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カジヒデキが語る、時代を熱狂させる音楽シーンのスピリット

カジヒデキが語る、時代を熱狂させる音楽シーンのスピリット

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織
2014/08/06

若い子が何かを聴いて、違った解釈が生まれるのは当然じゃないですかね? 高校生の頃の自分と、1990年代以降に高校生になった世代の人では、パンクに対する解釈が全然違うだろうし、今のシティポップにもそういうことが起こっています。

―今また大瀧さんや山下達郎さんが若い人から再評価されていて、「シティポップ」っていう言葉が流行ってるじゃないですか? それに対してかせきさんがCINRAのインタビューで「ニューミュージックはフォークの流れから生まれたもので、シティポップは黒人音楽から影響を受けた人が作ったポップスだと僕は思ってきたから、そのどちらもシティポップとして捉えられていることに少し戸惑いを感じました」っておっしゃってたんですね。カジさんは「シティポップ」というものを、どのように捉えていらっしゃいますか?

カジ:僕はシティポップというのものをシティポップとして楽しんだことがあんまりないんですよね。例えば、大貫妙子さんや山下達郎さんの初期の作品とかすごく好きなんですけど、シティポップっていうジャンルとして聴いてたわけじゃなかったですね。だから、正直その言葉自体にはあんまりピンと来なくて。確かに、数年前からシティポップっていう言葉が流行り出して、KONCOSとか、一十三十一さんとかがそういうテイストの作品をリリースしてるのはとても面白いなって思うんですけど、ジャンルとしては捉えてないですね。

―とはいえ、大瀧さんリスペクトの曲になっている“アイスクリーム・マン”は“Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語”(『A LONG VACATION』の収録曲)を連想させるドゥーワップから始まっていて、結果的に、かせきさんの発言を裏付けることにもなってますよね。

カジ:うん、かせきくんの言ってることは「その通り!」って思うし、でも若い子が何かを聴いて、違った解釈が生まれるのは当然じゃないですかね? 例えば、高校生の頃の自分と、1990年代以降に高校生になった世代の人では、パンクに対する解釈が全然違うだろうなっていうのと一緒で、今のシティポップにもきっとそういうことが起こってるんだと思うんです。

―そうですよね。そして、その解釈の違いから、また面白いものが生まれてくるわけですもんね。

カジ:うん、そういうふうに思いますね。まあ、かせきくんは「ミスターシティポップ」って名乗ってるぐらいなので、そこはこだわらないとね(笑)。 「渋谷系」の何が特別だったと言うと、やっぱり革新的な音楽が作られていて、「新しいことをやってやろう」とか「何かを変えてやろう」っていう意識が明確にあったのがいいなって思うんですよね。

―「シティポップ」と同様に、今改めて「渋谷系」の再評価も起こっている印象があるんですけど、カジさんはどう感じられていますか?

カジ:うーん、渋谷系に関しては、僕はそんなに感じていないですね(笑)。例えば、映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)のときには、ちょっと脚光を浴びたと思うんですけど、今もそういう感じなんですか? そうなら嬉しいけど(笑)。ただ、今回のアルバムは野宮真貴さんに参加していただいてるんですけど、ピチカート・ファイヴのアルバムを聴き直すとやっぱり最高にいいし、野宮さんが今もあえて「渋谷系」っていう言葉を使って活動してる感じも好きですし、あの頃の作品ってやっぱりすごいなって思うことが今でもよくあって、そこはずっと変わらないですね。

カジヒデキ

―これは改めての質問になりますが、なぜ「渋谷系」のムーブメントというものが、カジさんにとって特別な体験として今も残っているのでしょうか?

カジ:まずはやっぱり革新的な音楽が作られていて、「新しいことをやってやろう」とか「何かを変えてやろう」っていう意識が明確にあったのがいいなって思うんですよね。あと個人的な体験として、僕は当時ZESTっていう輸入盤のレコード屋さんで働いてたんですけど、そのお店が連日女子高生や若い女性でいっぱいだったんですよ。まあ、フリッパーズが人気だったのもあるんですけど、90年から93年ぐらいのあのただ事じゃない感じっていうのはすごく印象的ですね。そこに、小西さんのようないい音楽やオシャレな映画を紹介してくれる人がいて、一般層までとは言わないですけど、かなり多くの人がイタリアやフランス映画のサントラとかを買ってたのは、今から考えるとやっぱりすごいことだったなって思います。

―僕が「渋谷系の再評価を感じる」って言ったのは、カジさんもでんぱ組.incに曲提供されているように、今のアイドルや声優さんの楽曲って、すごく編集的な視点で作られてるものが多くて、実際に渋谷系の流れを汲んだ作家さんも多く活躍されているからなんです。

カジ:ああ、確かにそういうテイストの人がすごくいるなっていうのは感じます。

―実際、でんぱ組.incに提供した“ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ”に関しては、どんなことを意識されましたか?

