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理想とジレンマのせめぎ合い 佐藤良成×坂本慎太郎の濃密音楽談義

理想とジレンマのせめぎ合い 佐藤良成×坂本慎太郎の濃密音楽談義

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織

8枚目のアルバム『むかしぼくはみじめだった』を発表するハンバートハンバートの佐藤良成と、2枚目のソロアルバム『ナマで踊ろう』を発表する坂本慎太郎。タイプこそ違えども、共に日本の音楽シーンの中で強烈なミュージシャンシップを発揮している二人であることは、多くの方がご存知だろう。ハンバートハンバートとゆらゆら帝国は、2000年代初頭に同じレーベルに所属していたことがあったものの、これまで特別密接な関係性にあったわけではないという。しかし、坂本の新作を聴いた佐藤からの強い要望もあって、今回の対談が実現することとなった。

共に近年ベースに魅せられたという話題からスタートした二人の対話は、結果的に「音楽の良し悪しは何で決まるのか?」という、興味深いテーマへと向かった。端的に言えば、「技術なのか? それとも感性なのか?」という話で、基本的には同じ方向を向いていながらも、微妙に考え方の異なる二人のやり取りが面白い。さらに話が進むと、未知の可能性にチャレンジせずにはいられない佐藤と、自らの道をひたすら歩む坂本という、対照的な側面と、そこに潜む両者の生々しいジレンマも浮かび上がってきた。必読の対談になったと思う。

(打ち上げで)「ハンバートハンバートって名前だから売れないんじゃないか?」っていう話になって、(坂本さんは)「さまぁ~ずと同じで、平仮名ではんばぁ~とってすればいいんじゃない?」って言ってて(笑)。(佐藤)

―ハンバートハンバートとゆらゆら帝国は一時期MIDIでレーベルメイトだったんですよね?

坂本:でも、(ハンバートハンバートが)MIDIにいたの知らなかった(笑)。

佐藤:MIDIに一緒にいるからといって、レーベル内の交流とかほとんどなかったですからね(笑)。でも、俺はMIDIといえば「ゆらゆらがいる」っていうイメージでした。

坂本:1回オシリペンペンズの打ち上げで一緒になりましたよね?

佐藤:あれが去年ですよね。オシリペンペンズが1週間UFOクラブで毎日対バンライブをやってて、その中にハンバートハンバートが出た日があって、その後の打ち上げに坂本さんもいらしてて。そのときのことで覚えてるのが、「ハンバートハンバートって名前だから売れないんじゃないか?」っていう話に何故かなって、モタコ(オシリペンペンズのボーカル)が「坂本さんだったらどうします?」って振ったら、「さまぁ~ずと同じで、平仮名ではんばぁ~とってすればいいんじゃない?」って言ってて(笑)。

坂本:そんなこと言いましたっけ? 失礼しました(笑)。でも、そのときモタコくんが(佐藤のことを)「自分の尊敬する人だ」って言ってましたよ。「世界で一番好きなボーカル」ぐらいの勢いで。

佐藤:それはでも、坂本さんに対してもモタコ言ってますよね(笑)。

坂本:そう、「世界一尊敬してるボーカルが二人揃って、奇跡や」って、写真撮りましたよね?

佐藤:撮りました、覚えてます(笑)。

左から佐藤良成、坂本慎太郎
左から佐藤良成、坂本慎太郎

タイム感が自分と違う人が一生懸命合わせようとしてくれる感じが欲しかったっていう、すごい微妙なところを求めてたんですよね。(坂本)

―いいエピソードですね(笑)。そんなつながりもありつつ、今日は良成さんから、坂本さんに訊きたかったことがあるとか。

佐藤:そうなんですよ。坂本さんの最初のアルバム『幻とのつきあい方』は、ベースをご自身で弾いてましたよね? で、今回の作品からはベースを別の人に弾いてもらっていて、いわゆるバンド編成でやってるのは、どういうことなのかすごい気になってて。

坂本:前作で初めて自分でベースを弾いて、ベースラインからアレンジするっていうやり方をやったら、すごい開けたっていうか、当たり前なんですけど、ベースでどうとでもノリが変わるのが面白くて、すごいはまったんですね。ただ、思い通りになる半面、完成が見えちゃう部分もあって。今回もベースラインは基本的に僕が考えたんですけど、自分の要素を減らしたいと思って、自分と違うタイム感の人とちゃんとスタジオに入って、リハーサルをやって、ノリを固めてから一発で録るっていうのをやりたいと思って。

佐藤:曲自体ベースで作ったんですか?

