生という、それぞれ独自の場で活動を続ける四人の若いディレクターたち。いったい、パフォーミングアーツの最先端で活躍する彼らは2014年のシーンをどのように感じ、何を提示するのだろうか?

Twitterを始めとしたSNSの影響は大きい。小規模で活動している人たちの情報が広がるスピードが格段に早くなっています。(大平)

―実は最近いろんなところで、「舞台芸術シーン」に若くて優秀な才能が集まっているという話を耳にします。みなさんは、劇場で仕事をされたり、カンパニーで制作を担当されていたりと、ずっとシーンの中心でお仕事をされているわけですが、日々、舞台芸術の最先端に触れながら、いったいこれまでのシーンをどのように感じているのでしょうか?

野村(こまばアゴラ劇場制作):近年の大きな流れで言うと、アーティストやカンパニーが小さな劇場、たとえば横浜のSTスポットや急な坂スタジオ、東京なら王子小劇場やこまばアゴラ劇場といったところで、単に自主公演を打つだけでなくプロデューサーや劇場スタッフと出会って、公立劇場の企画に選出されたりするような環境が2000年代から整えられてきたように感じます。

宮永(ZuQnZ主宰):20代の若手カンパニーの名前を聞く機会も増えましたよね。

大平(STスポット館長):Twitterを始めとしたSNSの影響は大きいですね。小規模で活動している人たちの情報が広がるスピードが格段に早くなっています。

左:大平勝弘、右:宮永琢生
左:大平勝弘、右:宮永琢生

野村:ただ、その分「活動の規模を大きくしなければならない」という気持ちや固定概念は薄くなっているのかもしれません。良くも悪くも周囲からのプレッシャーを受けずに、自分なりのスケールで独自のスタイルを貫く人たちが多くなっている印象があります。あと、オーソドックスな演劇作品だけでなく、音楽や美術、ダンスとクロスオーバーした作品がかなり増えていたり、地域など外部との関わりの中で作品を作るようになってきたのも、以前とはだいぶ違うように思います。

―新しく演劇やダンスを始める人、あるいは観客数など、舞台人口の総数は増えているのでしょうか?

横堀(DANCE BOX プログラムディレクター):もしかしたら関西だけかもしれませんが、ダンスに関して言えば増えている印象はありません。むしろフルレングスの単独公演ができるアーティストが減っている。関西では若手アーティストの上演機会を増やすため、20分作品をオムニバスで見せるようなショーケースプログラムが1990年代以降増えました。しかし、1時間で1つの作品をしっかり見せることができる作家は減ってきているんじゃないでしょうか。

大平:以前、STスポットやDANCE BOXでは、そういったオムニバスの作品を作るというプログラムに熱心に取り組んでいました。それが広まったことによって、表現する場はたくさんできた。けれども、今度はじっくり自分の作品と向き合えるような場が少なくなっているのかもしれません。

野村:演劇でも公演の数は増えているけど、全体的な規模は大きくなっていないという印象ですね。お客さんの総数としても以前と変わっていないかむしろ減っているんじゃないか。少子化で若者の人数も減っているし、経済的な余裕もありません。大きな目で見れば縮小しているんだと思います。

左:野村政之、右:横堀ふみ
左:野村政之、右:横堀ふみ

―作品の内容についてはいかがですか?

野村:以前のように、動員数やチケットの売上収入を至上命題にするのではなく、世の中に対する視点や社会の問題を発見し、オリジナリティーを持って舞台作品にまとめるということが目的として重視されているんじゃないでしょうか。そのおかげで、いろいろな視点の作品があるけれど「面白くて、集客もできて、盛り上がった公演」というのは本当に少ない。年に数本くらいかなという実感です。

宮永:そうですよね。観客数の話で言うと、マームとジプシーが昨年上演して非常に話題となった『cocoon』は、およそ4,500人くらいの集客があったそうですが、これはままごとの『わが星』と同じくらいの集客数なんです。小劇場の規模ではこれくらいが限界なのかと感じましたね。

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イベント情報

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2014(TPAM in Yokohama 2014)』

2014年2月8日(土)〜2月16日(日)
会場:神奈川県 横浜 ヨコハマ創造都市センター(YCC)、KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYK、横浜赤レンガ倉庫1号館、STスポットほか

参加作品:
『TPAMディレクション』
[野村政之ディレクション]
蓮沼執太『作曲:ニューフィル』
範宙遊泳『幼女X』
[横堀ふみディレクション]
筒井潤+新長田で踊る人々『新長田のダンス事情』
ショーネッド・ヒューズ『Aomori, Aomori』
[大平勝弘ディレクション]
伊藤キム×山下残
酒井幸菜×白神ももこ『Stick & uS!! 〜私たちと棒〜』
[宮永琢生ディレクション]
濱田英明×瀧澤日以×柴幸男『「演劇」という名の展示』

