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理想とジレンマのせめぎ合い 佐藤良成×坂本慎太郎の濃密音楽談義

理想とジレンマのせめぎ合い 佐藤良成×坂本慎太郎の濃密音楽談義

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織

スタジオミュージシャンのすごい上手い人とやるのは、それはそれで困ることも多くて、仕事が速いのはいいんですけど、間違ってないことに対して、「でも、そうじゃない」って説明するのがすごく難しいんですよね。(佐藤)

―ハンバートハンバートの新作はナッシュビルで現地のミュージシャンと一緒に録音されていますよね。

坂本:あれはどこまで作って持って行ったんですか?

佐藤:弾き語りだけですね。いつも家で、マイク1本で(佐野遊穂と)一緒に歌ってデモを作っちゃうんですけど、それを送って向こうに聴いてもらって、どんな編成でやろうかって決めたんです。ブルーグラステイストの楽器(代表的にはバンジョー、マンドリン、ギター、ベース、バイオリンなど)ばっかりっていうのもどうかなって思って、オルガンを足したりとか、楽器はこっちである程度決めて、「それだったらこの人がいい」って向こうに決めてもらいました。

坂本:そこからはセッションみたいな感じ? 基本的なフレーズとかベースラインはお任せ?

佐藤:はい、あとで「やっぱこうして」っていうのはもちろんあったんですけど、まずはやってみて、出てきたものから考えるって感じでした。


坂本:自分でベースラインを作るのは1回やって飽きちゃったんですか?

佐藤:飽きてはいないんですけど、坂本さんもおっしゃったように、先が見えちゃうっていうのもあったし、あと単純に上手くないんですよね、どうやっても。ベーシストに比べて、だいぶピントの甘いものになっちゃうっていうことと、自分でいろんな楽器とのコンビネーションが詰められるのはいいんですけど、自分の癖とかタイム感からは逃げられないから、重ねても重ねても同じ空気のものが積み重なってるだけで、横ノリ縦ノリみたいな立体感がどうも出しづらくて。わざと間の違ったリズムギターを、大して必要もないのにこっそり入れておくとか、違うグルーブが出るようにいろいろやったんですけど、やっぱり根本的には3人以上の違う人間が、誰かをメインにして、それぞれ持ち場を守ってやった方が自分には合ってると思って。

坂本:その感じはすごいわかりますね。

佐藤:今回坂本さんのアルバムを聴いたら、ベースがすごい良くて、単純に羨ましいなって思ったんですよ(笑)。

坂本:ベースのAYAさんはもともと知り合いで、OOIOOとかを見てかっこいいと思ってたから、ベースを頼むならAYAさんだなってなんとなく思ってたんです。スタジオミュージシャンのバカテクで、テンションの高いアッパーな人が来ても困るじゃないですか? かといって、全然弾けない人でも困るし、スタジオ入ったときの雰囲気とかも考えて、やっぱり髭の普通のおじさんがベースだとかっこいい音楽にならなそうじゃないですか? そういういろんな意味で、AYAさんがいいなって。

―ハンバートハンバートで一緒にやる人に関しても、やっぱり単純に上手さだけじゃない部分が大事ですか?

佐藤:大事なんですけど、両方ないとしょうがないので、そこがいつも難しいところなんですよね。確かにスタジオミュージシャンのすごい上手い人とやるのは、それはそれで困ることも多くて、仕事が速いのはいいんですけど、間違ってないことに対して、「でも、そうじゃない」って説明するのがすごく難しいんですよね。でもやっぱり音楽だから、気持ちだけあっても、弾けてないとしょうがないので、そこが難しいところなんですよね。

佐藤良成

「たどたどしい演奏がいい」って言う人もいっぱいいるけど、弾けるけど弾かないのって、たどたどしいのとはまたちょっと違うというか。(坂本)

―ナッシュビルはカントリーミュージックの中心地としても知られていますけど、その地でのレコーディングにはどんな狙いがあったんですか?

佐藤:今回に関しては、「上手い人とやる」っていうのがテーマだったんです。自分たちみたいなアコースティックな音楽って、日本だとあんまり主流じゃないので、ミュージシャンがいないんですよ。ウッドベースの人はいるけどジャズ畑の人が多かったり、ドラムもロックドラムが多くて、自分の音楽の方向性に合うミュージシャンが少ない。バンジョーに至っては、日本でプロでやってる人って指で数えられるぐらいしかいないんです。

―それで海外のミュージシャンとやることにしたんですね。

佐藤:ただ、どうしてもナッシュビルサウンドにしたかったわけではなくて、縁があって行くことになったので、だったらそういうサウンドにしようって感じでした。アレンジは何でもいいというか、その都度その都度で決めていく感じなんです。

