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新しいもの作りのためのこれからの組織論 石田祐康×田中淳一対談

新しいもの作りのためのこれからの組織論 石田祐康×田中淳一対談

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望

アニメーターの活躍の場がテレビアニメに限定していることが多いので、広告の世界に積極的に橋渡しすることで、表現の幅が少しでも広がるんじゃないか。(田中)

石田:僕からすると、プロットの時点で既によく練られていたので、後はこの世界をもっと魅力的に見せよう! ということに注力したという感じです。でも、全体の展開で大きく変えているところが1つあって。

石田祐康

―それってどこでしょう?

石田:クライマックスと、そこに至る伏線を変えさせてもらったんです。暴走するアンナおばあちゃんの車椅子を止めるために、主人公のヨージとケイがそこらへんにある衣服や工事現場のシートをファスナーで繋げて助けようとしますよね。最初の案では、初対面の街の人たちに自分たちの自己紹介をして、困ってる事情を説明して、ようやく物を貸してもらえて……という流れだったんです。でも、切羽詰まった状況の流れを断ち切ってしまうし、そんなことをしている間におばあちゃんは絶対に海に落ちてしまうじゃないですか! と思って。そこで冒頭に二人が街の人たちを手助けするシーンを伏線として入れておいて、その人たちがクライマックスに協力してくれる、という展開にしました。絵コンテの段階で勝手に変えてしまったから、田中さんに怒られるのではないかと……。

『FASTENING DAYS』より
『FASTENING DAYS』より

田中:いや、見事な伏線になっていて驚きましたよ!

―『フミコの告白』もそうでしたが、石田作品って冒頭にタメを作って、クライマックスに一気に爆発させる演出が特徴的ですよね。そこに石田イズムを感じるというか。


田中:編集された映像が上がってきたときは、視聴者気分で楽しみながら作品を見てしまいました。

―田中さんは、クリエイティブディレクターとして、過去にいくつかアニメーションを使ったCMやプロジェクトを手がけていらっしゃいますね。もともとアニメの世界に興味があったんでしょうか?

田中:とにかく漫画が大好きで、いまだに毎週『ジャンプ』を読んでるくらい(笑)。仕事でもROBOT(映像制作会社。『海猿』シリーズ監督の羽住英一郎らが在籍)さんとよくご一緒するのですが、アニメーターの方たちってすごい技術を持っていて、一生懸命作品作りをしているのですが、活躍の場がテレビアニメだけに限定していることが多いんですよ。ですからある程度大きな予算が動く広告の世界に積極的に橋渡しすることで、アニメーション表現の幅が少しでも広がるんじゃないかなと思っていて。

石田:テレビアニメだけがアニメの全てじゃないですからね。アートアニメとかFlashとか、いろんな舞台があって、才能のある仲間がたくさんいますから。

『FASTENING DAYS』より
『FASTENING DAYS』より

『天空の城ラピュタ』、劇場版ドラえもんの『のび太と雲の王国』『のび太の創世日記』、それから『トムとジェリー』は自分の中の三大アニメです。(石田)

―実験映像でも、それこそ田名網敬一さんをはじめ1960年代から活動している大ベテランが数多くいらっしゃいますし、その後の世代も次々と作品を発表していますよね。石田さんも先行世代から影響を受けましたか?

石田:それはもう、たくさんありすぎます(笑)。でも一番大きいのは幼少時代に見ていた『天空の城ラピュタ』、劇場版ドラえもんの『のび太と雲の王国』『のび太の創世日記』、それから『トムとジェリー』。自分の中で三大アニメと言えるくらい何度も繰り返し見てきました。

―初期宮崎作品の冒険感、ドラえもんシリーズのガジェット感、それからカートゥーンのスラップスティック感。どれも、石田さんの作品から強く感じる要素です。

石田:いい意味でも悪い意味でも、その影響が自分の作るアニメに尾を引いている気がします。他にも好きな作品はたくさんありますが、この三作は特別ですね。

―田中さんはいかがですか?

田中:個人的に見ていたのは『ヤッターマン』。怖いけど見ちゃうのは『妖怪人間ベム』。それから、やっぱり『ガンダム』。ストーリーが1話完結ではなく複雑に絡み合っていく感じは、子どもながらに衝撃を受けました。

田中淳一

―『FASTENING DAYS』はストーリーも魅力的ですが、ファスナーを使った演出がとにかく秀逸ですよね。これも田中さんが原案を?

田中:もともとのアイデアは僕ですけど、そこからファスナーのいろんな使い方のバリエーションを考え出して、映像化したのは石田さんたちですね。

―ファスナーというと個人的に『ジョジョの奇妙な冒険』のブチャラティ(同シリーズ第5部に登場するキャラクター。至るところにファスナーを作る能力を持つ)を思い出します。ブチャラティはファスナーで物質を分離させたり、入り口を作ったりすることに使っていましたが、今作の主人公であるヨージとケイはファスナーを「つなぐ」ことに使うのが面白いなと。

田中:そこはこだわった部分です。YKKが70か国 / 地域以上に展開している会社ということもありますし、多様性をつなぐための象徴としてファスナーを描きたかったので。

―ファスナーがロープスライダーになるアイデアもすごかったです。

石田:そこはうち(スタジオコロリド)のスタッフの意見を活かしたところですね。地面にファスナーをレールのように敷いて、その上を滑っていくとか(笑)。

『FASTENING DAYS』より
『FASTENING DAYS』より

田中:もともと石田監督らしい疾走感を出して欲しくて、舞台を高台の町に設定したのですが、ああいうギミックを新たに提案してくれて、想像以上にダイナミックな展開になりましたね。

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作品情報

『FASTENING DAYS』

2014年10月30日(木)公開
監督:石田祐康
制作:Studio Colorido
原案・脚本:田中淳一
音楽:砂原良徳
エンディングテーマ:Perfume“Hurly Burly”

プロフィール

石田祐康(いしだ ひろやす)

アニメーション作家。スタジオコロリド所属。京都精華大学マンガ学部アニメーション科卒業。在学中の2009年に発表した自主制作作品『フミコの告白』が第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞など数々の賞を受賞。2011年、同大学の卒業制作として発表した『rain town』も第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞などを受賞。2011年~2012年は、映画『グスコーブドリの伝記』の制作に参加。2013年、『陽なたのアオシグレ』が劇場公開。

田中淳一(たなか じゅんいち)

クリエイティブディレクター / コミュニケーションデザイナー / コピーライターとして広告会社アサツーディー・ケイで活動。自動車、ゲーム、飲食品などの大手メーカーのCMなどを手がける。ADFEST、釜山国際広告祭、毎日広告デザイン賞などで多数受賞。

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