インタビュー

くるりインタビュー 「ロックバンドはみんな真面目すぎる」

くるりインタビュー 「ロックバンドはみんな真面目すぎる」

インタビュー・テキスト
金子厚武
2014/09/16

<いつかは想像を超える日が待っているのだろう>。今からちょうど10年前の2004年に発表されたアルバム『アンテナ』のラストナンバー“HOW TO GO”で、岸田繁はこんな風に歌っていた。昨年2020年の東京オリンピックの開催が決定し、『AKIRA』のストーリーとぴったり合致したことは未だ記憶に新しいが、今の僕たちは実際に想像を超えた日々を、SF映画の中を生きていると言ってもいいのかもしれない。あらゆる時代や文化の音楽要素を内包し、パラレルワールド的な世界観を持ったくるりの新作『THE PIER』は、まさにそんな現代のサウンドトラックと言うべき、2014年屈指の傑作である。

ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァが年代ごとに監督を分け合った映画『クラウド アトラス』(2012年)からインスピレーションを受けたという“2034”から始まり、ラストの“There is(always light)”にたどり着くまでの全14曲は、まさに時空を超えた音楽の冒険旅行。『THE PIER』とは「桟橋」の意味であり、僕らはここからどこにでも行けるし、いつだってここに帰って来れる。そして、その長い旅路の中で、様々な差異を体験し、許容すると同時に、自らのアイデンティティーを見つめ直し、更新していくこともできるはず。そう、いつだって大事なことは、音楽が教えてくれる。くるりと同じ時代に生きる喜びを、改めて感じずにはいられない。

たまたま今までそんなに使ってない楽器を使ってみたり、「じゃあ、歌詞はその国の食べ物の話にしようか」とかやってたら、結果的にすごく多国籍になったんです。(佐藤)

―アルバム、本当に素晴らしい作品だと思います。資料には「さまざまな時代、さまざまな文化の音楽を無尽蔵に取り込んだ、最新型の多国籍サウンド」とありますが、これはくるりがこれまでもずっとやってきたことだと言っていいと思うんですね。ただ、2014年に改めてこの部分を強調することは、すごく意味があることのようにも思います。実際、ご自身たちとしてはこの部分に関してどの程度意識的だったのでしょうか?

岸田:……トップギアから来たなあ(笑)。

―すみません、時間も限られているということなので(笑)。

岸田:金子さんおっしゃったように、僕らもともとそうで……まあ、今は普段から海外ツアーしたりしてるわけじゃないんですけど、自分らのテリトリーじゃないところで活動したり、そういうところの人と交流を持って、一緒に音を鳴らしたりすることが、00年近辺からすごく増えたんですよね。やっぱり、知らないものに対する憧れみたいなもんもありますし、知らない言語やテクスチャーを使ってみたりっていうことをやらざるを得ない場面ってあるんですよね。

―それって例えばどんな場面でしょう?

岸田:例えば、もし僕がドイツ語をペラペラ話せたとして、でも日本ではドイツ語使わないから「じゃあ、封印」っていうことを、音楽でやるのはちょっともったいないっていうか。それを使うからこそできる音楽っていうかね、そこでしか取れない魚を使った料理とかあるじゃないですか? 結局越境的なものとか、違う文化のもんって、理解し合うことはできないですけど、違うからこそ生まれるものっていうのは、否定されるべきじゃないと思ってて。「融合させる」って感じでもなく、たまたま散らかった台所に昆布だしとコリアンダーとハバネロとニシンが置いてあって、「さあ、何を作ろう?」って作ってできたものが、「うわ、おもろこれ!」みたいな、そういうことばっかりやったのが今回のアルバムです(笑)。

くるり
くるり

―それってちょっと堅い言葉で言うと、「多様性を認める」っていうことなのかなと思います。現在実施中の全県ツアー『DISCOVERY Q』も、「地域の多様性を再確認する」っていうテーマが背景にあるように思いますし。

佐藤:やっぱり、もともとそういうバンドではあるんですよね。だからそれを敢えてコンセプトにしたわけでもなくて、みんなでプリプロして、パッとバンドで合わせてできたのが、「何かこれイスラエルで売れそうやな?」とか、そんな曲が多かったんですよ。

―意識的に作り上げた世界ではなかった、と。

佐藤:たまたま今までそんなに使ってない楽器を使ってみたり、「じゃあ、歌詞はその国の食べ物の話にしようか」とかやってたら、結果的にすごく多国籍になったんです。それで「桟橋」(『THE PIER』)っていう、ここからどこにでも行けて、ここに戻ってくるみたいな、そういうもんになったんですよね。

岸田:パラレルっぽいっていうかね、いろんな場所が出てきたり、いろんな時代感なり、いろんなジャンルの感じはありますよね。時系列とか場所とかそういうのを、意図的に出したかったわけではないんですけど、くるり自体去年メジャーデビュー15周年ってことでいろいろやってる中で、未整理なものがグチャってなるのが面白いやんっていうのの連続だったんです。だから今回、蓋を開けたらこんなんなってましたっていうね。ただ、AとBをタジン鍋みたいなのにグチャっと放り込むんですけど、煮込むのは「絶対5分」みたいに集中して(笑)。そこにはホント集中しましたし、そうすると、蓋を開けたときに「ほらやっぱり」みたいになるんですよね。

佐藤:くどくなりすぎてやり直したりもしたけどな(笑)。

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リリース情報

くるり<br>
『THE PIER』初回限定盤(CD)
くるり
『THE PIER』初回限定盤(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:5,400円(税込)
VIZL-719

1. 2034
2. 日本海
3. 浜辺にて
4. ロックンロール・ハネムーントルツメ
5. Liberty&Gravity
6. しゃぼんがぼんぼん
7. loveless<album edit>
8. Remember me
9. 遥かなるリスボン
10. Brose&Butter
11. Amamoyo
12. 最後のメリークリスマス<album edit>
13. メェメェ
14. There is(always light)
※全曲楽譜集付き7インチサイズジャケット仕様、“Liberty&Gravity”ハイレゾ音源ダウンロードコード封入

くるり<br>
『THE PIER』通常盤(CD)
くるり
『THE PIER』通常盤(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:3,132円(税込)
VICL-64167

1. 2034
2. 日本海
3. 浜辺にて
4. ロックンロール・ハネムーン→トル
5. Liberty&Gravity
6. しゃぼんがぼんぼん
7. loveless<album edit>
8. Remember me
9. 遥かなるリスボン
10. Brose&Butter
11. Amamoyo
12. 最後のメリークリスマス<album edit>
13. メェメェ
14. There is(always light)

プロフィール

くるり

1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンド。岸田繁(Vo, Gt)、佐藤征史(Ba, Vo)、ファンファン(Tp, Vo)の3名で活動中。

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