カジ:あれはもふくさん(でんぱ組.incのプロデューサーでもある福嶋麻衣子)から依頼を受けたんですけど、依頼をくださったということは、自分らしいものを作ればいいのかなって思って、いわゆる90年代っぽい、渋谷系っぽいのを意識しました。打ち合わせをしたときに“サクラあっぱれーしょん”(シングルの表題曲。“ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ”がカップリング)を聴かせてもらってたんですけど、ああいうものすごく展開の多いような曲作りは自分にはできないなと。それでかせきくんと話して、やっぱり大瀧さん的な普遍的なポップスで、サウンドもちょっとふんわりした感じの、セミ・ウォール・オブ・サウンド(「ウォール・オブ・サウンド」はフィル・スペクターが確立した重厚なバック演奏。日本では大瀧詠一がフィルのアレンジの世界を再現しようと試みた)みたいな(笑)、そういうフレーバーで考えましたね。

―今回のアルバムで言うと、さきほど名前の挙がった野宮さんが参加されてる“雨降り都市”からも、普遍的なポップスっていう印象を受けました。かせきさんの歌詞も、松本隆さんを思わせるテイストですし。

カジ:あれはもともと80年代のファンカラティーナ(ロンドンのナイトクラブで生まれた、ファンクとラテンとニューウェイブをミックスさせたジャンル)みたいな、ジャジーなニューウェイブっぽいイメージだったんですけど、ハグトーンズ(かせきさいだぁのバックバンド)のリズム隊がすごく面白いアイデアを出してくれて、いい意味でパンクじゃないというか、絶妙にしっとりした感じのトラックができたんです。そこからかせきくんに歌詞をお願いして、野宮さんがさらに大人っぽいムードを出してくれました。

カジヒデキ

―小島麻由美さんが参加されてる“僕らのスタンドバイミー”も非常に印象的です。

カジ:夏のアルバムを作るにあたって、自分と女性ボーカルとラッパーのトライアングルで1曲作りたいと思ったんですよね。歌詞のテーマとしては「思い出の夏」がいいなと思って、そうしたら「1991年」っていうのが出てきて。僕にとって91年の夏と言えばフリッパーズの解散なんですけど、初めてロンドンに行ったのもちょうどその頃で、帰って来てからさっきのレコード屋でバイトも始めたし、ブリッジ(小山田圭吾主宰のトラットリアを代表するネオアコースティックバンドのひとつ)はすでにやってたんですけど、その夏以降本格的にバンドに打ち込もうと思ったんですよね。それで、当時のセカンドサマーオブラブのムードも歌詞に入れて、かせきくんにラップもやってもらって、その頃のフィーリングがわかる女性ボーカルとして小島麻由美さんに参加してもらって、すごくいいものになったと思いますね。

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イベント情報

『Here Comes The Ice Cream Man! Ding! Ding! Ding! Tour
アイスクリーム・マンがやってきた!リン!リン!リン!ツアー』

2014年11月27日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 渋谷 WWW

2014年12月11日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:大阪府 umeda AKASO

2014年12月12日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

料金:各公演 前売4,000円 当日4,500円(共にドリンク別)

リリース情報

カジヒデキ<br>
『ICE CREAM MAN』(CD)
カジヒデキ
『ICE CREAM MAN』(CD)

2014年8月6日(水)発売
価格:2,800円(税込)
BLUE BOYS CLUB / AWDR/LR2 / DDCB-12070

1. 灼熱少女 / Tropical Girl
2. 続・新しい歌 / JAM & BUTTER SONG
3. アイスクリーム・マン / ICE CREAM MAN
4. そしてライフはつづく / LIFE GOES ON
5. スマイル&ティー / SMILE & TEA
6. 雨降り都市 / Rainy City
7. HEY HEY GIRL! HEY DJ! / HEY HEY GIRL! HEY DJ!
8. ハッピー・マンチェスター / HAPPY MANCHESTER
9. サマーキャンプ / SUMMER CAMP
10. プールサイド・コーリング / POOL SIDE CALLING
11. ブランニュー・ブーツ / BRAND NEW BOOTS AND PANTIES
12. 僕らのスタンドバイミー / LONG LONG HOT SUMMER

プロフィール

カジヒデキ

1967年千葉県出身。96年に『MUSCAT E.P.』でソロデビューした日本を代表するネオ・アコースティック・シンガーソングライター。現在までスウェーデン、イギリス、フランスなど世界各国でレコーディングを行い現地のミュージシャンとも深い親交を持つ。2008年映画『デトロイト・メタル・シティ』の主題歌提供、出演で話題に。数多くのCMソング制作、プロデュース、楽曲提供の活動などなど精力的に活動中。2012年にレーベル「BLUE BOYS CLUB」を立ち上げ精力的に活動中。

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