インタビュー

岸田繁(くるり)×加藤貞顕対談 音楽市場の変化をチャンスに転換

岸田繁(くるり)×加藤貞顕対談 音楽市場の変化をチャンスに転換

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望

おそらく『東京オリンピック』に向けて、東京の地価もどんどん上がるだろうし、ものを作る人って各地に拡散する傾向にあるんちゃうかなって思ってて、そうなるとやっぱりネットですよね。(岸田)

―では、今度はまだ若いこれからのクリエイターに、「noteをどう使ってほしいか? どう使うべきか?」という話をしていただきたいと思うのですが。

岸田:ちょっと話ずれますけど、U2のアルバムが勝手にダウンロードされるやつとかって、俺U2好きやから新作聴けるのは嬉しいんですけど、なんか違和感を感じました。僕はミュージシャンに対して、「ジャンルに見合ったことをやってほしい」って思っちゃうところがあって、「セレブ」とか「商売人」っていうジャンルとしてU2を見るならいいんですけど、アイルランドのパンクバンドとして見るなら、どうなのかなぁと思っちゃうんです。

―いろんな意味で、時代を象徴する出来事ですよね。

岸田:僕らはシンプルにnoteでものを売りたいとも思ってて、「iTunesに行ったら買えるやん」っていうのと同列のプラットフォームになり得ると思うんです。で、むしろ僕らよりアマチュアのクリエイターの人たちがここで儲けてほしくて、そういう人たちが創意工夫して、すごい曲をnote発で売って、城みたいなスタジオ建てるとかね(笑)。

岸田繁(くるり)

加藤:くるりみたいなメジャーで活躍してる人が使ってくれるのももちろん嬉しいんですけど、同時にここからいろんな人がデビューしてもらいたいとも思ってて、今、山本さほさんっていう、ずっとここで漫画を無料で描いてあげてた人がバズって、出版社10社以上からオファー受けてて、スターになる可能性が高いんですよね。スターって、軸が2つあると思ってて、それは、ひとつは影響力で、もうひとつはビジネス、つまりお金なんですね。影響力とある程度のお金をnoteで確保して、大きなビジネスとしては既存の枠組みを使ってもらうっていうのが現段階で。その前段の部分ができるようになっただけでも、だいぶ進歩だと思うんです。将来的にはその両方がすべてnoteで確保できるように、仕組みを作って行きたいと思ってて。

―影響力もつくし、ビジネスとしても成り立つと。

加藤:今後10年ぐらいで、影響力とビジネス両面で、クリエイターの本拠地はネットになると思うんですよ。ものを作って、お金を稼ぐ、その本拠地はネットで、それを必要ならば、CDにしたり、出版したりする。そのための場所作りと、新しい人がここから出て、食えるようになるっていう、その2つは目指していきたいなって。

岸田:その理念はホント大賛成で、僕1回京都に帰って、今また東京に出てきたんですけど、東京って、やっぱり音出せないんですよ。音出せないところにミュージシャンが住むってあかんやろって思うんです。だから、ホントは田舎に住んだ方がいいんですよ。おそらく『東京オリンピック』に向けて、東京の地価もどんどん上がるだろうし、ものを作る人って各地に拡散する傾向にあるんちゃうかなって思ってて、そうなるとやっぱりネットですよね。正直、京都に帰って「こりゃ仕事にならん」ってなったから、東京に戻ってきたっていうのもなくはないんですけど、noteをもっと早く知ってたら、京都に留まってたかも(笑)。

問題はマーケティングとかビジネスの転換が上手く行ってないってことで、クリエイティブのせいではないと思うので、そこをやんなきゃなって。(加藤)

―加藤さんから、これからの若いクリエイターに何かアドバイスいただけますか?

加藤:僕、まだファンが多くない人は、何かを売るとき高く設定した方がいいと思うんですよ。例えば、月額1,000円払ってくれるファンが300人いたら30万、もうバイトする必要ないですよね? もちろん、300人って簡単な数字ではないですけど、本気でやりたいと思ってる人であれば、集められないことはない。CD何千枚売るよりは、遥かに現実的じゃないですか? そうやって、音楽なり絵なりに打ち込めたら、さらに可能性が開けると思うんですよね。