坂本:僕も今回バンジョーとスティールギターを自分でやってて、あれもプロの人にやってもらえばもっと上手く弾けると思うんですけど、そういうことじゃないっていうのもあって、わざわざ買うところから始めて、練習しました。求めてるのがすごい微妙で、完成度を高くしたいわけじゃないんで、プロに頼んで、「もっと下手に」とかって難しいじゃないですか? 裏メロとかで使いたいようなときって、自分の頭の中で鳴ってるメロディーやイメージを形にできればいいから、自分でやるのがいいのかなって。

坂本慎太郎

佐藤:俺も同じような理由で、「もっと下手に」っていうのをナッシュビルのベテランミュージシャンに毎日言ってたんですけど、やっぱりなかなか通じなくて。カントリーとかブルーグラスの要素は入れたいんだけど、油断すると本格的な洋楽っぽくなっちゃう。すごく演奏も音もノリも良くて、非の打ちどころがないテイクが録れるんだけど、ちょっと洋楽っぽ過ぎて、自分の曲には合わない感じがしちゃって。

坂本:難しいですよね。上手い人に「下手に」って言っても、通じないですもんね。「たどたどしいのがいい」って言う人もいっぱいいるけど、弾けるけど弾かないのって、たどたどしいのとはまたちょっと違うというか。

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イベント情報

ハンバート ハンバート
『むかしぼくはみじめだった』レコ発ツアー
『歩いて行くんだ、どこまでも』

2014年6月7日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:広島県 広島 CLUB QUATTRO
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月8日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:島根県 松江 メテオプラザ
料金:前売4,000円

2014年6月16日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 京都 磔磔
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月17日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:兵庫県 神戸 チキンジョージ
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年6月21日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:宮城県 仙台 Rensa
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年7月16日(水)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年7月19日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡県 イムズホール
料金:前売4,000円

2014年7月20日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:大分県 由布院 アルテジオ
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年9月12日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:北海道 札幌 キューブガーデン
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2014年9月17日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋市芸術創造センター
料金:前売4,800円

2014年9月20日(土)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:大阪府 大阪城音楽堂
料金:前売4,800円

2014年10月3日(金)OPEN 17:45 / START 18:30
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
料金:前売4,800円

リリース情報

ハンバート ハンバート<br>
『むかしぼくはみじめだった』(CD)
ハンバート ハンバート
『むかしぼくはみじめだった』(CD)

2014年5月21日(水)発売
価格:2,916円(税込)
DDCB-14023

1. ぼくのお日さま
2. ぶらんぶらん
3. 鬼が来た
4. 何も考えない
5. オーイ オイ
6. 潮どき
7. 小舟
8. くもの糸
9. ホンマツテントウ虫
10. まぶしい人
11. ポンヌフのたまご
12. 移民の歌

Amazonで購入する
坂本慎太郎<br>
『ナマで踊ろう』初回限定盤(2CD)
坂本慎太郎
『ナマで踊ろう』初回限定盤(2CD)

2014年5月28日(水)発売
価格:2,808円(税込)
zelone records / zel-012s

1. 未来の子守唄
2. スーパーカルト誕生
3. めちゃくちゃ悪い男
4. ナマで踊ろう
5. 義務のように
6. もうやめた
7. あなたもロボットになれる
8. やめられないなぜか
9. 好きではないけど懐かしい
10. この世はもっと素敵なはず
※紙ジャケット仕様

坂本慎太郎<br>
『ナマで踊ろう』通常盤(2CD)
坂本慎太郎
『ナマで踊ろう』通常盤(2CD)

2014年5月28日(水)発売
価格:2,808円(税込)
zelone records / zel-012

1. 未来の子守唄
2. スーパーカルト誕生
3. めちゃくちゃ悪い男
4. ナマで踊ろう
5. 義務のように
6. もうやめた
7. あなたもロボットになれる
8. やめられないなぜか
9. 好きではないけど懐かしい
10. この世はもっと素敵なはず

プロフィール

ハンバート ハンバート

1998年結成、佐藤良成と佐野遊穂による男女デュオ。2001年CDデビュー。2005年のシングル「おなじ話」が各地のFM局でパワープレイとなったのをきっかけに、東京を拠点としていた活動を全国に広げる。テレビ・映画・CMなどへの楽曲提供多数、ニチレイアセロラシリーズのCMソング”アセロラ体操のうた”が話題に。海外の伝統音楽家と共演することも多く、2011年にはスコットランドで開催されたケルト音楽祭に出演した。2014年5月21日、4年ぶりとなるアルバム『むかしぼくはみじめだった』をリリース。

坂本慎太郎(さかもと しんたろう)

1967年9月9日大阪生まれ。1989年、ロックバンド・ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。2006年、アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。2010年、ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。2011年、salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート。2014年5月28日、2年半ぶりとなるアルバム『ナマで踊ろう』をリリース。

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