特集 PR

藤田貴大×川上未映子の叫び「まだ全然言い足りてない」

藤田貴大×川上未映子の叫び「まだ全然言い足りてない」

インタビュー・テキスト
橋本倫史
撮影:永峰拓也

2012年、三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で『岸田國士戯曲賞』を受賞した演劇作家・藤田貴大。彼が主宰を務める劇団・マームとジプシーは、音楽家の大谷能生や演出家の飴屋法水、漫画家の今日マチ子らと共作を発表し、2013年には『cocoon』を上演し多くの注目を集めた。昨年は海外公演も成功させた彼らが、初めての全国ツアーをスタートさせる。そこでタッグを組んだのは、詩人にして小説家の川上未映子だ。

二つの才能による共作が最初に実現したのは、2013年9月の『初秋のサプライズ──ユリイカ×川上未映子×マームとジプシー』。川上の過去作である『冬の扉』『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』、さらに公演のために、震災をテーマにした『まえのひ』が書き下ろされ、3篇がリーディング公演という形で上演された。川上が『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』(以下、『先端で~』)を書き上げたのは、彼女が29歳になる年齢だったが、その処女作を「精神的な遺書」と表現するほどの覚悟で書き上げたという。一方、今年29歳になる藤田貴大は「ツアーをすることでボロボロに傷つくかもしれない」と語りながら、マームとジプシーとしては初めての本格的な全国ツアーに出向く。そんな二人の作家の覚悟に共通するのは、ちっぽけな私たちが世界の大きさに抗おうとする、痛烈な「叫び」だった。

未映子さんの作品には、「女性だから女性を描いている」以外のことが書き込まれていて、ものすごく新しいものだと思った。(藤田)

―対談するのは今日が初めてということなので、まずはお二人の出会いからうかがえますか?

藤田:20歳ぐらいのときに、初めて未映子さんの『先端で~』を読んで、ものすごくハマったのを覚えてます。もう、読んだ途端に泣けてしまったんですよね。

川上:うふふ、泣けるなんて珍しいな。

藤田:その頃にはもう作劇を始めていたんですけど、当時は女性作家に対してちょっと抵抗感があったんです。というのも、僕は女性をモチーフにして舞台を作りたかったんだけど、当時は「女性を描くなら女性作家」という風潮があって、女性作家に対してナーバスになってたんですよね。でも、未映子さんの作品には、「女性だから女性を描いている」以外のことが書き込まれていたから、抵抗がなかったし、ものすごく新しいものだと思ったんです。

左から:川上未映子、藤田貴大
左から:川上未映子、藤田貴大

―未映子さんが最初にマームとジプシー(以下、マーム)の舞台をご覧になったのはいつ頃ですか?

川上:いっとき、小劇場で上演されているお芝居をよく観ていた時期があるんですけど、この数年は観る機会が減ってしまって。そんなときに『ユリイカ』編集長の山本充さんから「どんなに忙しかろうとも、これだけは観に行ったほうがいい」と電話がかかってきて。彼がそんなことを言うのは珍しいんですけど、それがマームとジプシーの『ハロースクール、バイバイ』(2010年)という作品だったんです。

―中学校の女子バレーボール部の最後の試合をモチーフにした舞台ですね。

川上:なんの前情報も持たずに観に行ったんですけど、非常に衝撃を受けて。すごく感動しましたね。公演後に受付にいらっしゃった制作の──今思うとそれは林さんなんですけど、彼女が主宰だと思って挨拶したら、隣にいた塗り絵から出てきたような男の子を紹介されて、「藤田です」って。「男性が作ってたんだ」と驚きました。てっきり女性が作ったものだと思い込んでいたんですけど、その驚きというのが、私がマームについて考えるときの大事な部分でもあって。それからは、公演があれば時間の許す限り観に行ってます。

Page 1
次へ

イベント情報

川上未映子×マームとジプシー
『まえのひ』全国ツアー

テキスト:川上未映子『まえのひ』『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』『冬の扉』『戦争花嫁』『治療、家の名はコスモス』『少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ』
※各地の会場に合わせながら、セットリストを変更予定。

演出:藤田貴大
出演:青柳いづみ
音:zAk

長野公演
2014年4月15日(火)19:00~
会場:長野県 松本 まつもと市民芸術館小ホール
料金:前売・当日2,500円

京都公演
2014年4月18日(金)~4月20日(日)全5公演
会場:京都府 元立誠小学校 音楽室
料金:前売・当日3,000円

大阪公演
2014年4月22日(火)~4月23日(水)全2公演
会場:大阪府 難波 味園ユニバース
料金:前売・当日3,000円(ドリンク別)

熊本公演
2014年4月25日(金)~4月26日(土)全3公演
会場:熊本県 早川倉庫
料金:前売・当日2,500円

沖縄公演
2014年4月29日(火・祝)全2公演
会場:沖縄県 那覇 桜坂劇場
料金:前売・当日2,500円(ドリンク別)

東京公演
2014年5月2日(金)~5月4日(日)全5公演
会場:東京都 新宿 風林会館5Fニュージャパン
料金:前売3,000円 当日3,500円

プロフィール

藤田貴大(ふじた たかひろ)

{北海道出身。劇作家・演出家。マームとジプシー主宰。2011年6月~8月にかけて発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で『第56回岸田國士戯曲賞』を26歳で受賞。今までに様々なジャンルの作家と共作を発表。2013年「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」で初の海外公演を成功させる。2013年8月漫画家・今日マチ子原作「cocoon」を舞台化。<

川上未映子(かわかみ みえこ)

大阪府生まれ。2007年、『わたくし率 イン 歯—、または世界』で第一回坪内逍遥賞新人賞を受賞。2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞を受賞。ほかに小説『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞、詩集『水瓶』で第43回高見順賞を受賞。『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞を受賞。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

yahyel“TAO”

音楽と映像、そしてその相互作用によって完成するyahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明するミュージックビデオ。クライムムービーとそのサントラのような緊迫感に終始ゾクゾクする。一体いつ寝てるんですかと聞きたくなるが、監督はもちろん山田健人。「崇高」という言葉を使いたくなるほどの表現としての気高さに痺れる。(山元)

  1. 香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開 1

    香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開

  2. 森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』 2

    森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』

  3. 安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像 3

    安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像

  4. 乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人 4

    乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人

  5. 「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音 5

    「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音

  6. 渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送 6

    渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送

  7. 崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々 7

    崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々

  8. 高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』 8

    高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』

  9. Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった? 9

    Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった?

  10. 『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年 10

    『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年