―途中でAKBの話もありましたけど、地下アイドルを支えているのは、1人でCDを何枚も購入するような、いわゆる「強ヲタ」だって話に近い部分もありますよね。

加藤:ただ、ネット上だっていうのが大きくて、全部オープンだから、その分先が開ける可能性があると思うんです。狭いところでお金を取っていくのは、未来がないじゃないですか? 小さいビジネスから始めて、その先がちゃんとあるっていうのが面白いと思うんですよね。

岸田:ネット上って、人の区別がないじゃないですか? 金持ちも貧乏も、年寄りも若者もいる。俺どうしてもカルティエとかティファニーのお店は入れないんですけど(笑)、でも、ティファニーのサイトだったら一発で見れるじゃないですか? それって面白いと思うんですよね。もちろん、まだネットに対する恐怖心がある人もいて、俺もそういうとこありますけど、noteはホントに単純明快なので、入りやすいと思います。なんかね、課金のシステムもホントにシンプルやから、中間搾取がない状態で仕事をするってことに、僕らが慣れていく必要があるなって思ったり。

―ああ、今って中間搾取がある状態が逆に普通ですもんね。

岸田:そうそう。でもこれはホント使う人の自由やし、デザインもスッキリしてるから、分け隔てなくいろんな人が見れて、僕ビジネスマンじゃないからわからないですけど、やる気さえあれば、すっごい商売しやすいと思うんですよ。

加藤:さっきからお金の話いっぱいしちゃってますけど(笑)、やっぱり取っても取らなくてもいいっていうのがポイントだと思うんです。

岸田:そうそうそう。

加藤:自由度の高い場所を作るっていうのが一番重要で、その中で成功例が生まれていくと、いろいろ風通しが良くなるのかなって。僕昔出版社にいて一番我慢ならなかったのが、クリエイティビティーは何ら損なわれていないのに、市場環境の変化でビジネスが小っちゃくなってるってことだったんですよ。

岸田:あー、毎日その呪いと戦いながら、酒に煽られてます(笑)。

加藤:問題はマーケティングとかビジネスの転換が上手く行ってないってことで、クリエイティブのせいではないと思うので、そこをやんなきゃなって。

左から:岸田繁(くるり)、加藤貞顕

岸田:ホント心強いです。そういうことを考えてくれる人がいるっていうことは。

加藤:これだけいろんなことに簡単にアクセスできるのに、今までより商売が上手く行かないって、ホントおかしな話だと思うんですよ。今は過渡期だと思いますけど、この状況に適応したことを、これから誰かがやらないといけなくて、「じゃあ、やってみます」って手を挙げさせてもらったので、いろんな人たちと一緒に作って行きたいなって思います。< /p>

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リリース情報

くるり<br>
『THE PIER』初回限定盤(CD)
くるり
『THE PIER』初回限定盤(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:5,400円(税込)
VIZL-719

1. 2034
2. 日本海
3. 浜辺にて
4. ロックンロール・ハネムーン<album edit>
5. Liberty&Gravity
6. しゃぼんがぼんぼん
7. loveless
8. Remember me
9. 遥かなるリスボン
10. Brose&Butter
11. Amamoyo
12. 最後のメリークリスマス<album edit>
13. メェメェ
14. There is(always light)
※全曲楽譜集付き7インチサイズジャケット仕様、“Liberty&Gravity”ハイレゾ音源ダウンロードコード封入

くるり<br>
<p>『THE PIER』通常盤(CD)
くるり

『THE PIER』通常盤(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:3,132円(税込)
VICL-64167

1. 2034
2. 日本海
  3. 浜辺にて
4. ロックンロール・ハネムーン<album edit>
5. Liberty&Gravity
6. しゃぼんがぼんぼん
7. loveless
8. Remember me
9. 遥かなるリスボン
10. Brose&Butter
11. Amamoyo
12. 最後のメリークリスマス<album edit>
13. メェメェ
14. There is(always light)

プロフィール

くるり

1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンド。岸田繁(Vo, Gt)、佐藤征史(Ba, Vo)、ファンファン(Tp, Vo)の3名で活動中。

加藤貞顕(かとう さだあき)

株式会社ピースオブケイク 代表取締役CEO。1973年、新潟県生まれ。アスキー、ダイヤモンド社に編集者として勤務。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海)、『ゼロ』(堀江貴文)など話題作を多数手がける。2012年、コンテンツ配信サイト・cakes(ケイクス)をリリース。2014年、クリエイターとユーザーをつなぐウェブサービス・note(ノート)をリリース。

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