特集 PR

大阪のシンセサイザー界から見える、人間ドラマとカルチャー論

大阪のシンセサイザー界から見える、人間ドラマとカルチャー論

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:豊島望
2014/10/03
  • 0

関西は、良くも悪くも土着的で、ずっと残り続けるものが確実にある。深く掘り下げられたものが、連綿と続いていますよね。かなり「通」な世界です。

―人々にスポットを当てた結果でしょうか、本作はシンセサイザー映画でありながら、「東京とは違う発展をし続ける関西音楽カルチャー」を浮き彫りにしていますよね。シンセに詳しくない人も楽しめるものになっている映画だと感じました。『ナニワのシンセ界』のみなさんが語っている内容そのものが、大阪カルチャー論としてとても興味深いです。

大須賀:大阪というのは、歴史的にも古来から芸能文化の発信地ですよね。東京は、江戸以降になって政治的な事情から作られた都会で、国際的な流れにも敏感なので、いろんなものが集まって混じってるんですが、どこかさっぱりしたところがあるし、良くも悪くも変化しやすい。そこが面白くもあるのですが、対して関西は、良くも悪くも土着的で、ずっと残り続けるものが確実にあります。それはシンセに限らず、文化全体にあると思うんです。

 

―音楽に限っても、昔から大阪はヘヴィメタルやブルース、ロックンロール的パンクが、京都はプログレとポストロックが、ずっと盛んだという関西音楽のイメージがあります。

大須賀:深く掘り下げられたものが、面々と続いていますよね。同じことがシンセ界にも通じていると感じました。かなり「通」な世界です。

―食文化もそうですよね。東京は流行り廃りがはっきりしていますが、大阪、京都の食文化には譲らないこだわりがある。始めのほうで、東京のシンセはニーズに合わせて役立つものを提供するが、大阪発のシンセは本質に対するこだわりが強くて変わっているというお話がありましたが、それも同じ文化背景から生まれたものなんでしょうね。

大須賀:でしょうね。そしてシンセと並んで、大阪ならではのこだわりのもう1つの象徴が、映画に登場する「電氣蕎麦」という店なんですよ。

電氣蕎麦
電氣蕎麦

―モジュラーシンセを中心にした、アナログシンセサウンドが延々とBGMで鳴り響いている蕎麦屋兼バー。照明も暗く、インテリアも個性的な異次元空間が広がっているそうですね。

大須賀:かなり尖った店なんですが、とても居心地が良く、一見怖く見える店主も自然とお客さん同士を繋げてくれるんです。だから、シンセマニアやサブカル好きの人だけが集うのではなく、普通のお客さんも常連としてたくさんいらっしゃいます。あれがもし流行り廃りが早い東京にあったなら、3年で潰れてしまいかねないと思うんですよね(笑)。そういう店がナチュラルに生き続けているのも、大阪ならではの光景だと思います。一見、敷居は高いですが、そのこだわりの懐に入ってしまうと、なんとも魅力的な遊び場になります。じつは、僕はこの映画も、シンセ界にとっての「遊び場=コミュニティー」にしたいと思っているんですよ。

―映画をコミュニティーに?

大須賀:シンセサイザーの世界は、たしかにマニアックになりがちですが、一度入り込むと奥が深く、創作の場としてとても面白いです。この映画も、ここに登場する人たちやシンセサイザー界隈の著名人を呼んだトークイベントやライブと一緒に上映する形を多くとらせてもらっていて、実際にお客さんにシンセを触ってもらえる機会も設けてます。映画を観るついでに、「シンセ界」を体験をしてもらうのが1つの目的だと思っているので。

―『ナニワのシンセ界』という作品で完結するのではなく、映画を軸としたシンセ界そのものを楽しんで欲しいと。

大須賀:そうですね。そしてこれを観て、「電氣蕎麦」や「implant4」の店や、『Modular Festival』や『シンセ温泉』などのイベントにも足を運んで、「ナニワのシンセ界」のコミュニティー自体を体験してほしいんです。