坂本:作り方としては、ギターのコードで作って、それに合うリズムパターンをリズムマシンで簡単に作って、それをMTRに入れて、それに合うベースラインを考えて、ギターを1回抜いて、ドラムとベースと歌メロだけにして、間に入れていくものを決めていくっていう。


佐藤:なるほど。なんでこんな細かく訊くかというと、同じぐらいの時期に、大体同じような理由で自分でベースをやることにして、2011年に出したミニアルバムは全部自分で弾いたんですね。作り方も同じような感じで。でもやっぱり途中で先が見えてきちゃったので、坂本さんももしかしたら同じようなことを考えていたのかなって。

坂本:僕の場合、ルートを弾かなかったり、アタマを抜いたり、コードの違う音から入ったりしてて、普通にセッションをすると、そうはなんないじゃないですか?

佐藤:あれは曲を作った人だからこそやれる自由さですよね。

坂本:あれでコード感がわかんなくなったり、ギターも単音で弾いて、ベースとギターのふたつでマイナーになったり、メジャーになったり、一人で組み立てられるじゃないですか? それがすごい面白くて、今回もそこは自分で考えてるんですけど、タイム感が自分と違う人が自分の変なノリに一生懸命合わせようとしてくれる感じが欲しかったっていう、すごい微妙なところを求めてたんですよね。

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イベント情報

ハンバート ハンバート
『むかしぼくはみじめだった』レコ発ツアー
『歩いて行くんだ、どこまでも』

2014年6月7日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:広島県 広島 CLUB QUATTRO
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月8日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:島根県 松江 メテオプラザ
料金:前売4,000円

2014年6月16日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 京都 磔磔
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月17日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:兵庫県 神戸 チキンジョージ
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月21日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:宮城県 仙台 Rensa
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年7月16日(水)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年7月19日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡県 イムズホール
料金:前売4,000円

2014年7月20日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:大分県 由布院 アルテジオ
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年9月12日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:北海道 札幌 キューブガーデン
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年9月17日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋市芸術創造センター
料金:前売4,800円

2014年9月20日(土)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:大阪府 大阪城音楽堂
料金:前売4,800円

2014年10月3日(金)OPEN 17:45 / START 18:30
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
料金:前売4,800円

リリース情報

ハンバート ハンバート<br>
『むかしぼくはみじめだった』(CD)
ハンバート ハンバート
『むかしぼくはみじめだった』(CD)

2014年5月21日(水)発売
価格:2,916円(税込)
DDCB-14023

1. ぼくのお日さま
2. ぶらんぶらん
3. 鬼が来た
4. 何も考えない
5. オーイ オイ
6. 潮どき
7. 小舟
8. くもの糸
9. ホンマツテントウ虫
10. まぶしい人
11. ポンヌフのたまご
12. 移民の歌

Amazonで購入する
坂本慎太郎<br>
『ナマで踊ろう』初回限定盤(2CD)
坂本慎太郎
『ナマで踊ろう』初回限定盤(2CD)

2014年5月28日(水)発売
価格:2,808円(税込)
zelone records / zel-012s

1. 未来の子守唄
2. スーパーカルト誕生
3. めちゃくちゃ悪い男
4. ナマで踊ろう
5. 義務のように
6. もうやめた
7. あなたもロボットになれる
8. やめられないなぜか
9. 好きではないけど懐かしい
10. この世はもっと素敵なはず
※紙ジャケット仕様

坂本慎太郎<br>
『ナマで踊ろう』通常盤(2CD)
坂本慎太郎
『ナマで踊ろう』通常盤(2CD)

2014年5月28日(水)発売
価格:2,808円(税込)
zelone records / zel-012

1. 未来の子守唄
2. スーパーカルト誕生
3. めちゃくちゃ悪い男
4. ナマで踊ろう
5. 義務のように
6. もうやめた
7. あなたもロボットになれる
8. やめられないなぜか
9. 好きではないけど懐かしい
10. この世はもっと素敵なはず

プロフィール

ハンバート ハンバート

1998年結成、佐藤良成と佐野遊穂による男女デュオ。2001年CDデビュー。2005年のシングル「おなじ話」が各地のFM局でパワープレイとなったのをきっかけに、東京を拠点としていた活動を全国に広げる。テレビ・映画・CMなどへの楽曲提供多数、ニチレイアセロラシリーズのCMソング”アセロラ体操のうた”が話題に。海外の伝統音楽家と共演することも多く、2011年にはスコットランドで開催されたケルト音楽祭に出演した。2014年5月21日、4年ぶりとなるアルバム『むかしぼくはみじめだった』をリリース。

坂本慎太郎(さかもと しんたろう)

1967年9月9日大阪生まれ。1989年、ロックバンド・ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。2006年、アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。2010年、ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。2011年、salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート。2014年5月28日、2年半ぶりとなるアルバム『ナマで踊ろう』をリリース。

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