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新しいもの作りのためのこれからの組織論 石田祐康×田中淳一対談

新しいもの作りのためのこれからの組織論 石田祐康×田中淳一対談

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望

必要最小限の手数で、なるべく最大限の効果が発揮できるように、効率良く作業するにはどうしたらいいか? ということは常に考えます。(石田)

―演出の「疾走感」を表現するために石田さんがこだわった箇所は?

石田:やっぱりクライマックスですね。丘の上から街に滑り降りて行くシーンは、ジオラマを作るみたいにまずCGで街を作って、その上にキャラクターを描いていきました。あそこは作画も背景もすごく時間がかかっていて……。必要最小限の手数で、なるべく最大限の効果が発揮できて、流れも気持ち良く伝わる方法を模索して作ったカットの1つですね。

―個人のアニメーションは制作に時間がかかりますよね。効率は悪いかもしれないけれど、細部にまでこだわってオリジナリティーを出していく。でも石田さんはそれとはちょっと違って、最小限の労力で最高のものを作るという、監督的な感覚を身につけています。それは学生の頃から身に付いていたのでしょうか?

石田:学生の頃からずっと制作をやってきたので、効率良く作業するにはどうしたらいいか? ということは常に考えます。当時は他の授業もありましたから全ての時間を制作にはかけられないし、贅沢は言っていられない。必要最小限で最大限の効果というのは最初から考えていました。

石田の制作現場
石田の制作現場

―『フミコの告白』の坂を下りて行くシーンでも、画面の奥まで全て描かなくて済むように薮とか遮蔽物が絶妙にカットインしてきますよね。

石田:実力のあるアニメーターだったら全部手で描いちゃおうって思うようなところですけど、僕からしたら、流れていく背景を全部手描きするなんてとても贅沢なことです。作画においても全部紙でやるよりもデジタルの利点を活かして作ってみたり、あの手この手を尽くして期間内でできるように努力しています。

―そこが面白いところです。アニメーション作家の新海誠さんが『ほしのこえ』を発表したあたりから、映像編集ソフトの普及も手伝って日本のアニメ界の制作体制が徐々に変わってきた。作家個人の関心を維持しながら、集団制作でクオリティーの高いアニメーションを短期間で作ることができるようになったのは大きなブレイクスルーだったと思います。石田さんにとって、アニメーションの理想的な作り方はどのようなものですか?

石田:究極的に言えば少数精鋭ですね。各スタッフの責任がきちんと分けられて、人任せにならないような。スタジオ内にチームがしっかりと分けられて、それを取り決めるためのチーフが各々にいて、チーフ伝いで監督に情報が集約していく。そうやって一致団結できるスタジオが理想です。

―組織作りに対して意識的なクリエイターがここ数年で一気に登場した印象がありますが、石田さんもそのお一人なんですね。

田中:僕は広告業界で仕事をしていますが、クリエイティブの現場も大きく変わったこともその理由の1つだと思います。これまでの広告宣伝のプロジェクトって、クリエイティブディレクターがいて、アートディレクターがいて、コピーライターがいて……とにかく大勢の人が関わっていました。でも、例えば『FASTENING DAYS』のクリエイティブスタッフは僕だけなんですよ。自分の決めたコンセプトをプロジェクトに色濃く反映させていきたいので、人が増えると共感が薄れてしまったりする。広告にも作家性が求められる時代に変わってきたんです。

『FASTENING DAYS』より
『FASTENING DAYS』より

―そのぶん個人の裁量も増えますよね。

田中:そう。フットワークの軽さ、円滑なコミュニケーションは重要なキーワードです。ですから石田監督の話に共感できることが多いです。……でも、それにしても、監督は若いのにすごいしっかりしているなって感心しちゃいます(笑)。石田さんは作家性もあるけれど、きちんと俯瞰して物事を見ることができる。むしろ僕のほうが「田中さん、ちょっと落ち着きましょう」なんて諭されることもしばしばありました。

―石田さんは部活のキャプテンとかやってたんでしょうか?

石田:キャプテンはやらなかったけれど、委員会の立候補演説とか部活動紹介の演説にはよく担ぎ出されていましたね。こういう風に話せばみんな面白いと思うかも、と想像するのは好きでした(笑)。

左:石田祐康

―そういった人柄が『フミコの告白』や『FASTENING DAYS』の制作の土台にあるんだなって気がします。今後、どんな作品を作っていきたいと思いますか?

石田:やっぱり、演出の持ち味である「疾走感」にはこだわっていきたいです。それは、小説やイラストとはまったく違う、音や時間の連続性がある映像表現をもっと深く模索していきたいということ。制作が終わったばかりでこんなことを言うのもあれなのですが、『FASTENING DAYS』も、もっと良くできたんじゃないかと思うんです。もちろん現時点の自分の実力で最大限の努力をしたとは思いますが、ストーリーテリングも演出も、もっといろんなことができるはず。同時に、また違うテーマでも作品を作ってみたい。昔から、ジオラマ的というか、巨大な空間の中にちっぽけな人間がいる、という感覚が好きで、それはなんらかの方法で作品化したいですね。

『FASTENING DAYS』より
『FASTENING DAYS』より

―スタジオコロリドの新オフィスは海沿いの高層ビルにありますが、窓から工場地帯が見えますよね。この景色は、石田さんはお好きなんじゃないかと思ってました。

石田:そう。毎日刺激を受けています。引っ越ししてすぐに、自転車でこの辺りを探検しました(笑)。

田中:また石田さんと仕事をする機会がきっとあると思うんですが、今度はもっと人間に寄った作品を作ってみたいですね。ひょっとしたら実写もいいかも。

石田:実写で人間を描く!(笑) それも新しい挑戦ですね! 楽しみにしています。

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作品情報

『FASTENING DAYS』

2014年10月30日(木)公開
監督:石田祐康
制作:Studio Colorido
原案・脚本:田中淳一
音楽:砂原良徳
エンディングテーマ:Perfume“Hurly Burly”

プロフィール

石田祐康(いしだ ひろやす)

アニメーション作家。スタジオコロリド所属。京都精華大学マンガ学部アニメーション科卒業。在学中の2009年に発表した自主制作作品『フミコの告白』が第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞など数々の賞を受賞。2011年、同大学の卒業制作として発表した『rain town』も第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞などを受賞。2011年~2012年は、映画『グスコーブドリの伝記』の制作に参加。2013年、『陽なたのアオシグレ』が劇場公開。

田中淳一(たなか じゅんいち)

クリエイティブディレクター / コミュニケーションデザイナー / コピーライターとして広告会社アサツーディー・ケイで活動。自動車、ゲーム、飲食品などの大手メーカーのCMなどを手がける。ADFEST、釜山国際広告祭、毎日広告デザイン賞などで多数受賞。

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