大須賀淳

このドキュメンタリー映画は、決して完結しないんですよね。

―今回、この映画の制作にあたっては、クラウドファンディングで資金集めもされていらっしゃいますが、それがきっかけで1つのコミュニティーが形成されているようにも見えました。

大須賀:そうですね。応援してくれる人の想いがダイレクトに伝わってきたり、目標金額に達成するために、応援してくれてる人がさらに周囲にも呼びかけて巻き込んでくれたりと、クラウドファンディングそのものが、ファンとのコミュニケーションの場になりました。作り終わって、その実感はさらに強くなりましたね。

―となると、せっかく立ち上げたコミュニティーを、まだまだ継続していきたいですね。

大須賀:当初の目的であった「世界で黙殺されている日本のシンセカルチャーの紹介」のために、英語字幕もつけて、海外映画祭へ売り込みもスタートするので、そのコミュニティーが今度は世界に広がればいいと思います。

―映画の最後には、「To be continued」の文字も登場しました。次回作も予定されているんですか?

大須賀:はい、じつはもう次の制作が進んでいます。来年には『シンセ温泉』のイベントを追った1.5弾を公開したいですし、第2弾も準備しています。「ナニワのシンセ界」はこだわりの強い人たちの集まりですから、他と同じことをやりたくないというミュージシャンも多いんです。いつ突拍子もない新しいことを始めるかわからないし、おかしなシンセを作り出す人が他にも出てきそう(笑)。だから、あくまでも今作の『ナニワのシンセ界』は、撮影期間であった今年2月~6月までを切り取ったに過ぎず、このドキュメンタリー映画は、決して完結しないんですよね。ナニワのシンセ界、日本のシンセ界を映画で追い続けるのが、僕のライフワークかなと思います。

Page 3
前へ

イベント情報

『「ナニワのシンセ界」の深世界』

2014年10月5日(日)OPEN 12:00 / START 13:00
会場:大阪府 Loft PlusOne West
出演:
大須賀淳
田中雄二
上映作品:『ナニワのシンセ界』(監督:大須賀淳)
料金:前売2,000円 当日2,500円(共にドリンク別)

作品情報

『ナニワのシンセ界』

監督:大須賀淳
出演:
荒川伸(株式会社REON)
Unyo303
久次米一弥(天地雅楽)
ピノ作(J.M.T Synth)
西田彩(ゾンビ)
Risa
ほか

2014年10月4日(土)~10月24日(金)連日20:00から上映
会場:東京都 下北沢トリウッド
料金:一般1,500円 大・専門1,300円 シニア1,100円 高校生1,000円
※平日火曜日は定休、10月11日(土)は休映

2014年11月29日(土)~12月5日(金)連日19:30より上映
会場:大阪府 十三 シアターセブン
料金:一般1,500円 / 専門・大学生1,200円 / シニア1,100円 / 中・高・シアターセブン会員1,000円 / 小学生以下700円
※ その他各種割引・サービスデーなどあり

会場:京都府 立誠シネマプロジェクト
※上映期間など詳細は後日発表

プロフィール

大須賀淳(おおすが じゅん)

映像・音楽クリエイター。株式会社スタジオねこやなぎ代表。1975年生まれ。福島県出身。映像・音楽コンテンツ制作と同時に、書籍や雑誌での執筆、学校・セミナー等での講師も数多く務める。2014年、アナログシンセサイザーの復興の兆しを見越して、モジュラーシンセサイザーの情報サイト「モジュラーシンセ日本」を開設、運営を手がける。日本初のシンセサイザー・ドキュメンタリー映画『ナニワのシンセ界~The New World of synthesizer in Osaka』を完成させる。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Radiohead“Man Of War”

Radioheadの未発表曲“Man Of War”のPVが公開。この曲は本日発売の『OK Computer』20周年記念盤に収められる3曲の未発表曲のうちの1曲。昼と夜に同じ場所を歩いている男が何者かに後をつけられ、追い詰められていく様を映した短編映画のような映像だ。(後藤)