『インターナショナル・ショーケース』
話し言葉の百科全書/ジョリス・ラコスト『コラール(日本バージョン)』
チョン・ウニョン『(Off) Stage / Masterclass』
エルヴィ・シレン/坂本公成 日本 Japan Contemporary Dance Network/フィンランド ZODIAK ― 共同製作プログラム 『KITE』『灰が降る』
シャオ・クゥ×チョウ・ツゥ・ハン『We apologize to inform you』

『TPAMショーケース』
世田谷パブリックシアタープロデュース『現代能楽集VII「花子について」』
オペラシアターこんにゃく座 林光歌劇場 オペラ『吾輩は猫である』『セロ弾きのゴーシュ』
モモンガ・コンプレックス『ご多分にもれず、ふつう。』
ビルヂング『できることなら低空飛行』
木野彩子『静』
minamo×バストリオ『100万回』
マドモアゼル・シネマ『哀しみのフーガ。そして、』
86B210『Nuages』
マームとジプシー『Rと無重力のうねりで』
ももいろぞうさん『THE DOOR』
横浜ダンスコレクションEX2014 受賞者公演:捩子ぴじん『空気か屁』
ロバート・テューズリー、酒井はな、森山開次、津村禮次郎、デワ・アリット、アレッシオ・シルヴェストリン『ARCHITANZ 2014 2月公演』
鮭スペアレ『かあいい日本〜ごどーちゃんの居る77の風景〜』
かえるP『海底のヤギ』
クラウン・ショー副交感神経『クラウン・ショー副交感神経2』
きたまり&NPO法人Offsite Dance Project 多田淳之介『RE/PLAY(DANCE Edit.)』
革命アイドル暴走ちゃん『騒音と闇』
シアターカンパニー・アリカ『しあわせな日々』
日本 - 韓国ダンス交流プロジェクト Yokohama Dance Collection × Seoul Dance Collection Dance Connection『Seize the Day Face to Face 2014 version』
AAPA『ありしひ』
カタルシツ『賽の河原』
MOKK『ヴァニッシング・リム』
Co. 山田うん『ダンス×アプリコ×山田うん!「春告歌」』
ピーピング・トム『A Louer/フォー・レント』

料金:『TPAMディレクション』『インターナショナル・ショーケース』1公演2,000円
※料金の詳細はTPAMウェブサイトをご覧ください。『TPAMショーケース』の料金は公演ごとに異なります。

プロフィール

野村政之(のむら まさし)

1978年長野県生まれ。こまばアゴラ劇場制作。公共ホール勤務を経て、こまばアゴラ劇場・劇団青年団に在籍。並行して若手演出家の活動にさまざまな形で参加。ドラマトゥルクを担当したままごと『わが星』(2009)、サンプル『自慢の息子』(2010)が岸田國士戯曲賞受賞。他に岡崎藝術座『(飲めない人のための)ブラックコーヒー』(2013)制作、蓮沼執太+山田亮太『タイム』(『TPAM2012』)プロデュースなど。

横堀ふみ(よこほり ふみ)

{1978年奈良県生まれ。NPO法人 DANCE BOX プログラムディレクター。1999年よりDANCE BOXに関わる。2006年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。2008〜2009年ACC(Asian Cultural Council)のフェローシップによりアジア6カ国とNYで舞台芸術の実態調査を実施。Art Theater dB神戸を拠点に「ダンス」「地域のコミュニティ」「劇場」を結ぶプログラムを試行しながら、主にアジア間におけるネットワークの構築を目指している。

大平勝弘(おおひら かつひろ)

1971年大阪府生まれ。STスポット館長。大学助手、専門学校講師を経て、2006年よりSTスポットに勤務、「急な坂スタジオ」立ち上げに参画。2008年よりSTスポット館長。コンテンポラリーダンスを中心に公演企画、及び若手アーティストの育成、観客創造のためのワークショップ構築に従事。また近年はアーティスト・イン・レジデンスなどの国際交流事業も手がけている。

宮永琢生(みやなが たくお)

1981年東京都生まれ。制作者・プロデューサー。企画制作・プロデュースユニット「ZuQnZ(ズキュンズ)」主宰。2007〜2011年、劇団青年団にて本公演および関連公演の制作に携わる。2009年に柴幸男と共に「ままごと」を起ち上げ、製作総指揮&プロデューサーを務める。他に黒川深雪(InnocentSphere)とのユニット「toi(トイ)」のプロデュース、音楽ユニット「□□□(クチロロ)」のライブ企画制作など。

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